公開2007年9月1日
現場主義をモットーに地域と深くかかわって社会問題を解決します。
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 1989年創設以来、「現場主義」をキーワードに実習・演習を重視して新しい社会学教育を追求してきた社会学部。その実践的な教育の実績は、文部科学省の「現代GP」採択につながった。今回は、龍大初の女性学部長となった長上深雪教授と広報担当の築地達郎准教授に、「現場主義」を掲げる社会学部教育の特色と今後の展開を聞いた。

地域を元気にする「大津エンパワねっと構想」が文部科学省「現代GP」に採択

長上龍谷大学社会学部(社会学科・コミュニティマネジメント学科・地域福祉学科・臨床福祉学科)は今、地域とのかかわりを持つことがとても重要だと考えています。個々の教員と地域とのかかわりや交流は以前からありますが、学部全体としての動きは手薄でした。 そこで、学部開設20年という節目を前に、社会学部の将来の方向性として、大学教育の一環として地域と大学を結ぶ「大津エンパワねっと構想」を考案しました。この取り組みは、今年度、文部科学省の「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」(現代GP)に採択されるなど、早くも高い評価を受けています。
 「エンパワねっと」は、「エンパワーメント」(元気にすること)と「ネットワーク」をもとにした造語です。地域も学生も大学も連携して、ともに元気になろうという思いを込めました。 これまでは、4学科がそれぞれに独自の教育を展開してきましたが、この「大津エンパワねっと構想」は、その仕組みを大きく組み替えます。1年生から4学科の壁をなくし、学科を超えて一つのプログラムに参加し、学生も教員も交流し合うことが特徴です。

築地 地域を調査対象にするという従来の研究・教育手法の常識を超えて、地域の問題を住民と共有し、具体的に解決するところまで踏み込むという点もキーポイントですね。

築地達郎准教授

長上 確かに、今までは問題を発見しても地域住民と共有するまでには至らなかったんですね。今回のプログラムの大きな特徴の一つは、問題発見後にどう「共有」し、どんな手だてで「解決」していくのか、そして、どう「発信」していくのかまで踏み込んだ「教育サイクル」を実施するところにあります。 だから、このプログラムではあえてテーマを事前に設定しません。今までは、高齢者問題を解決しよう、地域福祉の問題をテーマにしようと大学側から課題を決め、地域に持ち込んでいましたが、このプログラムではそれは一切なし。何もないところから地域に飛び込んで、地域の人と一緒に考えることができる環境づくり、人間関係づくりからスタートすることにしています。
 もちろんあくまで学生が主体ですが、学生を地域にただ放り出すのではありません。私たちが黒衣として、地域の人と色々なつながりを作りながら進めます。
  例えば私自身でいえば、大津の地域福祉実態調査を初めて実施した1986年に大学院の学生として参加したんですが、それ以降継続して今もかかわりがあるんです。他の教員もそれぞれが地域に入り込んだ活動を展開して今日に至っています。そういう意味では、この20年間、各教員が取り組んだ蓄積があるので、地域の人たちに受け入れられると思っています。

築地当面は、社会学部がある大津市の瀬田地区と、浜大津と大津駅に挟まれた大津市中央地区の2エリアを対象に活動します。大津中央地区は古い町、一方、瀬田地区はこの20年の間に開発された新しい町なので、それぞれに色々な典型的問題を抱えています。
 1年生後期と2年生前期には、「市民ティーチャー」による特別講義を開き、地域への問題意識を高めてもらいます。2年生後期から3年生前期にかけては人数を絞り込んで現場での実習を行い、学生と教員がタッグを組んで地元の問題をとらえて解決に導きます。 と同時に、既存の科目の一部を「大津エンパワねっと対応科目」として指定し、実習科目と対応科目を併せて履修することで、最終的に本学独自の「まちづくりコーディネーター」認定を得られるという仕組みです。
 我々としては、この認定を得た学生にはそのまま卒論のテーマとして進めたり、大学院に進んでさらに学びを深めてもらうことを期待しています。そうではない学生もここで培った実績と自信を身につけてそれぞれの道を進んで欲しいですね。

長上このプログラムに参加した学生は、社会や地域に主体的に参画する力をつけることができると確信しています。本学の学生は自ら動くことをいといません。私たち教員も驚くほど積極的です。このような伝統をさらに伸ばして、地域に積極的に出ていく学生を育てていきたいですね。

充実した実習で社会の多様な問題に切り込む

築地さきほども出てましたが、いよいよ社会学部が20周年を迎えようとしてますね。

長上私たちの学部は1989年の開設以来、一貫して「現場主義」というスローガンを掲げてきました。学問の対象が人と社会全般にわたるので、人が生活している現場に出かけたり、現場そのものを扱って研究することが重要だからです。
 4学科のうち、「社会学科」では地域社会学、環境社会学、文化人類学などの切り口から社会問題に鋭く切り込み、現場の人と一緒に考えることを大切にしています。地域に入り込んでフィールドワークを行うことが、教育プログラムの柱です。
 福祉系は2学科ありますが、「地域福祉学科」は地域に密着して政策や行政、地域組織化などについて研究、教育するのが特徴。一方、「臨床福祉学科」はどちらかというと人間そのものに焦点を当てた学科で、例えば高齢者、子どもなど様々な困難を持っている人をどう支援するかを学びます。この両学科は社会福祉問題を対象にしており、福祉施設や社会福祉協議会などの現場に出て学ぶことが中心になります。

築地達郎准教授

築地四つ目の「コミュニティマネジメント学科」は、誕生して4年目の新しい学科です。「社会に参画すること、参画型の社会をつくること」を主眼として、色々な現場に入って問題に触れその解決法を考える人材、そして解決に導くことができる人材を育てています。
 コミュニティマネジメントというのは新しい用語ですが、その意味するところは要するに「地域を元気にする」ということですね。そのための人材育成の方法論として、この学科では新しい教育システムである「コーオプ教育」(コーオペレィティヴ教育)を取り入れています。企業やNPO、自治体などの現場で学び、そこで体験したことを糧に大学で学びの動機を見つけ出してもらいます。職場体験を旨とする「インターンシップ」と違って、あくまで人材育成のために現場の皆さんと大学とが協働するということです。

長上 4学科とも共通しているのが、充実した「実習科目」なんですね。社会学科には1年生から入門実習があります。地域福祉学科と臨床福祉学科は、社会福祉の専門職を養成する実習プログラムを用意し、3年生になると現場で1カ月間学び、その前後に実習指導する丁寧なシステムをとっています。さらに4年生ではグレードアップ実習を受講することができます。ここでは、精神科や一般病院のソーシャルワーカーの実習をしたり、自分自身が主体的に実習したい現場を選択し、そこで実習をすることが可能となっています。コミュニティマネジメント学科は、4年間を通してコーオプ教育が一本の柱にあり、すべての段階で実習が入っていますね。
 私は地域福祉学科に所属していますが、3年生の後期に実習を経験すると、学生の姿は天と地ほど変わります。社会感覚が鋭くなり、世の中の矛盾に気づくようになるのです。現場に出るということは、当然その矛盾の中に入っていくわけですから、そこで自分がどう考え、どうするのかが求められます。学びが深まるので顔つきも変わりますね。

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