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若者の群像

メンタルヘルスツーリズム―心を軽くする旅― 現代心理学部 心理学科 4年次 元木香里

2010年6月16日掲載

皆さんは、「どのようにすれば対人関係がうまくいくのだろう?」「どのようにすれば周りの人々のモチベーションをあげることができるのだろう?」などと思ったことはありませんか。私が所属する小口ゼミ(小口孝司教授)は、このような人間の行動に伴う心の動きを扱う、社会心理学のゼミです。ここでは、ゼミの活動内容について紹介します。

小口ゼミではまず、“Journal of Personality and Social Psychology”という社会心理学の英文学術論文を各自1論文担当して読み、その内容をレジュメにまとめて発表します。論文の内容は、「自己開示」「リーダーシップ」「説得」、あるいは“赤色は男性に対して女性の魅力を高める”といった「色彩心理学」など、実際の生活場面で使えそうなさまざまな興味深いテーマによるものです。発表の後には質疑応答や白熱した意見交換、討論が行われます。これらの活動を通して、英語論文を読む力や心理学の研究法、論文の書き方、論理的思考力などを身につけながら、自分が研究するテーマを探っていきます。

その後、各自が、興味を持ったテーマの論文を読み、共通のテーマに興味を持ったメンバーでグループを作り、研究テーマを決めていきます。

私たちのグループが取り組んだ研究テーマは“メンタルヘルスツーリズム”です。私はもともと“ワークモチベーション”と“幸福感”の関係に興味を持っており、先行研究を読んでいるうちに、職場だけでなくプライベートの充実も重要なのではないかと考えるようになりました。そこで、小口教授に紹介していただいたのがこの“メンタルヘルスツーリズム”という研究です。メンタルヘルスツーリズムというのは、小口教授が提唱しているもので、ここ10年で精神疾患の患者数が倍以上に急増している(内3分の1以上がうつ)という日本の現状に対して、“視点の変換”や“五感の活性化”などを提供することにより、人の心を癒すことを目的としたツーリズムです。

私たちの研究の目的は、旅行することによって、本当に心が軽くなったり、気分が爽快になったりするのかを確かめること。つまり、メンタルヘルスが向上するのかを科学的に検証することです。この研究については、観光庁の「平成21年度観光産業のイノベーション促進事業」の支援を受け、さらに株式会社JTBにご協力いただき、実験を行いました。

グリーンツーリズム

実験では、一般からモニターを募集し、千葉県鴨川市へ日帰りのツアーを実施しました。ツアー内容は以下の5つです。

(1)周遊観光:鴨川周辺の観光コース巡り
(2)グリーンツーリズム:いちご・フルーツトマト・菜花摘みなど
(3)体験観光:太巻き祭り寿司作り、菜花料理作り体験
(4)タラソテラピー・パッシブコース:海水に浮き、リラックスを図る
(5)タラソテラピー・アクティブコース:海水の中で運動する

これらのツアー参加者に加え、ツアーに参加しない方々にもモニターとして心理学のアンケート調査と、ストレス時に分泌される唾液中の“コルチゾール”の採取に協力していただきました。ツアー参加者については、ツアー前後での変化を比較検討しました。また、ツアー不参加のモニターには、土日を自由に過ごしていただき、金曜日の夕方と月曜日の朝における調査での変化を比較検討しました。

太巻き祭り寿司作り体験

分析の結果、5つのコースすべてにおいて、主観的に感じているストレス度、抑うつ度、生理的指標としてのコルチゾール値が減り、ストレス状態が軽減されました。ところが、ツアー不参加のモニターはこうした値にあまり変化がない、あるいはまったく変化がありませんでした。つまり、メンタルヘルスツーリズムはメンタルヘルスの向上に有効であったことがわかりました。今回の結果が、今後、精神疾患の予防や早期復帰のための手段として活用されることを願っています。

このように小口ゼミは、現代社会における最新のテーマを取り扱い、学生だけでは経験できないような貴重な経験をすることができるゼミです。ゼミでの経験を通して、心理学が、対人関係やビジネス、健康などさまざまな場面において役立ち、よりよい生活を送るために生かせるものであると改めて実感することができました。また、小口ゼミには一生懸命取り組む仲間ばかりが集まっているので、とても刺激を受け、自ら考え行動する力や積極性が身についたと感じています。

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