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若者の群像

神前に礼!

2008年11月1日掲載

  • 相撲部イメージ
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キリスト教に基づく人間教育を行っている立教大学に神棚のある場所がある。それは新座キャンパス体育館内にある相撲場だ。そこはお世辞にも奇麗とは言えないけれど、扉を開くと、土の冷たい、何とも言えない清らかな空気の匂いに、背筋が伸びる。

私たち体育会相撲部はここを主なけいこ場所として使用している。部員は現在7名。うち4名が選手で、3名がマネージャーである。少数精鋭と言えば聞こえは良いが、今年の新入部員はゼロ。「立教スポーツ」という学内で発行されるスポーツ新聞があるのだが、そこに同じく新入部員がゼロである重量挙部・スピードスケート部と共に「3部を救え!!」特集に取り上げられたほどだ。相撲の大会は団体戦と個人戦の二つがあるが、団体戦では人数が足りないためレスリング部や柔道部から助っ人をお願いしている状況だ。

けいこが始まると、けいこ前の道場のしんとした空気が熱気に変わる。けいこは週に3〜4日、1回2時間程度で集中して取り組む。けいこ内容はプロの力士たちが行っているものとほぼ変わらない。おなじみの四股、柱に手を打ちつけるてっぽう、足を地面から離さずに移動するすり足、勝ち残りで相撲をとっていく申し合いなどである。監督やOBの胸を借り、選手たちは汗だくの土まみれになりながらけいこに励む。多くの汗や涙や血、足の裏の皮などが混じり染み込んだ土俵の砂は、もうきっと砂ではなく、別の何かになっているのではないかと思う。

選手たちが激しいけいこをした後に楽しみにしていることがある。それは、相撲部のマネージャーが腕をふるう、ちゃんこ鍋である。野菜と肉たっぷりのちゃんこ鍋を二鍋にほうほうと作り、けいこ後にみんなでそれを囲んで食べるのだ。試合で助っ人として活躍してくれているレスリング部や柔道部の選手たちも呼び、和気あいあいとしている様子はまるで家族だ。気持ちの良い食べっぷりと「うまいっすねー」の言葉だけで、作った私たちもお腹いっぱいになってしまう。

相撲というと、テレビで見る大相撲のイメージからいろいろな先入観を持たれがちである。春の新歓活動では「相撲部です!」と新入生に声を掛けると苦笑いされて、チラシすら貰ってもらえないこともしばしばである。相撲は朝青龍や白鵬のように大きく太ってなければできないと思われているのだろう。しかし、学生相撲はそうではない。わが部の選手は全員が体重フタケタで、一番軽い選手は65キロだ。それでも彼は着実に白星を挙げ立派に相撲をとっている。太っているとか痩せているとかは関係ないのだ。体重の次に多くの学生が誤解しているのが「まわし」についてである。「恥ずかしい」「格好悪い」という言葉をよく耳にするが、「一度つけてしまえば全然気にならなくなる」と選手たちは口をそろえて言う。まわしをした姿は潔く、その人自身の魅力が最大限に引き出され、本当に格好良い。格好悪さなんてどこにも見当たらない。

大学の4年間まわしをまいて相撲をとる。大根を切ってちゃんこ鍋を作る。そこには爽やかさも派手さもないかもしれない。しかし、それに代わる、それ以上のものが相撲部にはある。それを挙げればきりがない気がするし、挙げようがない気もする。この、相撲部の「何か」に魅かれ集まった部員たちが今日も相撲場の神棚に向かって、礼をする。

立教大学 相撲部
立教大学 相撲部

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