8月1日掲載


香山 かつてはヤンキーと言われるような人たちもそれなりに異性にもてたりしてて、楽しそうでしたよね。
森永 昔は社会からこぼれた不良が、地元の商店街の大将になるというような復活の道筋があったのですが、今はない。例えば、中学で不登校になるとか、高校中退したとか、大学受験に失敗したとか、留年を続けて退学になったとか、就職して3年以内で辞めちゃったとか、人生の競争の坂道からどんどん人が落ちて行って、最後に残った人たちだけが良い暮らしができるという社会になっているんです。しかもその競争もフェアではなく、親が強いと最初から上に行ける。わずかな勝ち組企業に入社する人のかなりの部分がコネだったりしますからね。
香山 若者はそれを知っていても別に怒ったりもしないですよね。コネを利用する側もそれがかっこ悪いとは思わない。どうしてなんでしょう。
森永 力ではい上がって行こうと思えないから批判もしないんです。弱れば弱るほど自分を救い出してくれる白馬の王子様を求める傾向が強くなっていくのが人間の基本的心理です。小泉首相を圧倒的に支持したのも実は負け組なんです。でも彼らが見ていたのは幻想で、自分を引っ張り上げてくれるのではなくてもっとひどいところに落とされてしまった。でも、そこで支配階級に怒りをぶつけるのではなく、その下のたたきやすいところをたたくだけなんです。本当の真犯人に対しては批判する能力を失っている。
香山 それをどうやって知らしめていったらいいのでしょうか。
森永 私もそこをどうしても伝えたいから、大学の先生をやっているんです。でも、がんばってマルクスを教えようとして、授業で階級闘争とかプロレタリアートとか言っていたら、学生にどんどん引かれてしまって、結局4回くらいでマルクスは諦めちゃいました(笑)。
香山 なかなか難しいですよね。私も大阪の大学で、生活に直接影響してくる橋下知事の改革をなぜ支持するのかと聞いたのですが「テレビで見たことがある人がそばに来てくれたらやっぱりうれしい」って言うんです。
森永 テレビで売れているだけでは不十分で、なおかつ見た目がよくなくてはダメなんです。石原都知事が圧倒的な支持を得ているかなりの要因がかっこいいからなんですよ。
香山 小泉さんも顔が認識されていたというのが大きかったのでしょうね。
森永 私も小泉改革の問題点を学生に一生懸命伝えて、それなりに理解されたと思っていても、まだ「小泉さんいいじゃないですか」と言う学生がいる。まだ分からないのかと思って理由を聞くと「だってモーニング似合うじゃん!」などと言うのですからこっちはもう脱力しちゃいます。それでも、諦めちゃいけないと、大学が許してくれるぎりぎりの1000人くらいの学生を授業に受け入れて、一生懸命その意識を変えようと努力していますよ。要は、教養のレベルが落ちているんです。そこをなんとかしなければ絶対にいけない。
香山 すごい、森永さんから教養の復権という発想が出るとは(笑)。私も頭ではそうは思いながらも、一方でどこか自分も若者側みたいな気持があって「教養って何さ」とも思ってしまう。彼らは私たちが思っているような教養は知らないけれど、携帯電話の使い方や飛行機のスマートな乗り方は熟知している。単に知っていることの内容が変わってきただけとも言える。
森永 でも、支配者たちが仕掛けた枠の中での能力は高いけれど、自ら主体的に真実を追求していく力はないんです。
香山 確かにそれはありますね。私もスピリチュアル番組などを題材に、誰にでも当てはまる話術を使うなどのだましのテクニックを検証していく授業をしているのですが「手口はよく分かった。でも、内容には感動した」と言う学生がいる。あえて言えば、それくらい信じるものや救われる道が今はなくなっているということかもしれないですけれど。
森永 ここにいたっては、もうみんなで一致団結してがむしゃらに導いてあげなければだめですね。
香山 なかなか簡単な道ではないかもしれませんが、同じ教育者として、お互いがんばって行きましょう!

