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Rikkyo Voices 社会情勢に対する立教大学からの提言
団塊の世代と<セカンドステージ市民大学>−立教大学の試み− 経営学部経営学科教授 総長補佐 笠原清志

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1) 2007年後問題

 団塊の世代の定年退職は、年金システムや雇用の問題だけでなく、その階層としての規模から社会の様々な領域で大きな問題になっている。この世代の退職がスタートするのが2007年からであるところから、2007年問題と言われているが、正確には2007年後問題である。今後3〜4年の間に、毎年膨大な数の退職者が家庭や地域で自らのセカンドステージをデザインすることが求められている。この意味において団塊の世代のセカンドステージをめぐる議論は、今後の日本の高齢化社会を考える際に大きな示唆を与えるものになると思われる。この世代の人達をコミュニティや社会のレベルで受け止め、自らの人生をデザインできるようにサポートし、学習する機会を提供していくことは、大学の新しい使命である。

 この市民大学は、当面、団塊の世代を対象とし、学び直しと再チャレンジのサポートを目的としながら、豊島区の生涯学習センターとも連携し社会や校友にも広く開かれた全く新しい生涯学習機能を持ったものにしていけたらと思っている。<セカンドステージ市民大学>構想は、現在、本学総長室サイドで検討されており、今後、部長会や学内の機関で早急にその実現のための合意形成をはかっていきたい。

2) 社会参加と自立へのシステム作り

 団塊の世代では、65歳頃まで仕事をしたいと思っている人は35%、そして40%前後の人達は65歳を越えても健康が続くかぎり仕事をしたいと思っている。それは高齢者が退職後も仕事や社会活動を通じて社会との結びつきを大切にし、多様なコミュニティ活動への参加と、健康・文化芸能・学習等へ強い参加意識をもっていることを示している。

 今後、高齢者の社会参加と自立システム作りは、日本社会にとって喫緊の課題となっている。したがって、<セカンドステージ市民大学>は、従来型の生涯教育ではなく、団塊の世代(以降も含め)の「学び直し」を通じて、仕事をはじめ、多様な事業や活動の担い手として人生の再チャレンジを可能にするものでなければならない。

 従来の生涯学習センターは多様な年令や階層を一括して対象とすることによって、その目的を明確にできず、またカリキュラムも統一性を欠いたものにならざるをえなかった。<セカンドステージ市民大学>は、団塊以降の世代が、「どのように生きがいをもって過ごせるか」、そのためには、「行政や地域、そして大学はどんなサービスを提供すべきか」というスタンスから脱却することからスタートしている(新宿区高齢者社会参加システム協議会パンフを参考)。したがって、そのカリキュラムは退職後に「学び直し」と再チャレンジをサポートすることによって、仕事その他多様な社会参加の担い手としてセカンドステージをどのように生きるかを自ら考えるという視点に立ってデザインされるべきである。考えられるコースは次のようなものである。

<コース>
1)ビジネス再チャレンジコース
2)NPO/NGOとコミュニティデザインコース
3)老年学、健康コース
4)教養学コース

3) 容易でない社会参加

 私自身、1948年生まれの団塊の世代である。高校や大学の同窓会やゼミの集まりでは、学生時代の回顧、友人の消息、そして最後は自然と老後のセカンドステージの話になっていく。「企業や仕事中心で家庭を顧みなかったのでちょっとゆっくりしたい」、「家内に迷惑をかけたので、温泉旅行やヨーロッパの美術館めぐりをしたい」、多くの友人から、よくこのような話を聞く。共通していることは「気になっている」、あるいは「心配している」と言っているが、全くリアリティーをもって自らのセカンドステージを考えていないという事である。「ちょっとゆっくりしたい」という気持ちは分かるが、その後どうするのであろうか。また、「温泉旅行やヨーロッパの美術館めぐり」でも、毎日、温泉旅行やヨーロッパの美術館めぐりをするわけにはいかないはずである。定年後、家庭や地域において人生のセカンドステージという20年以上にわたる日常性が待っている。

 定年退職後、NPOやNGOへの参加、そしてコミュニティ活動への参加という議論もある。この種の試みは、今後多くのコミュニティや自治体で団塊の世代に期待されている役割である。しかし、企業や会社内での地位の意識から抜けきれない「会社人」の団塊の世代の人達が、女性を中心としたフラットなネットワーク組織の中に会社的な上下関係や観念的なボランティア論を持ち込み、逆にコミュニティの運動にダメージを与えてしまうケースも見られる。

 <セカンドステージ市民大学>は、このような団塊の世代に1年間、自らの生き方を問い、自らの老後をデザインすることをサポートする試みである。そして、このことは大学が従来の教育と研究を中心とするあり方から、社会人の再教育や生涯学習型の教育機関としても変わっていくことを意味している。今後は学内での議論のみならず、豊島区や地域との協議、そして協力してくれるNPOやNGOとの多くの議論が必要である。
かさはら きよし(Kasahara Kiyoshi)
慶應義塾大学社会学研究科社会学専攻博士課程単位取得退学。社会学博士。立教大学社会学部社会学科教授、1998年〜02年立教大学総長補佐、2006年4月より経営学部経営学科教授、2006年5月より総長補佐。主要研究テーマは、組織論。
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