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写真の掲載を許可して頂いた保育園と保護者の皆様に感謝します。 |
心理学の立場から子どもの発達研究に携わってずいぶんと時間が経ちました。その中でも保育施設とのつきあいは長いものです。人間の発達を研究しているというと子どもを観ているのだろうと思われるでしょうが、実は子どもだけ見ていてもその発達はわかりません。保育者が子どもに接する姿には多くの発見と学びがあります。
私はここしばらく科学研究費を受けて保育施設の給食場面を調べています。食べることには多くの謎があります。人は「おいしいもの」を、「文化的道具を使って」、「その場にふさわしいふるまい」で食べようとします。でも、何をおいしいと感じるのかは場所によって、家庭によって違います。食具についても不思議なことがあります。生後二年目ともなると、赤ちゃんは手で食べ物を掴んで口に運ぶことができます。しかし、なぜか「不便な」スプーンを使いたくて仕方がないようです。時にはわざわざスプーンに手でおかずを載せて口に運ぼうとしたりします。何とも可愛い姿ですが、よく考えると変です。せっかく手で食べることができるようになったのに、なぜわざわざ自分にとって不便な道具を使って食べようとするのでしょうか。スプーンが使えるようになると今度は箸を使いたくて仕方がないようです。
なぜそんな無駄な努力を人はしようとするのでしょう。実はこれは子どもたちが私たちと同じ「社会」に生きていることの必然的な帰結なのです。子どもたちは自分の周りの人々がおいしそうに食べているその笑顔を支える食具に憧れてしまうのです。それがなぜよいのかわからなくとも、その行為に価値を予感し、できないことを「先取り」しようとするのです。ロナウドのキックを皆まねするように、理屈ではなく、身体が先に動いてしまうのです。こうした憧れに支えられた一見無駄な模倣が子どもの社会参加を促進します。
人間の食事において特徴的なのは、その乳幼児期に他者の介助を必然とする点です。乳児は一人で食を完了することができません。では、大人は子どもをどのように介助しているのでしょうか。保育園の現場から一つ例をあげましょう。
ベビーチェアに座っている一人の赤ちゃんがいました。パンを食べる場面です。その場面で行われた介助を細かく見てみると、保育者は子どもの口まで直接パンを運ぶことがありますが、それだけでなく、子どもの手にパンを渡したり、ベビーチェアのテーブルの上にパンをちぎって置いたりと三種類の介助様式をとっていることがわかりました。パンを子どもの口まで運ぶのは、いわば保育者の手が子どものそれとなって、子どもの食べる行為の一部を代行していることです。いわば「直接介助」ですね。それに対して、テーブルの上にひとかけらのパンを置く場合には、子どもは自ら手を伸ばし、口まで運んで食べるといった行為をすべて行わなければなりませんから、それは「間接介助」と言えます。子どもの手にパンを手渡すのはその二つの中間形態になります。
子どもが食事する間、保育者はこの三種の介助様式を絶妙のタイミングで繰り返します。その順序は大まかにいえば間接介助がうまくいかなければ直接介助するといったものでした。これはいったい何を意味するのでしょうか。栄養摂取も大事ですが、どうやら食べればよいというわけではなさそうです。そこでは「自ら食べる子ども」であることが期待されているようです。そして、この期待は辛抱強く待つことによって成し遂げられます。
子どもが私たちの社会に参加することへの期待と支援が保育者の食介助に見えました。私たちが子どもたちに育ってほしいと思うのは、こうした能動的な社会参加の態度であり、生きようとする姿勢なのかもしれません。遊び疲れた子どもがムシャムシャとがむしゃらに食べる姿が清々しいのはそれが生きる力を見せてくれているからでしょう。その姿に「この社会のメンバーとして生きてやる」という宣言が聞こえるのかもしれません。大人はしばしば予想される結果から、あるいは自らが成し遂げた終点から子どもを見てしまいます。そして目標点に向かう上での効率や効果を重視します。しかし、食事に限らず、何かしらの結果を大人の立場から効率よく達成させようとすることが、かえって子どもの生きる力の育成を阻害することはないでしょうか。保育現場から帰る時、ついこんなことを考えてしまいます。
いしぐろ ひろあき(Ishiguro Hiroaki)
中央大学文学部卒業。東京学芸大学教育学研究科修士課程修了。慶應義塾大学社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(教育学) 宮城教育大学教育学部助教授、北海道大学大学院教育学研究科助教授を経て、2006年4月より立教大学文学部教育学科教授。主要研究テーマは、保育・教育場面における発達と学習。 |
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「団塊の世代と<セカンドステージ市民大学>」
経営学部教授 笠原清志
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「職業だけでなく人生の「キャリア」」
キャリアセンター事務部長
加藤敏子 |
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