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立教WOMAN

2013年8月12日掲載

立教WOMANでは、女性に対する社会の期待が高まるとともに、女性の働き方が変わりつつある現在、さまざまな分野で活躍する立教大学の女性校友を、本学経営学部教授であり、「女子学生キャリア支援アドバイザリーボード」のメンバーでもある高岡美佳教授が訪ね、キャリアとライフスタイルを中心にお話を伺います。第2回となる今回は、「京王プラザホテル(新宿)」、「ザ・ペニンシュラホテル香港」などを経て、現在は「フォーシーズンズホテル丸の内 東京」で、セールスマネジャーとして勤務されている玉野井雅美さんにご登場いただきました。

高岡美佳(以下、高岡) 玉野井さんは立教大学の観光学部を卒業後、「京王プラザホテル(新宿)」に入社されましたが、観光学部に進学した理由と、就職先としてホテルを選んだ理由をそれぞれ教えていただけますか。

玉野井雅美(以下、玉野井) 小学生のころからマライア・キャリーなど海外アーティストの歌が好きで、聞こえるままにまねして歌っていました。そのうち歌詞の意味を知りたいと思うようになり、英語にも興味が湧いてきました。大学生になったら海外旅行もしてみたいという思いもあり、立教大学の観光学部であれば好きな分野を学べるのではないかと考え入学しました。大学でのさまざまな学びを通して、観光以外の分野にも興味を抱くようになったため、就職活動を始めた当初は幅広い業界を検討しましたが、最終的には観光学部での学びや経験を生かしたいという気持ちが強くなり、京王プラザホテルに入社しました。

高岡 京王プラザホテルには、国内だけではなく世界中からたくさんの利用者が訪れると思います。卒業後すぐにグローバルな環境で勤務され、どのような印象を持たれましたか。

玉野井 京王プラザホテルではフロント業務に携わっていました。フロントはお客様とホテルが最初に接する場所であり、ホテルの最前線と言えます。お客様がホテルに求めるサービスも滞在の目的もさまざまなため、初めは戸惑うことばかりでした。そこで、まずはお客様の多様性を理解しようと努めました。時に厳しいご意見をいただくことがあっても、真摯(しんし)に耳を傾け、誠意を持って対応することで、最終的にはご納得いただけることも、経験から学びました。

高岡 京王プラザホテルから「ザ・ペニンシュラ香港」に移られたのはどのようなきっかけからですか。

玉野井 各国のお客様と接するうちに、快適で心地よい滞在をしていただくためにはどうしたらよいか、リクエストにお応えできない場合にはどのようにおわびをすればよいかを考えるようになりました。しかし、せっかくその考えを行動に移そうと思っても、気持ちをうまく言葉で伝えることができないため歯がゆい思いを何度も経験しました。このことから改めて語学力の重要性に気付き、世界で最も多くの国や地域で使用されている英語をしっかり身に付けたい、その上でより多くの経験を積むためには、海外のホテルで働く必要があると感じ、社会人2年目に「ザ・ペニンシュラ香港」へ移ることを決めました。

高岡 相手と分かり合いたいという気持ちから、コミュニケーションツールとしての英語の重要性に気付かれたわけですね。目的が定まった上で学ぶ。それこそが正しい語学習得のプロセスかもしれません。

高岡 立教の観光学部での学びが生かされていると実感することや、そこで得た経験が役立っていると感じることはありますか。

玉野井 ホテルや観光業界で仕事をしていると、しばしば立教大学出身の先輩方と出会います。皆さん親身にアドバイスをしてくださったり、相談に乗ってくださったり、とても心強い存在です。香港では立教の卒業生たちの「香港立教会」に参加していました。クリスマスパーティーなどさまざまなイベントがあり、そこでは仕事抜きに話が弾み、卒業生同士の絆の強さを実感しました。

高岡 同業界で卒業生が出会う機会が多いというのも、観光教育において60年以上の歴史を持ち、多くの人材を輩出してきた立教大学ならではの強みかもしれません。観光学部では実践的な教育を重視し、フィールドワークも盛んなようですね。

玉野井 まさにフィールドワークから多くのことを学びました。私の所属していたゼミは少数民族を研究テーマにしており、フィールドワークでは、2年次にベトナム、3年次にミャンマーの少数民族の集落を訪れました。昨今、少数民族観光の人気が高まっていますが、観光客の増加が現地にどのような影響を与え、どのような問題が起こっているのかを、研究者の視点で確かめに行くというものでした。あるとき、親切に現地を案内してくれた子どもたちからチップをねだられましたが、先生に「私たちがそこを訪れることで、その場所に影響を与えてはいけない」とアドバイスを受けていたため、応じずに帰りのバスに乗り込みました。すると、さっきまでにこにこしていた子どもたちが、怒りをあらわにしてバスの周りに集まってきたのです。それは本当にショックでした。
その場しのぎでお金を渡すのは簡単ですが、研究者がすべきことは、現状を淡々と見守り、記録を残すこと。物事を客観的に見ることを学んだおかげで、どのような状況においても、一歩引いた視点で考えることができるようになり、少しのことでは動じなくなりました。

高岡 フィールドワークでは、何か自分にもできることがあるのでは、変えられるのではと考え、現場に介入したくなることが多々あります。ただ、そうすることが現地の人たちにとって必ずしもプラスになるとは限らないですよね。玉野井さんが彼らと一線を画して記録に徹するという経験をされたことはとても貴重ですね。

玉野井 初めて少数民族を訪れたときは、トイレもテレビも無く、お湯も出ない、そんな不便な生活を見て同情を感じていました。しかし、2週間ほどそこで生活し、自分たちもそれに慣れてくると、私たちが幸せだと思っていることが、必ずしもそこで暮らす人びとの幸せであるとは限らないと気付くなど、自分のこれまでの価値観を見つめ直すことができた最初の機会でもありました。

高岡 異文化を理解し複眼的な視点を持てたという玉野井さんのご経験は、世界を相手に活躍できる人材が求められる今、お仕事にも生かされているのではないかと思います。言語の習得はもちろん大切ですが、多様な価値観を身に付けるためには、実際に異文化に触れる経験をすることも重要ですよね。