その1

インターネットのマナー 
相手を思いやる心を育てよう

朝日新聞編集委員 原 淳二郎

 「今時の若いものは礼儀を知らん」。大人はいつの時代にもこういって若者の礼儀知らずを嘆いてきた。自分が若かった時のことを棚に上げて。
 若者もいずれは社会に出て、礼儀やマナーを欠くと自分が損をすることを知る。その時になってやっと幼かったころ親や学校から言われたしつけを思い出し、実行に移す。若者の礼儀知らずは実のところそう心配はない。
 実社会の礼儀やマナーには、それぞれのコミュニティーが長年培ってきた知恵が詰まっている。マナーを守れば余計な摩擦や軋轢を起こさずに生きていける。
 パソコン通信やインターネットの普及で出現したサイバースペースも、そこに参加する人々のコミュニティーである。歴史は浅くても先人たちが培ってきたマナーがある。マナーを守れば居心地のいいネット生活が送れる半面、違反すればだれも相手にしてくれなくなる。ひどいマナー違反に対してはアドレスを剥奪される場合もある。ネット上のマナーのことはネチケットと呼ばれる。
 インターネットを学校教育で利用する実験、100校プロジェクトを始めるに当たり、こどもたちにネチケットをどう教えるか、先生たちの間で話題になった。東金女子高校の高橋邦夫先生はインターネット上でインテル社のサリー・ハンブリッジさんがまとめたネチケットガイドラインを見つけて日本語に翻訳、この2月に同校のホームページ(http://www.togane-ghs.togane.chiba.jp)で公開した。

 「電子メールでは理由のいかんを問わず絶対にチェインレター(幸福の手紙のようなもの)を送ってはいけません」「たとえ挑発されても激情的メッセージを送ってはいけません。もしあなたがそのようなメッセージを受け取ったら応答しないのが賢明なやり方です」
 詳細はホームページを読んでいただくとして、サイバースペースで無用な摩擦を起こさないための知恵がたくさん詰まっている。インターネットに乗り出す前に是非読んでおくことをお薦めする。
 インターネットはさまざまな組織やグループが相互につながり合い、自主的に運営されてきた。電話やパソコン通信のように一元的に運営に責任を持つ組織もない。しかし、だから何でも自由というわけにはいかない。電子メールひとつ出すにしても受け取った方は差出人と同じコストをかけて読んでくれている。そう考えればチェインレターや断りなしの長文の投稿、無断での転載、参照などはマナー違反であることはすぐ分かる。相手を思いやる心があればネチケットは自然に身につくはずだし、若いひとにはルールを守るネチズン(ネットワークの市民という意味)に育ってほしい。
 「こどもたちは案外マナーはいいんです」。高橋先生の話を聞いて安心した。ただ、サイバースペースは相手の顔が見えない。文章だけの電子的コミュニケーションには思わぬ落とし穴があるのも事実。次回はその落とし穴について。