2013年12月9日掲載
本は、人との出会いと同じく、自分の世界をひろげるきっかけとなる。
大学生というゆったりとした時間を送る今、自分たちが通過してきた教育システムがどのようなものであったのか振り返ってみるのもよいかもしれない。1、2は、自分たちの現在の立ち位置を知るきっかけとなる(なお、2については同著者の『教育と平等−大衆教育社会はいかに生成したか』(中公新書、2009)も併せて読むとよい)。
論理的な、わかりやすい日本語を書きたいという願望をもつ人は少なくないはず。しかし、その願望をかなえるために何かをする人は必ずしも多くない。3、4は一歩を踏み出すきっかけとなる。なお、4は文科系にも同じく有益である。
趣味─今の私の場合は、競馬、落語─を深めるには、現場─競馬場や寄席─に行くに越したことはない。しかし、たまには、本でその趣味の歴史をたどり、その背景となる文化を知るのもまたよい。5、6はそのような例。同様の試みは他の趣味でもあるはず。趣味を広げるきっかけとなる。
多少は、専門である法の話もしよう。7は、明治から平成にかけてのいくつかの文学作品を時代ごとの家族像を示す素材として利用しながら、日本家族法の変遷を描くもの。8は、韓国ドラマを素材に、その背景にある韓国の社会意識・法意識や、社会制度・法制度を紹介・検討するもの。いずれも、法と社会の関係を知るきっかけとなる。
最後は、本格的な法学の研究書について。9は、学部生時代、契約法の講義で勧められて初めて読んだ法学の研究書。10は、法科大学院時代、研究者の道に進むべきか悩んでいたときに手にとった研究書。いずれも、私の能力不足ゆえ、最初はほとんどわからなかった。しかし、既存の理解を覆して新たな基礎理論を提示しようという壮大さは感じられた。研究の匂いをかいでみるきっかけとなる。
図書館広報誌『Your Library no.26』より