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立教WOMAN

2014年1月13日掲載

立教WOMANでは、女性に対する社会の期待が高まるとともに、女性の働き方が変わりつつある現在、さまざまな分野で活躍する立教大学の女性校友を、本学経営学部教授であり、「女子学生キャリア支援アドバイザリーボード」のメンバーでもある高岡美佳教授が訪ね、キャリアとライフスタイルを中心にお話を伺います。第4回となる今回は、2000年に発売したラスク「グーテ・デ・ロワ」が大人気となり急成長を遂げた、株式会社原田・ガトーフェスタ ハラダの専務取締役を務める原田節子さんにご登場いただきました。

パイよりもおいしいラスクをつくりたい

高岡美佳(以下、高岡) 原田さんは、立教大学経済学部を卒業後、家業を継がれ、主に販売や営業面で尽力されてきたそうですが、注目すべきはやはり2000年に発売したラスク「グーテ・デ・ロワ」の大ヒットかと思います。そして従業員15人ほどの家業を1000人近くの企業にまで育てられたわけですが、まず大人気商品となった「グーテ・デ・ロワ」誕生の背景からお聞かせいただけますか。

原田節子(以下、原田) 1901年の創業以来、和菓子も洋菓子も扱う地元のお菓子屋さんとして長く営業してきたのですが、1990年代のバブル崩壊後、不況の波が地方にも押し寄せ、我が家の主力商品であった低価格帯のおやつ菓子でさえ売れなくなってしまいました。一方でライフスタイルの変化や核家族化によって、例えば七五三のお祝いに隣近所にお菓子を配るような風習がなくなるなど、これまでの成功体験が通用しなくなり、その打開策を考える必要に迫られていました。

高岡 不況や消費者のライフスタイルの変化に加え、コンビニやショッピングモールの台頭で打撃を受ける個人経営のお店は多いですよね。原田さんも例外ではなかったようですが、そうした状況の中で、ラスクを主力商品にと考えたのはなぜですか。

原田 私たちが店を構えていた群馬県は、当時、他県に比べお菓子文化がそれほど成熟していませんでした。そこで奮起して、他県に誇れるお菓子を作ろうとさまざまな和菓子を製造するようになりました。その結果、売上も持ち直したのですが、和菓子は夏の間需要が落ち込んでしまうという欠点がありました。そのため一年を通して需要のある安定した商品が必要でした。そこで、かねてから「本当にこだわっておいしいラスクを作れば、パイよりもおいしくなるのに」と心に秘めていたラスクを主力商品にすることで安定経営を目指そうと決心したのです。

生産拠点の確保と販路開拓が成功への第一歩

高岡 2000年に「グーテ・デ・ロワ」を発売され、大ヒット商品となりましたが、その裏には相当なご苦労や工夫があったと思います。

原田 最初の壁は、生産拠点をどうするかということでした。ラスクを作るためには、2段階の製造工程があり、それぞれ異なる設備が必要となります。フランスパンを作る設備とラスクに加工する設備です。これらを整えるためには相当な初期費用がかかるため、容易ではありませんでした。そこで、父が共同経営していた学校給食工場を活用することで初期費用を抑えられないだろうかと考えました。給食工場にはフランスパンの製造設備もラスクを加工するためのトンネルオーブンもそろっていたため、なんとか工場を説得して、給食の業務が終了する午後3時以降、OEM(Original Equipment Manufacturing)という形で私たちの製品を生産させていただけることになりました。

高岡 試行錯誤の中で生産販売の準備を行い、いよいよ全国に向けて販売ということになったと思います。具体的にはどのように販路を開拓していったのでしょうか。

原田 まずは近隣エリアの皆さまにチラシを作成してお配りしました。半径20キロから始め、次第にさいたま市のあたりまで範囲を広げるようになりました。チラシとはいえ、贈り物をしようと考えたときに思い出してもらえるような、そしてそのときまで各家庭で保存しておいてもらえるような、きれいなチラシを作るよう心掛けました。ほかには両親の助けも借り、百貨店などの催事に出店し、実際に試食をしておいしさを知っていただくという地道な販促活動を行っていました。同時に通信販売も始めましたが、お店の隅に、電話、パソコン、プリンター、ファクスをそれぞれ1台用意し、私一人で対応する日々でした。商品に次回も購入していただけるよう通信販売の注文はがきを入れるなどの工夫も重ねた結果、販売を開始した年の暮れには生産が間に合わないほど盛況となりました。

おいしさは感動となり人から人へ伝わる

高岡 「グーテ・デ・ロワ」がこれほどまで人気が出た理由について、原田さんご自身はどのようにお考えになっていますか。

原田 商品の価値を考えた際、50%はいかに上質な材料を使用し、こだわりを持って丁寧に作り上げるかということになると思いますが、残りの50%は、ネーミングやパッケージ、そしてその商品に込められたテーマやストーリー性だと考えています。そのため、お客様にいかに私たちの商品に感動していただけるかということを考えました。何かに感動したとき、それを誰かと共有したくなりませんか。自分が味わった感動を他の大切な人にも味わってほしい。そんな風にして感動のコミュニケーションが生まれるのです。

高岡 確かに感動するほどおいしいお菓子に出合ったら、それを家族や友人にも食べてほしくて、お土産に買うという経験は多くの人にあると思います。つまり、原田さんの販路拡大の秘訣(ひけつ)は感動のコミュニケーションということですね。

原田 感動していただけることが商品力の全てであると考えて、これまで商品を開発してきました。例えば、まずは地域の方に感動していただく。するとその方々が他の地域に住む親戚やご友人へのギフトとして広めてくださるのです。このように、感動が次々に伝わっていくうちに、全国の皆様に私たちのラスクを知っていただけるようになったのだと思っています。