■オンリーワンの多角的・総合的観光学
人間は、本質的に旅をしたがる生き物のようです。そしてその旅、つまり「観光」という行為は、本人が意識するしないにかかわらず、社会(特に観光の対象となる地域の社会)に、経済的、文化的、その他様々な影響を及ぼします。観光産業が世界最大の産業のひとつになった今、その影響はますます大きくなるばかりです。現代社会を考える時、「観光」が重要な切り口になるのはそのためです。
本学部では、「観光」を3つの柱でとらえています。まず、旅行業、ホテル、運輸などの「ビジネスとしての観光」。観光による町おこしなど「地域社会と観光」。そして、観光を通した文化交流や旅行紀などの文章表現など「文化現象としての観光」です。どのひとつが欠けても、「観光」という現象の全体像を把握し、理解することはできません。
ただ、本学以外の観光学部・学科は、観光ビジネスの即戦力養成を主な目的としているため、このうち第一の柱を中心にしたカリキュラムとなっていることが多いようです。多角的・総合的な「観光学」を学べる場所は、わが国で本学部だけといっても過言ではありません。そしてその「観光学」の知識は、観光ビジネスを時代に合わせて変革しリードする人材、あるいは、自治体・NPOをはじめとするさまざまな場で、より広い視野を持って観光にかかわることのできる人材は不可欠といえます。
実際、本学部はホテルなど観光産業の分野で指導的な役割を果たす優秀な人材を輩出する一方、本来観光とは無関係な一般企業にも、多くの卒業生を送り出しています。しかしどのような職場でも、観光に関する知識を生かせる部署に配属され活躍する場合が、極めて多くなっているのです。
■未来の「観光」を見据えた学部改編
本学部の前身は、終戦の翌46年、学生の要望で設置された「ホテル講座」にさかのぼります。以来、社会学部観光学科、観光学部へと、組織の面でも常に「わが国初」の発展を重ねてきました。同時に、先程述べたような、本学部独自の「観光学」の形も固まり、観光に関する研究・教育の分野で、まさに「オンリーワン」の地位を築いてきたのです。
一方その間、観光はグローバル化・多様化し、それに応じて観光ビジネスも様変わりしつつあります。そして、観光の文化的側面が、より注目されるようになってきました。
そこで本学部では来年度から、「文化現象としての観光」に関する研究・教育に軸足を置く「交流文化学科」を新設し、既存の「観光学科」の軸足を「ビジネスとしての観光」にシフトして、「地域社会と観光」の領域が両者の中間に広がるような2学科体制をとることにしました。
もちろん、三本柱のいずれもが欠かせないという考え方に変わりはありません。したがって、3領域の基礎的な部分は両学科ともに必修とし、共通の選択科目も数多く用意しました。将来観光にかかわるキャリアに進むにあたって必要となる専門的知識は、どちらの学科を選んでも十分に身につけられるカリキュラムになっています。
今回の改編の結果として、学生一人ひとりの顔が見える少人数教育を徹底できる体制も整いました。ゼミ、演習はもちろん、講義であっても実践や体験を重視するきめ細かい教育を、さらに充実させていきたいと思っています。
■フィールドワークを通して文化交流を実感―交流文化学科
観光は必然的に、異文化同士の出会い、あるいは衝突を伴います。観光化をきっかけにした文化の創出・喪失・変容が、世界のあらゆる地域で起こりつつあるのです。
こうした観光の文化的影響について深い知識と理解を持ち、文化を組織化・商品化できると同時に、その問題点もきちんと把握している。そんな人材を育てることが、「交流文化学科」のひとつの目的です。それは全く新しい観光ビジネスのリーダー、あるいはこれまでにないかたちで観光にかかわる国際公務員、NPOのメンバーなどかもしれません。
また、メディアが多様化する中、「旅」「観光」を記述し、表現するという作業も重要になっています。本学科は、その担い手、トラベルジャーナリストを育てることも目指しています。
そのために本学科では、観光に関する基礎的な科目群の上に、「国際観光研究」「観光と文化研究」の2つの領域を中心に、専門科目群を用意しています。
中でも、異文化との交流を肌で実感し、自ら問題意識を持つことを目的にした海外フィールドワークは、本学科のカリキュラムの特徴といえるでしょう。観光学部はこれまでも米国からブータン、ボルネオに至る世界の様々な地域で学生フィールドワークを展開してきました。今後はさらに機会も地域も広がるでしょう。これら日本とは文化的なギャップの大きい地域での体験から学ぶことは非常に多いはずです。
本学科では、語学力は不可欠な道具です。全学カリキュラムと独自カリキュラムを組み合わせ、英語力を大前提に、アジアの言語を含む第二、第三外国語の習得にも力を入れています。
■業界の現役トップが生の情報を―観光学科
「観光学科」では、旅行・宿泊ビジネスのマネジメント、観光地計画など、主に観光の経済的側面を中心に学んでいきます。
特に、本学科独自の試みですが、JTBの舩山会長(「旅行産業論」 他)、ホテルニューオータニの甲田元副社長(「宿泊産業論」 他)など業界の大手企業の経営トップを特任教授としてお招きし、講義・ゼミを担当していただいています。観光ビジネスの文字通り最前線の情報に生で触れることができ、大きな成果をあげています(交流文化学科でも受講可能)。
フィールドワーク、インターンシップなど、実践重視のカリキュラムは、本学科も同じです。
わが国の、そして世界の新しい「観光」のあり方を考え、創り、担っていく意欲ある諸君をお待ちしています。 |