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香山リカ対談

ドキュメンタリーの可能性を開いた学生たちとの「驚きと発見の日々」池谷薫(立教大学特任教授・映画監督) × 香山リカ(立教大学教授・精神科医)

2011年2月16日掲載

ここまで教えることに夢中になるとは思わなかった

香山リカ(以下、香山) 立教大学の現代心理学部映像身体学科は2006年4月の開設以来、講義、演習、ワークショップの3本柱を掲げ、創作や制作の現場体験が豊富な教授が指導することが大きな特色となっています。池谷先生はこれまでドキュメンタリー映画を数多く手がけてこられましたが、教えるという経験はあったのですか。

池谷薫(以下、池谷) 常勤で本格的に教えるのは立教大学が初めてでした。

香山 大学でドキュメンタリーを教えることの可能性をどんな風に感じていましたか。

池谷 正直言うと最初は手探り状態でした。最近の若い子は自分のことばかりに関心があるという印象があって、僕自身プロとしてやってきて自分のことをテーマにするのは考えたこともなかったので、“自分探し”をテーマにしたセルフドキュメンタリーばかりになったらつまらないなと。案の上、最初に学生にテーマを出してもらったら、ほとんどが自分や友人がテーマになっていたので、これは困ったなと思いましたね。ところが、なかには「どうしてもこの作品を作らないと先に進めない」という相当な覚悟を持っている学生もいた。そして、彼らと向き合っていくうちに徐々に「これはありだな」と確信するに至ったんです。

香山 教育とご自分の活動のバランスはどのようにされているんですか。

池谷 特任なので自分の活動も続けられると思っていましたが、今ではどんどん教えることに傾斜しています。もともと僕は何にでも夢中になってしまう性格なのですが、ここまで教えることに夢中になるとは思いませんでしたね。学生からは日々、驚きと発見をもらっていて、大きなやりがいを感じています。

香山 山形国際ドキュメンタリー映画祭での上映作品を新座キャンパスで上映する「ヤマガタin立教」をプロデュースされていますね。

池谷 山形国際ドキュメンタリー映画祭というのは1989年から隔年で開催されている世界有数の映画祭です。世界各国の良質なドキュメンタリーを1人でも多くの人に観てもらおうと始めたのが「ヤマガタin立教」です。一昨年は山形映画祭に学生たちと行ったのですが、ウィークリーマンションを借りて1週間で40本も観た熱心な学生もいたんですよ。

香山 私も同じ学科にいて驚いているのですが、学生が主体的に活動しているんですよね。

池谷 上映会の運営は、企画から作品選考、宣伝、上映、当日のトークにいたるまですべて学生が自主的にやっています。映画は人に観てもらって初めて命を持つわけですから、映画を多くの人に共有してもらう作業を体感できたことは、彼らにとって貴重な経験になっていると思います。上映後に「開かれたトークショー」といって、さまざまな世代、いろいろなバックグラウンドを持った観客同士が、映画について語る対話の場を設けたりと、面白い取り組みもしています。また、最近は映像身体学科以外の学生も活動に参加しはじめたのがうれしいですね。

香山 今の学生はお客様感覚で自分から動かないと言う人もいますが、やりたいことさえ見つかれば、猛烈に動き出しますよね。

池谷 結果が見えるのが励みや達成感になっているんだと思います。アイデアも豊富で、逆に僕の方が楽しませてもらっています。