12月1日掲載


セカンドステージ大学での科目というと、文系の科目がほとんどと思われがちだが、理系の科目もある。私の教える「生命の多様性」もその一つである。
生命は多様で、自然は美しい。しかしその美しい自然も見る者の感性と興味次第で味気ないものにもなってしまう。春、道沿いに咲いているのは名も知れぬ花ではないし、郊外の雑木林で名もない鳥がさえずっているのでもない。ちょっと道端に目をやるだけでも、春ならナズナやハコベやスミレやオオイヌノフグリが小さな花をつけ、郊外の野道を歩くだけで、ホオジロやヒバリやカワラヒワの声が降ってくる。私の講義では、地球上のさまざまな生態系とそこに住む生き物たちを紹介し、なぜこの地球上にはこんなに多種多様な生き物がいるのかという講義を展開している。
ところで、この講義にはフィールドワークというのがついている。もちろん本格的な生態学のフィールドワークをするわけにはいかないが、大学の構内を歩くだけで、いろいろな自然に出会うことができる。そこで、講義の中では、大学内の自然散策をすることにしている。植物も虫も鳥も、気付かなければ通り過ぎてしまうかもしれないが、ちょっと立ち止まって探してみると、こんな大都会の真ん中にある大学構内でも、さまざまな生き物たちの息吹がある。
また講義の番外編として、季節の自然観察会も開催している。今年は初夏の明治神宮、小石川植物園、上野動物園、そして秋に番外編として長野県の上高地一泊観察会を開催した。今後は秋の小石川植物園と、冬の不忍池カモ観察会を予定している。
立教セカンドステージ大学の平均年齢は60歳だから、私より少し上。この世代はかろうじて高度成長期前の、まだそれなりに日本のあちこちに自然が残っていた頃の風景を子ども心に知っている世代である。「トンビがくるりと輪をかいたあ?」(三橋美智也)と歌っている小学生の頭上で、実際にトンビが輪を描いていた時代でもある。だからこの世代は自然への接し方、楽しみ方を知っている世代である。ザリガニもカエルもカマキリも、昔の子どもたちにとっては、全部遊び友達であった。
立教セカンドステージ大学の受講生の多くは、社会経験もこれまでの人生の苦労も私よりはずっと多そうな、そうそうたる先輩諸氏である。だから、講義はちょっとやりにくいのだが、この共通の自然体験を共有しているという親近感を楽しませてもらっている。

大阪府立寝屋川高校卒業後、大阪府立大学農学部で昆虫学を学ぶ。その後、京都大学農学部昆虫学研究室を経て、大阪市立大学理学部博士課程に進み、セッカの一夫多妻制の研究で理学博士号を取得。現在、研究室の院生・学生と一緒に野外で研究している鳥は、ルリビタキ、ジュウイチ、オオセッカ、ヒバリなど。最近はときどきオーストラリアのダーウィンへミドリカッコウの調査に行っている。日本動物行動学会会長、雑誌『生物科学』(農文協発行)編集長。専門は鳥の行動生態学、動物行動学、進化生物学など。進化心理学(人間社会生物学)も興味の範囲。