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香山リカ対談

2012年11月1日掲載

創立当初から立教大学の「建学の精神」の核となっている“キリスト教に基づく教育”とは何か。また“自由の学府”とも呼ばれる立教大学の教育が目指すところとは。立教大学で10年にわたり学生と真摯に向き合い、人間としての成長に寄り添っている八木正言チャプレンと香山リカ教授が語り合いました。

※チャペルとは学校や病院などの施設・組織に設置された礼拝堂のこと。チャペル付きの牧師のことをチャプレンという。

キリスト教の精神に基づく教育の真意とは

香山リカ(以下、香山) 八木チャプレンは10年前に立教大学に着任される前は、街の教会に勤務されていたそうですが、大学という新しい環境でチャプレンとして働くことになったときは、どのようなお気持ちでしたか?

八木正言(以下、八木) 以前は、クリスチャン、あるいはこれから洗礼を受けることを希望している、いわばある程度キリスト教に理解のある方、あるいは理解したいと考えている方たちと接していました。ですから、立教大学に着任してすぐに、それまで当たり前のように使っていた言葉が、いかにテクニカルタームだったかということを思い知らされました。例えば「神の国」と言っても一般の学生には通じません。最初の1年は、キリスト教について学生に分かりやすく伝え、受けとめてもらうためにはどんな言葉を使ったらよいかを考え、いかに言葉を置き換えるかということに苦労しました。

香山 チャプレンの皆さんは、当『立教ジャーナル』のコンテンツ「チャプレンの言葉」でも、さまざまな聖書の言葉について、日常的なエピソードを交えてわかりやすく紹介していらっしゃるほか、大学の公式サイトや刊行物などを通して、さまざまなメッセージを発信されていますね。

八木 私たちチャプレンは、常に一人一人のかけがえのない人間である学生と向き合っているのだということを伝えると同時に、立教大学の建学の精神「キリスト教に基づく教育」を学生、教職員を含めた大学の構成員一人一人が理解し、解釈し、浸透させる、そのサポートをしたいと考えています。

香山 立教大学では「キリスト教に基づく教育」という考えが、学内のさまざまな場所に根づいていますが、私たちはこのキリスト教の役割についてどのように解釈すればよいのでしょうか。

八木 立教大学では、大学教育の根本となっているのが「キリスト教の精神」ということであり、決してクリスチャンとしての知識、あるいはキリスト教の知識を増やすことを目的としているわけではありません。ここに通う皆さんが、心の成長や人間としての成長をキリスト教というツールを使って学んでいるのだと考えていただけると分かりやすいでしょうか。

香山 私は新座キャンパスの「チャペルアワー」などの礼拝に足を運ぶことがありますが、大学におけるチャペルの存在はどのような意味があるとお考えですか?

八木 チャペルは、キリスト教に基づく教育を行う立教大学のシンボルとして、さまざまな役割を果たしています。中心となるのは確かに「礼拝」ですが、その礼拝も、例えばキリスト教の話題だけに限らず、学生や教職員がスピーチをしたり、聖歌隊の美しい歌声に触れることができたり、学生にアンケートを行って決定したテーマを取り上げるなど、初めての方でも気軽に参加できるよう工夫しています。その考え方の中心には、礼拝は、自己を静かに振り返るときであり、また他者に思いをはせるときでもあり、クリスチャンだけのものではないという私たちチャプレンの考えがあります。どなたでも参加できますので、より多くの方に気軽に参加してもらえたらと思います。

香山 立教大学では、キリスト教科目が必修科目ではありませんが、礼拝や授業以外ではどういった場面でキリスト教の精神に触れることができるのですか?

八木 近年、多くの大学が正課に加え、正課外の活動を重んじています。しかし、立教大学は他大学に先駆け、正課外の活動を単に授業以外の活動とするのではなく「正課外教育」として位置づけ重視してきた歴史があります。これは、大学とは単に専門的な知識を増やす場所としてのみあるのではなく、さまざまな体験を通して「自分づくり」を行う場所であると考えられてきたからだと思います。自分の価値観を形づくり、社会における自分の役割を見出すためには「自分で体験して自分で考える」ことが必要です。立教大学では、チャペル、学生部、キャリアセンターなどの部局が正課外教育プログラムを展開しており、それらを「立教チャレンジ」と称していますが、こうした各種プログラムの内、チャペルが主催する「奥中山ワークキャンプ」や「日韓キャンプ」は、学生がキリスト教に体験的に触れられる貴重な機会となっています。