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香山リカ対談
コミュニケーションツールは人間関係を変えるのか?
作家 村山由佳×立教大学教授・精神科医 香山リカ

12月16日掲載

やっぱり物語は求められている

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  • 物語には人を癒やしたり元気づけたりする力があるということは私の信条でもありますので、だったらそこに「こんなに違う物語もある」ということを見せていきたいですね

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香山 私と村山さんは十年くらい会っていないのですが、メールや日記があると逆に普通に会っていたら知りえないことも知っている関係になっていますよね。

村山 そうですね。面と向かったら「実は私…」などとは語れないことも日記やメールの形をとると書けてしまうし。でも、やっぱり言葉というものは否応なく虚構性をはらんでいますよね。私は小説を書いていて、いつも六色しかない色鉛筆で極彩色の絵を描かされている気がします。一度私の中で言葉に「翻訳」した考えを、読者もまた自分の経験で「翻訳」しながら読むわけで、そこにはすでに虚構が生じている。普段メールのやりとりをしている人たちも、つきつめて考えればそれは虚構のやりとりでしかないことをどれだけ分かっているのかなと思います。

香山 若い人たちは虚構でもいいと思っている節があります。結構平気でうそをつき合ったりしていますよ。でも、自分はうそはつくけど相手のことは意外に信じていたりと、その辺のリアリティーの基準も私たちとは違います。この前、メールでうそをついたことがあるかという調査が新聞に載っていましたが、すごく高い確率でしたよ。

村山 まあ、私もありますけど(笑)。うそも方便の延長線と、何でそんなうそをつくのという無意味なうそと、言葉を選び取る過程でどうしても出てしまう虚構とはそれぞれに違う。今流行の携帯小説も開発しがいのあるメディアだと興味は持っていますが、実際そこに書かれた言葉は虚構性どころか叙情もないくらいに単純な表現ばかり。それを否定はしませんが、柔らかい物ばかり食べるとあごが弱っていくように読解力や思考力も限りなく弱まっていくのでは…と“老婆心”ながら私も同じリングに上がって、書いたものをぶつけてみたいと思っています。レイプとリストカットと妊娠といった過激な場面がなくても、的確な心情描写があればここまで感情移入できるということを知ってもらいたくて。

香山 音楽の世界だったら、「会えなくて切ない」「私だけを見て」みたいな古典的な詞でも共感されていますよね。なんで携帯小説だけあんなに過激になってしまったんでしょう。

村山 やっぱりある種の「物語」が強く求められているということですよね。物語には人を癒やしたり元気づけたりする力があるということは私の信条でもありますので、だったらそこに「こんなに違う物語もある」ということを見せていきたいですね。

香山 楽しみにしていますので、ぜひ書いてみてください。

本日はありがとうございました。


  • 香山リカ署名
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村山 由佳(むらやま・ゆか)
村山 由佳(むらやま・ゆか)
1964年東京生まれ。作家。

立教大学文学部卒業後、不動産会社勤務、塾講師、有線放送アナウンサーなどを転々とし、1993年『天使の卵』で小説すばる新人賞、2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。2009年1月刊行の最新作は、「週刊文春」連載中から過激な官能表現で物議をかもした野心作『ダブル・ファンタジー』。

香山 リカ(かやま・りか)
香山 リカ(かやま・りか)
1960年札幌生まれ。東京医科大学卒業。精神科医。立教大学現代心理学部教授。

臨床経験を生かして、新聞、雑誌などの各メディアで、社会批評、文化批評、書評など幅広く活躍。著書に、『いまどきの「常識」』『ぷちナショナリズム症候群』『なぜ日本人は劣化したか』。

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