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歴史の中に自らを位置づけ、世界に開かれた大学へ 立教大学総長 大橋英五
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 立教大学では、2006年5月26日、大橋英五・経済学部教授が、押見輝男前総長の後を引き継いで第18代総長に就任した。この春、2学部新設をはじめとする全学をあげた大改革を実施し、大きく生まれ変わった立教大学。その最初の舵取りを担うこととなった大橋新総長に、ビジョンと意気込みを伺った。


自らのあり方を問い直す真の大学改革を

 21世紀を迎え、急激なグローバル化、情報化をはじめとするかつてない大変革を経験しつつある私たちの社会は、その理念をあらためて問われているのではないかと思います。そのような社会で活躍すべき人材を育てるという役割を担う大学が、従来のまま変わらずにいてよいはずはありません。

 実際、多くの大学が自己改革に積極的に取り組んでいることはご存知の通りですが、懸念も感じています。少子化による18歳人口の減少を背景に、マスコミなどでも「大学の危機」が大きく取り上げられる中、改革の議論がいわば「生き残り戦略」といった側面にかたより過ぎているのではないか、ということです。

 戦後、教育の高度化と大衆化を同時に実現したわが国の大学は、一方で受験戦争、偏差値への偏向などの弊害も生み出しました。大学改革は、こうした現在の教育のあり方、そして大学自身のあり方を深く問い直すことから出発しなければなりません。その上で、大学のあるべき将来像と、それを実現するための戦略・政策を提示することこそが、今私たちに求められているのです。

 時代に合った大学の存在理由を模索するためには、むろん、21世紀のトレンドを正しく見定めることが必要です。しかし、「社会の要請に応える」という名のもと、ただ流行を追うような改革を繰り返すだけでは、新しい理念を提案して、よりよい社会の構築に貢献するという大学の責務を果たすことはできないでしょう。

 大切なのは、大学が歴史の中に自らをきちんと位置づけることだと私は考えます。

 大学、とくに私立大学は、創立者の教育に対する強い思いを「建学の精神」という形で受け継いでいるはずです。ここにもう一度立ち返り、今日までの実績、社会の中で果たしてきた役割を検討・評価する中から、各大学がそれぞれの未来の方向性を見つけていくべきなのではないでしょうか。

 いうまでもなく、わが立教大学は130余年におよぶ輝かしい歴史をもっています。それを踏まえて、立教にふさわしい、なおかつ新しい教育、研究の場を創り、発展させていく。このことに全学が一致して取り組む態勢を築くことが、私の使命であると考えています。


「リベラルアーツ教育」の伝統を未来に生かす体制づくり

  アメリカ聖公会の宣教師によって創立された立教大学は、その建学の精神を受け継ぎ、一貫して「キリスト教に基づくリベラルアーツ」を教育の中心にすえてきました。リベラルアーツは「教養」と訳されますが、この教養とは単なる知識の量を言うのではありません。知識を熟成して自分の内面的な規範にまで高めた結果として身につく、他者を理解し他者の立場で考えられる能力、それが教養であると思うのです。そしてこれは、職業や立場を問わず、すべての人間に求められる資質ではないでしょうか。

 それゆえ本学は、かつての一般教養課程に代わる独自のリベラルアーツ教育のシステムである「全学共通カリキュラム」を、一般にいわれる「教養ある専門人」ではなく、「専門性に立つ教養人」の育成を目指すものとして組み立てました。これによって初めて、実をあげる教育が可能になったと考えています。

 まさに立教にふさわしい教育の場といえるこの全学共通カリキュラムは、現在、セカンドステージに向けて内容の検討を進めています。「知の内面化」「サービスラーニング(奉仕活動などへの参画・実践を通した学習)の重視」「異文化理解」「大学の国際化」といった観点から、さらなる拡充を図っていく予定です。

 また、専門性を追究する学部教育においても、同時に視野を広げ教養を深められるよう、工夫をこらしたカリキュラムを提供しています。 さらにこの4月、新たに「経営学部」「現代心理学部」、そして既存学部でも4つの新学科が、新入生を迎えてスタートしました。いずれも、本学の伝統をふまえつつ時代の流れを見据えた、立教らしい学部・学科となっています。

 この学部再編により、学部教育の「知」の枠組みが広がっただけでなく、押見前総長が提唱された「共創の場」としての大学の実現に、学問の分野で大きく近づけたのではないかと思っています。


聖公会ネットワークを活用して「知の国際交流拠点」に

 これからは、文部科学省の政策にも後押しされて、大学院の整備をめぐる大学間競争が激しくなることが予想されます。アメリカなどと異なり、わが国では大学の評価基準が一元的で、仮に教育面でいかにすぐれた実績をあげていても、大学院・研究所の研究分野が充実していなければ二流大学とみなされてしまう傾向があります。リベラルアーツ教育に力を入れ、毎年数多くの優秀な人材を輩出してきた立教大学ですが、現在の地位を維持し、向上させていくためには、研究部門の充実が急がれるところです。

 これについては、ここ数年の間に、立教ならではの個性的な3つの独立大学院、および法科大学院を立ち上げました。これらの新しい研究科(大学院)は幸い多くの応募者を得て、本学の研究機関としてのレベルを向上させるとともに、社会とのネットワークを飛躍的に拡大することにも成功しています。

 今後は、生涯教育社会の成熟を視野に入れ、インターネットを利用したe-ラーニングの導入を含めて、立教らしい新しい大学院教育のあり方を提示していきたいと思います。

 もう一つ、私が力を入れたいと考えているのが、世界に開かれた大学の実現です。

 国際化は各大学が取り組んでいる課題だと思いますが、この点で本学は、他大学にまさる大きな「財産」を持っています。それは本学の礎となっている聖公会の、全世界に広がるネットワークです。

 建学の精神に立ち返ることにもつながるこの聖公会ネットワークのさらなる活用は、私の以前からの主張でもあります。各国の聖公会系大学・研究機関とのダイナミックな連携を深め、本学を「知の国際協力拠点」とすることを目指します。

 他に例を見ない大規模な改革を実行し、新しい一歩を踏み出した立教大学は、これからも進化を止めることはありません。社会へ、世界へ、共創の輪を広げる立教大学にご期待ください。

おおはし ひでいつ(Oohashi Hiseitsu)
1942年愛知県名古屋市に生まれる。立教大学経済学研究科経済学専攻修士課程修了。 立教大学経済学研究科経済学専攻博士課程単位取得退学。 神奈川大学経済学部専任講師、同大学助教授、立教大学経済学部経営学科助教授、 を経て1982年より同大学教授。1998年5月から2002年まで立教大学第16代総長。 2006年5月26日より第18代総長。 専攻は、経営分析論、会計学、減価償却論。
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