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私の研究室から

2013年7月8日掲載

「専門は何ですか」と尋ねられたとき、私は、「メディア社会学やメディア史をやっています」と答えることが多い。「メディア社会学」とは、新聞・テレビといったマス・メディアから携帯電話・インターネットなどのパーソナル・メディアに至るさまざまなメディアに着目し、社会の中でのその機能や影響などを解き明かそうとする学問分野であり、またそれを歴史的にアプローチした分野を「メディア史」と称しているのだが、この説明で、なるほどと納得してくださる方は、おそらく少数であろう。

そこで、ここでは私が近年興味を持って研究対象としている「世論調査」に焦点を当てて、私の研究を紹介することとしたい。

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  • 「基礎演習」の風景

今日の日本の政治情勢を見ると、以前にも増して、世論調査の占める地位が高まっているように見える。主要新聞社・放送局は、ほぼ毎月、世論調査を実施しており、その調査結果は定期的に報道されている。各社が必ず行うのが「内閣支持率」と「政党支持率」の調査であり、それは政局に大きな影響を与えてきた。例えば、2009年に発足した鳩山由紀夫内閣は、当初、内閣支持率が70%を超えていたが、その後、徐々に支持率は低下し、翌2010年初めには、不支持率が支持率を上回るようになる。その後も普天間基地移設問題を巡る混乱などから支持率の低下は止まらず、最終的には内閣支持率が20%を割り、同年6月に退陣に追い込まれることとなったのである(ここでの世論調査結果は、共同通信社のものを用いた)。ここで問題としたいのは、政治家も、そして世論調査を実施しているマスコミ自体も世論調査の結果に過敏になり、それに翻弄(ほんろう)されている状況である。内閣支持率が、ある一定水準を割ると、「首相の求心力が低下した」「危険水域に入った」「政権は死に体となった」といった観測がまことしやかに流れ、首相の退陣・次期首班の予測など政局がらみの動きが公然と現れるようになる。鳩山内閣も、選挙を待たずして、与党内からの退陣要求に屈し、総辞職を選択したのである。まさに世論調査に表された数値が、一人歩きをする状態である。鳩山内閣だけではない。この10年間以上、この国のいくつもの内閣が世論調査結果によって倒れ、交代してきたと言っても過言ではない。こうした姿が本当に望ましいものなのだろうか。世論調査が、単なる人気投票に堕していないかという疑問を持たざるを得ない。