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北山 晴一 Kitayama Seiichi
東京大学文学部フランス文学科卒業後、同大学院文学研究科修士課程修了、同博士課程満期退学。クレルモンフェラン大学、パリ第3大学留学後、パリ第3大学専任講師、立教大学文学部助教授を経て、同大学大学院教授。ほかに立教大学ジェンダーフォーラム所長、放送大学客員教授を歴任。『おしゃれの社会史』(1991年朝日新聞社)、『美食の社会史』(1991年朝日新聞社)、『官能論』(1994年 講談社)、『明日の家族-自立と協調の実現』(共著、1995年 中央法規出版)、『衣服は肉体になにを与えたか』(1999年 朝日新聞社)、『現代モード論』(2000年 放送大学教材)、『日本におけるカルチャーマネジメントの現状と展望に関する研究』(2002年 科研費報告書)など、著書・論文多数。 |
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■社会デザインとは、市民が協働しながら社会をつくっていく営み
ご承知のように、20世紀末にはじまった近代の社会文化構造の地殻変動は、21世紀に入ってますますその振幅を大きくしつつあるかに見えます。文明システムが危機的なフェーズに入ったということですね。このような状況のなかでは、これまで人類社会が築いてきた文明システムをそのまま維持することはできない。いまもっとも求められていること、それは、巨大な地殻変動の本質をしっかりと見きわめ、新たな社会運営のスキルを発見あるいは創造していくことではないか。「社会デザイン」とは、まさにそういう営みです。これからの世の中は、官(国や自治体)に寄りかかってすむものではないし、また利害を目的とする従来の民(企業)のみでやっていけるものでもない。市民が協働しながら社会をつくっていく必要がある。文明システムの危機管理には「従来とは異なるパブリック・インタレスト」を創出していかなくてはならない。こう考える人々が少しずつ増えているのではないでしょうか。たとえば阪神淡路大震災のときのボランティアの姿。海外で地道な活動をするNGOの人々…
大学院カリキュラムでNPO/NGOを正面から取り上げ、同時に(ここが大事です!)文明社会全体の危機管理に関わる問題を取り上げたのは立教大学が初めてです。研究科には専門の研究教育分野を3つ設けてあります。ひとつは、マクロなレベルで現代社会の新しいあり方を考える「社会組織理論」、次にNPO/NGOやボランティア活動など非営利組織の運営能力を養う「コミュニティデザイン学」、それから情報セキュリティ、防災から国際政治・平和学にまでいたる多様な領域での危機管理のセンスと識見を身につける「危機管理学」。この分野は今後いっそう発展するでしょう。
私自身の担当する科目は「アイデンティ論」と「親密社会論」の2科目。社会デザインを研究するにあたっての理論的な側面を扱っています。「アイデンティティ論」は、最近注目を集めている「自分探し」的な問題も扱いますが、学生諸君とは、個人の利害や欲望が近代国家形成の過程にどのように組み込まれていったかといった点について議論しています。国家はなぜ福祉政策や文化政策に予算をつけるのか、といった問題系ともつながっていきます。 |
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一方の「親密社会論」では、2つの問題を扱います。ひとつは、個々の人間やグループが別の人間やグループとフェイス・トゥ・フェイスの関係を作るにあたって心理的にどのような戦略を立てているのかといったミクロな人間関係に関わる問題系。もうひとつは、通時的な問題系。我々一人ひとりの生身の生き方が、社会体という網の目(ネットワーク)中でどう位置づけられてきたかという問題を扱います。男と女の問題、セクシャリティやジェンダーの問題、家族のあり方に関わる問題…各国の出生率と婚外子率との相関について議論したこともあります。
■社会をデザインする高い志と気概を!
この研究科の学生の平均年齢は34.8歳で、学部を卒業したばかりの若い人から、すでに定年で退職した年配の方までいて、男女比はほぼ半々です。社会人学生の職種は多様で、会社員・会社役員、官公庁・自治体の職員、大学の職員や教員、各種協会や財団の職員、薬剤師や税理士、NPOやNGOで働く人、または働こうとしている人、地方議会の議員、現職の国会議員も学んでいます。ここ数年は、CSR(Corporate Social Responsibility)の担当者など、企業の社会貢献の部門で仕事をしている人も増えました。多彩な分野の人材が社会組織のあり方や、新しい市民社会のあり方に関心を抱いていることがうかがえます。
研究科では、研究者である専任の教授スタッフのほかに、NPO、財団、行政、財界等から、非営利組織運営や危機管理学に精通した多彩な専門家を教授や講師陣に招き、より実践的な指導にあたっています。学外との共同研究や共同活動にも積極的に取り組んでいます。例えば研究科の正課科目「CSRインターンシッププログラム」が文科省の「派遣型高度人材育成協同プラン」に採用され、2006年度から本格始動します。また、授業の形態は教員や科目ごと多種多様で、一般的な講義形式もあれば、学生個人の研究成果の発表、グループワークとバラエティに富んでいます。ゼミ合宿も頻繁です。例えば私のゼミでは、図書館、美術館、博物館など営利組織と非営利組織の両方の要素を併せ持つ文化施設の運営に関心をもつ学生が多いので、今年は金沢21世紀美術館を訪問しました。
これからこの研究科で学ぼうとされるみなさんには、次のことを申し上げておきたい。まずは楽しく学ぶ姿勢について。次いで、知らないことがあっても恥ずかしがらないで尋ねてみる謙虚さ。院生仲間には各分野のプロ(税理士も薬剤師も会社の重役も、質屋さんも建築士も)がいて助けてくれます。研究科では、非営利組織の研究を大きな柱としてはいますが、営利組織のマネジメントも学んでほしい。営利組織の知識のない人に非営利の運営はできません。あと、基本的に研究テーマが決まっていない人は入れないが、教員の仕事はそのテーマをいったん崩してやること。寄り道をすることになるが、その分だけ深くなる。社会デザインを研究するとは「スキル」を学ぶことではない。スキルを構想する力をつけることです。「社会デザイン」には定義しきれない部分があります。それを埋めるのが自分なのだ、といった気概で学んで欲しいと思います。 |
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