11月16日掲載


香山 雨宮さんは現在厚生労働省が出している派遣法の改正案には不満を表明しているんですよね。
雨宮 日雇い派遣を禁止するだけでは問題の抜本的解決にはなりません。そんなことをしても、失業者があふれるだけです。これに関しても、集会などで訴えていく予定です。
香山 今後はどういう方向に進んで行こうと考えていらっしゃいますか。
雨宮 海外との連携ですね。この間、韓国に行ってきて面白かったんです。韓国でも日本と同じようなことが起こっている、というか、日本より状況がひどい。日本の非正規雇用率は33.9%くらいですが、韓国では50%で2人に1人、しかも20代だと60〜70%が非正規雇用なんですね。韓国の大学進学率は80%を超えているというのに…。地方公務員の倍率なんて100倍を超えているんです。こういう状況の中、韓国でデモがあったのですが、それにも参加したり、活動家たちとも交流したりもしてきました。また、私たちが使っている非正規雇用層を指す「プレカリアート」という言葉はイタリア生まれなのですが、イタリアでもこうした問題を共有していて、高学歴なのに全然正社員になれない20代が社会問題化しています。このようにグローバリゼーションの中で同じ状況がいろいろな国で同時に起こっていることに気付いたので、何か一緒に行動できないかと思っているところです。
香山 そういう社会的に抑圧されてしまっている若者たちが、良い形で連帯したり声を上げたりしていけばいいけれども、フランスであった、若者たちが労働機会を奪い合って移民層に対して暴走してしまったり、小泉改革などの際にあった負け組をさらにボロ負け組みたいなものに陥れたりするような動きに向かわなければいいなと思いますよね。
雨宮 分断や対立させられることや、自分の負の感情がある言説に引っかかってしまうというようなことは、小泉改革の時に既に経験して学習した人は多いので、そのあたりは大丈夫だとは思います。海外の事例でも分かっていますし。そういう意味でも、海外との連携は本当に重要ですよね。
香山 そういうのはネットを通じてではなく、リアルの世界で活動しなくてはだめですか?
雨宮 ネットを通してでも、呼びかけるとすぐに人が動くといったすごい瞬発力のようなものはありますが、やはり人と会って話さないと限界があると思いますね。
香山 雨宮さんはもともと知らない人と話すのは得意なんですか?
雨宮 いいえ、全く得意じゃないです(笑)。でも、目的があって話すのであれば大丈夫なんです。
香山 今後は外に向かって行くわけですね。
雨宮 はい。いろいろな世界を見てみたいです。
香山 お節介だけれど、そんなにいろいろな活動をされていて、疲れないですか?
雨宮 全然。むしろ、自分の個人の仕事が忙しくて集会に行ったりデモに参加したりというような活動ができなくなるのがストレスになっているくらいです。来年の3月から6月くらいまでのメーデー前後は仕事を一切入れないようにして、いつでも活動に参加できる状態でいようと思っています。
香山 最後にちょっとおかしな質問ですが、雨宮さんの活動は誰のためにやっているのですか?
雨宮 単純に自分が面白いからですね。誰かのためにとか使命感を持つとそれに押しつぶされてしまう気がしますので。ただ、誰かが本当にお金がなくなって困った時に駆け込めるような場所はこれからも提供したり、作ったりしていきたいですね。
香山 今日は興味深いお話を本当にありがとうございました。
2008年10月14日 「対論 生き抜くこと」出版記念 トーク&サイン会から



