トップページへ戻る
教員メッセージ RIKKYO CLOSE-UP 連続シンポジウム RIKYO VOICE 伊集院静エッセイ
千石英世 Hideyo Sengoku
1949年大阪府生まれ。1972年東京教育大学文学部アメリカ文学科卒業。1975年東京都立大学人文科学研究科英文学専攻修士課程修了。東京都立大学助手、明治大学専任講師、東京都立大学助教授を経て、1992年4月より立教大学文学部英米文学科教授。「群像」新人文学賞受賞。主な翻訳にメルヴィルの『白鯨』(講談社文芸文庫)、主な著書に『異性文学論―愛があるのに』(ミネルヴァ書房)、『アイロンをかける青年―村上春樹とアメリカ―』(彩流社)など。

■何もかもが軽い時代に楔を打ち込みたい。
創造するためには、思想に学ぶことが不可欠である。


 来春、文学部に新設される文学科に生まれるユニークなコースが「文芸・思想専修」です。「文芸・思想専修」の「文芸」とは、クリエイティブ・ライティングすなわち創作を指しますが、創作のためには学ばなければならないことがあります。それが「思想」です。だから、我々教授陣はアメリカでは“Writers’ Workshop”にあたる本専修に、英語で“Course of Philosophy & Creative Writing” と名付けました。フィロソフィーすなわち哲学という「思想」に関する古典をしっかり読んでほしいという思いがその言葉に込められています。

 日本に限りませんが、何もかもが軽くなっている時代。例えば、本も読まずに、本を書きたいという人が非常に多い現象が見られますが、そんな甘い姿勢で創作などできるはずがありません。創作するためには、それなりの仕込みが不可欠です。アメリカでポップアートの後に登場したストリートジャンクの代表的なアーチストは、自分が何をやっているかを雄弁に語ることができますが、それは美術の歴史や技術について深い知識を学んでいるからです。先達に学ぶことなしに、創ることはできない。創作という知的活動には、必ず流れている思想があることを伝えたいのです。それは、今や崩れようとしている知的環境を守らなければならないという危機感から生まれたコンセプトでもあるのです。


話せるバイリンガルだけではなく、読めるバイリンガルを育てる。 これからの社会が必要とする人材がそこから生まれる。
 
 そして創作のためには、歴史の連続性を知ることも大切であるというのが私の持論です。例えば、江戸時代末期に自分たちの手で憲法を創ろうとしていたという草の根の民主主義を掘り起こしてみる。文化のコンティニュイティー(連続性)を探ることが、文化の未来のクリエイティビティ(創造性)の発見につながると思えるからです。歴史を断絶させるのではなく、そこに脈々と流れる継続性と継承性のプラス面に光を当てることで、これからの政治であれ文学であれ、その未来が見えてくるのではないでしょうか。

 また、外国語教育においては、話すことだけではなく、読むことにも重点を置くべきであると私は考えています。書かれたものを創造的に読み解くことこそ大事という視点で、ヒューマニティーズ(人文学)の原点に戻り、優れた思想書の原典を、辞書を見ながら自分で読み解いていく力を磨いていきます。話せるバイリンガルではなく、読めるバイリンガルを目指すのです。

 2006年春から文学部文学科「文芸・思想専修」で学ぶ若者たちには、日本語がちゃんと書けて、日本語で深い議論がちゃんとできて、そのうえで外国語がちゃんと読める人になってもらいたい、その上で創作に挑戦する、そういう人を育て上げたい。英語ならニューヨークタイムズ紙が読める、フランス語ならル・モンド紙が読める、それらの見出しが、日本の新聞の見出しと違うじゃないか、同じ記事でなぜなんだということがいえる。それは、社会に大いにアピールできる力です。「文芸・思想専修」が目指す教育は、そうした真の創造的人材を生み出す教育です。立教「文芸・思想専修」は社会の先端の場となっていくことでしょう。



栗田和明 Kazuaki Kurita
1953年静岡生まれ。1976年静岡大学理学部卒業。1978年京都大学理学研究科修士課程修了。1982年同大学同研究科博士課程単位取得退学後、同年4月より1993年3月まで野外民族博物館リトルワールド研究員を務める。1993年に立教大学文学部史学科に就任。1998年より教授。理学博士。『マラウィを知るための45章』(明石書店)など著書多数。

■人類の区分は相対的で、その輪郭は曖昧なもの。
国家や民族にとらわれず、尊重しあいたい。


 私はケニア、タンザニア、マラウィなどで継続的に地理学・文化人類学のフィールドワークを行っています。これらの地域で学んだことの一つが、民族の輪郭は非常に曖昧なものであるということです。

 アフリカ大陸の東岸にあるタンザニアとその南西にあるマラウィの国境は、大きく蛇行するソングウェ川によって画されています。ソングウェ川のタンザニア側にはニャキュウサ人が住み、マラウィ側にはンコンデ人が住んでいますが、雨季のたびにその国境線は変わります。農民は自分の畑地が川の向こう側になってしまっても、ビザやパスポートなどに関係なく、川を渡って耕し続ける。国家としては、その境界をはっきりさせ、国民の出入りも管理したいでしょう。しかし、国境を越えた非公式の人の移動も、国境線そのものの変動も起こっているのが現実です。

 異なる民族が接触して文化を交換し、人びとが通婚し、遠くの土地にまで移動してきたのが人類の数百万年の歴史です。そう考えると、国という枠にとらわれず、自分と周囲全体の生活を尊重し、愛する人を作っていくことが大切さであると私は強く感じます。例えば、これからはアジアの人々が個々に中国人、台湾人、韓国人、日本人と意識するだけでなく「我々は東アジア人」とか「我々はサッカー・ファン」「コミックス・ファン」と意識することで、中=日や韓=日で緊張を高めることなく、より平和な社会を創造していくことにつながるかもしれません。

 ナショナリズム、民族主義とは何でしょう。日本人らしさ、日本文化とは…これらは、すべて変わっていくものです。変わっていかないものはありません。
文学部史学科に新たに誕生する「超域文化学専修」。そこは、個々の専門領域を超えて、トータルに人類文化誌を学ぶ場となる。

 2006年度の改編で、文学部史学科に新設される「超域文化学専修」は、広い意味での人類文化誌を勉強する場です。従来の人文科学の諸専門を学びつつも、それらを相対化してトータルな人類文化を描いていきたいと思っています。

 従来は一人の学生が自分の専門分野を100勉強できたとしたなら、「超域文化学専修」では、さらに他の専門との境界をより広くつなぐ目を養うことで、150くらい勉強できるようになりたい。あるテーマに対して答えるとき、ひとつの枠組みだけで議論するのではなく、相対的に見て、他の立場に立ったら、別の考え方もあるというような柔軟な視野を獲得していってほしい。それこそが、21世紀社会のあり方を構想する視点につながるのです。

 カリキュラムの概要は、地域研究論、文化人類学、イスラーム複合社会、アメリカ社会史、文化環境学などです。もちろん、史学科の中の専修ですから、時間の流れに従って、あるいは地域内での歴史を学ぶ事もおこないます。しかし、人類文化という全体で見ようとするとき、時にとらわれない汎時的な視点や、地域にとらわれない共時的な視点を持って学ぶことを「超域文化学専修」では重視します。
■他のメッセージはこちら
若いときに旅をしなければ、老いてからの物語がない。(立教大学観光学部「交流文化学科」(2006年4月学科改編)教授 白坂 蕃)
高齢者の生活と環境をテーマとした福祉の研究と、これからの福祉コミュニティを創る人材を育成したい。(立教大学コミュニティ福祉学部「福祉学科」「コミュニティ政策」(2006年4月学科改編)教授 橋本正明)
常識だと思われていることは、おそらく非常識です。(立教大学 経済学部「経済政策学科」(2006年4月学科改編)教授 アンドリュー・デウィット)
物理とは、ものごとの「元の元」を学ぶこと。 だから、大切で、面白い。 (立教大学 理学部「物理学科」 教授 北本俊二)
情報の編集・運用能力を身につけ、21世紀を切り拓く「市民」へ育ってほしい。(立教大学 社会学部「メディア社会学科」(2006年4月学科改編)助教授 是永論)
リベラルな雰囲気に包まれたキャンパスで、自分が本当にしたいことを追究してほしい。(立教大学 法学部「政治学科」 教授 五十嵐暁郎)
単なる知識を生きた知恵に変えて、ビジネスを創造する力を養成する。(立教大学 大学院「ビジネスデザイン研究科」(2006年学科改編)特任教授 青木 輝夫)
自分の幸せが社会の幸福につながる道筋を見つけるために。(立教大学 大学院「21世紀社会デザイン研究科」教授 北山 晴一)
人にやさしく、世の中の役に立つ法曹の育成を目指す。(立教大学 大学院「法務研究科(法科大学院)」教授 廣瀬 健二)
「どのような答えを出すか」ではなく、「どのような問いを見つけるか」が大切。(立教大学 大学院「異文化コミュニケーション研究科」 教授 平賀 正子)

ニュースの詳細は朝日新聞紙面で。» インターネットで購読申し込み
asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
| 朝日新聞社から | サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク| 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ |
Copyright 2005 Asahi Shimbun. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.