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平賀 正子 Hiraga Masako
青山学院大学文学部英米文学科卒業。同大学大学院文学研究科英語学専攻博士課程修了。ロンドン大学大学院博士課程修了(PhD.)。立教大学大学院教授。専門は言語学、英語教育、語用論、隠喩研究。05年9月まで放送大学客員教授としてテレビ・ラジオの英語授業番組も担当。『表現と理解のことば学』(ミネルヴァ書房, 1996)、『異文化とコミュニケーション』(ひつじ書房, 2005)、Metaphor and Iconicity (Palgrave Macmillan, 2005)など、著書・論文多数。 |
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■多種多彩な異文化が研究対象。
世界が日に日に小さくなる現代においては、ものの考え方や行動様式を異にする人々が出会う機会が増大しています。メディア等の発達は実際に出会って対面しない人とのコミュニケーションの機会も提供し、さまざまな問題を生じさせるようになりました。“異文化コミュニケーョン”は、そうした背景から生まれた比較的新しい学問分野であり、最近にわかに注目されつつある研究領域です。異文化と聞くと国の違いや言語の違いといった大きな異文化をまず連想しますが、私たちの日常生活には、男女の違いや、家族における世代間の違いといった、小さな異文化が無数に存在します。私たちはそうしたコミュニケーションをも研究の対象とし、包括的に異文化コミュニケーションに取り組もうとしています。
この研究科では、自然や環境もまた一種の異文化であると認識しています。私たちはありのままの自然というものをそう簡単には理解することができず、それを解釈してくれる人の目を通して自然と付き合っています。例えば国立公園などへ行くと「自然ガイド」と称される人たちが案内してくれますが、その人たちのことを英語ではインタープリターすなわち解釈者と呼びます。言葉のわからない相手とのコミュニケーションを図る時に必要な通訳や翻訳と同様、自然という異文化とのコミュニケーションに際しても、それを媒介してくれる存在が必要だということです。
4年前にこの大学院が開設された当初から、多様な学生を受け入れてきました。例えば、日常的にさまざまな国の人とふれあう機会のある企業人や、JICAなどの国際機関で働く人、英語教育をはじめとする外国語教育に携わる人、外国語としての日本語を教えている人、通訳や翻訳に携わる人、そして環境教育や環境問題を異文化コミュニケーションという観点から探求しようとする人などです。特に最近は言語教育とコミュニケーションに関わる領域を志望する人々の多様性が増してきました。このような現状をふまえ05年度まで「英語コミュニケーション研究」とされていた研究領域を06年度から「言語コミュニケーション研究」と改称し、さらに幅広い研究に対応できるようになります。 |
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■リサーチワークショップをはじめ、実践的な科目群が充実。
この研究科の特徴的な科目の1つに、担当する教員ごとに工夫をこらして、それぞれの課題を実践的かつ集中的な形態で研究する「リサーチワークショップ」があります。05年度の私の「リサーチワークショップ」では、小山亘先生と共同で湘南国際村センターへ2泊3日で出かけ、記号論をテーマに英語のみの授業やディスカッションを行いました。言語コミュニケーションを記号論という包括的な視点から捉え、広く身体論などへつなげることにより、言語教育を根本的に問い直すことにつながるようなワークショップが展開できたのではないかと思っています。
私の担当する選択必修科目の1つに、「異文化語用論」という授業があります。これまでの言語学は文法や発音などもっぱら言葉の構造を主要な研究対象としてきましたが、それだけでは将棋のルールは知っていても実際にプレイしたことがないといった状況に陥りかねません。語用論は私たちが誰を相手に、何について、どのような状況の中で、実際に言どのようにことばを使って行動しているかを明らかにするもので、いわば現実的な言語学だといえるでしょう。また「認知言語学」という授業では、言葉による分類やコミュニケーションのスタイルがどのように文化を反映しているかということについて学んでいます。例えばコメについて英語ではriceとしか呼びませんが、それを主食とする私たちは、植物の時には稲、穀物になると米、それが炊かれるとご飯とかメシというように、細かく分類をしています。一方私たちはパンのことをパンとしか呼びませんが、日本人にとっての米と同じように、それを主食とする西洋には原料である麦にちなむさまざまな呼び名があります。つまり麦を細かく分類しているのです。
このように、言葉の背後には人間の生活様式や行動様式、さらには価値観の違いがあるわけですから、その背景にある文化を深く理解することが真の異文化コミュニケーションには欠かせません。そしてそうした異文化コミュニケーションのスペシャリストは、今後社会のさまざまな分野でこれまで以上に必要とされるようになるのではないでしょうか。このほど文部科学省の「『魅力ある大学院教育』イニシアティブ」に、この研究科の教育プログラム「持続可能な未来へのリサーチワークショップ(異文化コミュニケーション学構築をめざして)」が採択されたことにも、そのことは物語られています。
これからこの研究科に入学される方へ期待したいのは、自分が学んだことを日々の生活や社会の中で実践することです。そのためにも、この研究科で「よき問い」を見つけてほしいと思います。「問いの答えを出すことが大切なのではなく、どういう問いを見つけるかが大切」とは、私自身が常々心がけている研究の指針です。学問をするうえでの基本的な姿勢だといえるかもしれません。 |
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