■不透明な時代を生き抜く真の力を身につけるために――他者を知り自分を知る「文学」という学問
小説や詩はもちろん、歴史などを含めて、過去に生きた人々、別の土地に生きた人々が書き残したものを読み、理解する。そして、それを書いた、あるいはそこに書かれた個人が、歴史や文化、言葉など様々な制約を受けつつ、喜び、悲しみ、苦しみながら精一杯に生きた、その生き方に共感できる想像力を養う。この想像力をもとに、ひるがえって、自分を見つめる、現在から未来へと生きる個人としての自分の生き方を考える。「文学」という学問のこうしたあり方、目的は、古くから全く変わっていません。最も古い、そしてその古さにこそ価値がある学問といえるでしょう。
以前、ソニーの人事部長を本学にお招きしてお話を伺ったことがあります。その際、その方は、国際ビジネスを成功させるために最も大切なものとして、語学力などのスキルよりも「人間性」を第一に挙げました。文学を学ぶことは、人間性を高めることに直結します。一見ビジネススキルとは遠く離れたところにある「文学」ですが、実は、職業の種類を問わず、最も基本的で重要な資質を培う学問なのです。
もちろん、「文学」のあり方が変化しないといっても、それが扱うべき素材は時代とともに増え、質も多様化している。「文学」を取り巻く社会的、文化的環境も大きく変化しています。大学の文学部が、旧来のままの内容と体制を維持していてよいはずはありません。本学部では、「文学」の伝統をふまえつつ、より現代的な視点を採り入れ、カリキュラムや学科構成を大きく改編します。過去・現在・未来を的確に読む目を持ち、「自分」を知り(あるいは知ろうという意識を持ち)、不透明の度合いを深めるこれからの時代を力強く生き抜くことのできる人材の育成を目指しています。
■言葉による表現力を磨く「文芸・思想専修」――「文学科」が5専修体制でスタート
本学部の大改編の一つめは、「文学科」の設置です。従来の日本文学、英米文学、フランス文学、ドイツ文学の4学科をそれぞれ「専修」とし、新設の「文芸・思想専修」を加えた5専修を文学科の下に置きます。
「文芸・思想専修」は、「比較文芸・思想コース」の言語表現・現代思想・文化批評にかかわる分野を継承・発展させた内容となります(映像分野は、現代心理学部の「映像身体学科」が継承)。特に、明晰な内容を持った表現力、深い人間理解に裏付けられた説得力の涵養を重視します。講義では表現を磨く技法やその内容を構築するための多様な方法を受容しつつ、1年から4年までの各年次で重視される演習科目では、相互批評を行いながら言語能力を切磋琢磨してゆきます。また卒業にあたっては、研究論文はもちろん、小説、詩、評論などの作品の提出も認められます。
それ以外の4専修はほぼ従来の学科の内容を引き継ぎます。語学の重視や他国文化への敬意、思想的な営為の重視など基本理念は変わりませんが、しかし、互いの垣根はこれまで以上に低くなります。文学科は、それぞれの言語・文化、地域を中心に学ぶ各国文学専修が縦糸、現代的な課題を横断的に学ぶ文芸・思想専修が横糸となり、より有機的に結ばれつつ相互相対化されて、学生の幅広い興味・好奇心を満足させる科目展開となります。
なお、本学科の5専修は、それぞれ定員を設けて個別に学生を募集します。
最近は、「言葉」が意思伝達の道具とかコミュニケーションの手段であるという側面が強調されがちですが、「言葉」とは本来、思いを表現したり、思想を構築したりという、より高度な機能を持っているのです。「言葉」をもっと大切にし、「言葉」を通して深く理解しあい、「言葉」を使って新しいものを創造していける、そんな人材が本学部を巣立っていってほしいと思います。
■新しい歴史観、新しい学問領域を提案――「史学科」が斬新な3専修体制に
「史学科」も大きく生まれ変わります。従来の「日本史」「東洋史」「西洋史」「地理学」という区分を全て廃止し、「世界史学」「日本史学」「超域文化学」の3専修を置きます。
「世界史学専修」では、国境で区切られた各国史という発想ではなくて、「大陸世界」と「海域世界」という考えを仮説とする。これによって、新たな世界像を構築する手がかりを探り、また、ダイナミックな歴史や、異なる歴史を生きた人々の多様な価値観・文化により深く広く触れることができます。
「日本史学専修」では、「国史」的な見方を脱し、人間史、世界史.地球史の一環であることを今まで以上に重視する。日本列島の固有の歴史や時間、文化基層に目を向ける一方、東アジア世界とのつながりをはじめとする国際関係の中で日本のありよう、交流のありようをとらえていきます。
「超域文化学専修」では、歴史学、地理学、文化人類学といった従来の学問区分を越えた、挑戦的な学問領域を提案します。たとえば広義の「アメリカ」や「イスラーム」、遊牧民文化についての研究、あるいは、人間の移動とともに国境を越えて伝播し定着・変質する各種生活技術(例えば陶芸、織物)などに着目し、フィールドワークも採り入れた新しい手法・視点で研究・考察していきます。
なお、学生は、史学科として募集します。各専修の選択は1年次後半に行いますが、原則として希望通りに認められます。
■きわめてエキサイティングな学びの場――キリスト教、教育両学科も加えた全学部的改編に
キリスト教学科は、建学の精神を今に受け継ぐ歴史ある学科です。聖職者を育成する場ではなく、もちろん、信仰の有無を問いません。ここでは、ヨーロッパのみならず全世界の社会、文化に多大な影響を与えてきたキリスト教を学問の対象としてとらえます。歴史や文化、芸術、哲学思想など、人間の生が関わるあらゆる分野が研究対象になるといっても過言ではありません。
イラク戦争など世界を揺るがす大きな問題を本当に理解するためにも、キリスト教に関する知識は不可欠です。本学科の卒業生は、異文化への深い理解力を備えた人材として、様々な分野で活躍しています。
教育学科は、教育に対する様々な側面からの科学的アプローチと初等教育教員の養成を両立させるユニークなカリキュラムを特徴としています。理論と実践の相互フィードバックの中で、知の体系を深めてゆきます。
教育学は「総合人間学」です。リベラル・アーツを標榜する文学部内に設置されている特質を生かし、ジェネラリストとしての教員養成にとどまらず幅広い人材育成を目指しています。
これら2学科を含めて文学部全体として科目履修の自由度を高め、学生それぞれの興味に応じて、より総合的に学習できる環境を整えます。その際、テーマごとに「履修モデル」を作成し、学生が各学科から科目を選択する場合の目安になるようにしたいと考えています。
人生の中の貴重な4年間を、様々な人、書物、学問との出会いの中で自分を知り、その後の人生のベースを作るために、本学部で過ごすことを選択してくれれば嬉しいです。
本学科が、言葉や歴史、人間形成、芸術、異文化などに興味を持つ学生にとって、きわめてエキサイティングな学びの場となることは間違いありません。 |