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香山リカ対談

「変わりゆく日本女性の生き方」その背景に流れるもの
エッセイスト 酒井順子×立教大学教授・精神科医 香山リカ

2008年6月1日掲載

若い女性の結婚欲は高まっている?

  • 酒井順子イメージ
  • 揺り戻しみたいな感じかもしれません・・・結婚志向、キャリア志向の波はテレコでくるんですよ、きっと
  • 香山リカイメージ

香山リカ(以下、香山) 今日は、酒井さんと「女性の生き方」についてのお話をしたいと思っています。

酒井順子(以下、酒井) どうぞよろしくお願いします。

香山 「30代以上・未婚・子ナシ」を「女の負け犬」と呼んだことで話題になった『負け犬の遠吠え』を出版してから何年くらいになりますか?

酒井 早いもので、もう4年半になります。

香山 その後、状況はどうなっていますか?

酒井 ちょっと変わってきていますね。「負け犬にはなりたくない!」とばかりに、若い女性の結婚欲が高まってきている気がしています。

香山 この本が反面教師になったということでしょうか?

酒井 「ああいう風には呼ばれたくない」「ああはなりたくない」と思っているのかもしれません。香山さんや私たちの世代だと、学生時代につきあっていた人とは、社会人になったらとりあえず別れていたじゃないですか。それが別れないでちゃんと結婚するようになった感じはあります。ある意味、賢くなっているというか。

香山 結婚を促進しようとして書いた本ではないのにね。ネガティブキャンペーンとして効いてしまったのかしら。酒井さんとしては、そんな状況をどう思っています?

酒井 よかったと思いますよ。どんどん負け犬が増えていったらやっぱり大変ですもん。少子化も進んでしまいますし。

香山 一方で、負け犬と呼ばれる30代以上の未婚者が「私って負け犬!」と堂々と言えるようになった効果もありますよね。

酒井 それもややあるとは思います。

香山 私が今まで教えてきた女子学生たちには、負け犬になりたくないからというのではなく、積極的に専業主婦になりたいという願望が広がっているように感じます。理由を聞くと、「楽そうだから」と答えます。

酒井 やりたい仕事などはないのでしょうか?

香山 昨今、教育の現場ではキャリア教育が進んでいて、現場で働いている人の話を聞く機会が多いのも、一部の人には逆効果になっているのかもしれない。「終電は当たり前!」「仕事、厳しいですよ〜」などと、話している本人は勲章のようなつもりなんでしょうけど、話を聞いた学生たちはそれこそ「ああはなりたくない・・・」となる。それで、女子学生たちは「男に生まれなくてよかった、就職しなくていいんだもん!」とか言っているわけです。今までのジェンダー教育は何だったのかとなんだか悲しくなってしまいます。

酒井 きっと、揺り戻しみたいな感じかもしれませんね。多分、今の若い世代は、私たちぐらいの雇用機会均等法世代がバリバリ働いて疲れ果てている姿を見て、「ああはなりたくない」と。そしてさらに次の世代になると、上の世代を見て「もっとキャリアを積みたい!」と、またバリバリ働くようになったりするんじゃないでしょうか。結婚志向、キャリア志向の波は交互にくるんですよ、きっと。

香山 時々「私は働くお母さんを見ていて寂しかったから、自分は子どもの側にいてあげたい」などと、学生に言われたりすると、救われない気持ちになっちゃいますけどね。

酒井 私たちの世代だと、親が自分の好きなことはできなかったから娘には・・・みたいなパターンが多いですよね。

香山 やはり世代によって変わってくるのかな。じゃあ、今専業主婦志向の若い子たちは、将来親になったときに「やっぱり仕事をしていればよかった」と後悔して、自分の娘には「あなたは仕事をして」とか言うのかしら。

酒井 そう。永遠に繰り返すのです(笑)