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私の研究室から

立教大学の中のスポーツ医学 コミュニティ福祉学部 准教授 加藤 晴康

2013年10月15日掲載

研究テーマについて

これまで、私が行ってきた研究歴について紹介します。私は1990年に医学部を卒業し、すぐに研修医生活が始まりました。この研修医2年間は、月に1〜2日以外は病院に寝泊まりし、ボロ雑巾のように仕事をして、本当にたくさんのことを覚えました。この辛く楽しい研修医生活が終わり、やっと半人前の医師になったときに、専攻した整形外科の臨床診療を行いながら医学基礎研究の勉強を始めました。初めてお世話になった研究室は東京大学農学部生物化学研究室で、軟骨細胞の培養および遺伝子導入の実験をさせていただきました。研究の右も左も分からないのに親切に指導してくださった海老原充先生には、今でも感謝しています。その後、聖マリアンナ医科大学組織学教室でニワトリを使ってメラトニンと側弯症の研究を開始し、現東京医科歯科大学服部淳彦教授にご指導いただきながら、骨とメラトニンの研究、下垂体細胞のホルモン分泌の研究、軟骨細胞の研究などを行いました。これらの実験を行うにあたり、RIA、レセプターアッセイ、ウェスタンブロッティング、サザンブロッティング、RT-PCR、in situ hybridization(イン サイチュー ハイブリダイゼーション)、組織切片の作り方、H-Eなどの一般的な組織染色、免疫染色などの技術を習得することができました。この期間は私の研究の基礎となりました。

また、1995年より日本サッカー協会で医学の仕事をさせていただき、16歳以下の男子日本代表をはじめに、17歳以下、20歳以下、アテネ五輪、北京五輪、A代表と多くのカテゴリーでのチームドクター(帯同ドクター)を経験させてもらっています。サッカー育成年代の日本代表と関わることで、長い間、将来を有望視された子どもたちを見てきました。プロになる選手もいれば、ケガでサッカーをやめてしまう選手もいます。〈選手にとってケガをしないことも実力のうち〉という人がいます。これは間違ってはいませんが、決して正しいとは思いません。私たちメディカルスタッフは、〈ケガも実力のうちだから、ケガするのは仕方がない〉と考えるのではなく、〈ケガをしない選手になるために、ケガをしない身体になるための方法を見出し、それを指導する〉ことが重要であると考えています。そのために、私はスポーツ外傷・障害を予防するような方法を見つける探究をしています。

これ以外にも整形外科医として、骨癒合の研究や細菌感染、主にブドウ球菌の研究を行っていました。

2008年に着任して

  • イメージ
  • 今後の充実、発展が期待される
    生化学実験室(HPLC)

2008年に整形外科医として働いていた大学病院を退職し、立教大学コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科に着任しました。これまでは、環境の良い医学部の研究室を使って基礎医学研究を行っていましたが、立教では自分の研究を行う新しい実験室を、ゼロから立ち上げなければなりませんでした。これまで行ってきた研究のうち、どの実験を立教で続けていけるのだろうか、と考えました。医学部のように実験動物の飼育ができる動物飼育施設があるわけではありません。ヒトの組織切片を採取してハイブリダイゼーションを行えるでしょうか─サンプルとなる組織の採取方法が問題となります。遺伝子を扱うRT-PCRを行えるでしょうか─遺伝子を扱える実験室がありません。軟骨培養ができるでしょうか─培養設備を作るには莫大なお金が必要となります。細菌研究を続けることはできるのでしょうか─立教大学では細菌を取り扱う実験室を持つためにはいくつか問題がありそうです。このように多くの不安と疑問を抱えながらの着任となりました。

最終的に、研究のサンプリングのことを考え、これまでに使用したことがない実験機器であるHPLCを購入しました。HPLCは唾液内のメラトニン濃度を測定できます。今後、唾液のメラトニンを測定できるようになれば、間違いなく研究の大きな1つの柱となります。とにかく、サンプリングが容易な実験系から確立していくことを考えました。これまでさまざまな実験方法を使用してきたにもかかわらず、一度も行ったことのない実験機器であるHPLCを研究の柱とすることは、わずかな脱力感を覚えると共に、いつか実験設備を整えられるような環境を作っていきたいという意欲が湧いてきています。