原田 泰さん
大和総研チーフエコノミスト
原田 泰さん
1950年生まれ。東京都出身。東京大学農学部卒業後、経済企画庁入庁。イリノイ大学留学をなど経て経済企画庁調査局海外調査課長に。その後、財務省財務総合政策研究所次長、内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官などを歴任し、現在大和総研常務理事チーフエコノミスト。

ウォール街が映画に与えた影響とは

平凡な男も只者ではない

 地下鉄の車両指令室で働く男が、地下鉄ハイジャック犯との交渉役をする羽目になる。地下鉄をハイジャックしても逃げられるはずはないと警察になめられないためには、本気を見せる必要がある。ハイジャック犯の首領は『パルプ・フィクション』以来、凄みと狂気を見せるジョン・トラボルタ。交渉役はデンゼル・ワシントン。ハイジャック犯とやりあえるのか不安に見えるが、『アメリカン・ギャングスター』でのように、徐々に本領を発揮していく。

 映画の1つのテーマとなるウォール街にはサブプライム・ローン全盛の時、誰でもいい、どんな住宅でも良いから金を貸せと、机の上でバットを振り回わしていた役員がいたというが、そのぐらいのことは朝飯前に見える。

2つの世界の対比で見せる

 ニューヨークの地下鉄はきれいになったが、悪漢のすさんだ心は変わらない。ウォール街の強欲が、全世界で数百兆円の損失を生み、世界金融危機と戦後最大の不況をもたらした。それは単なる失敗で、犯罪にはなっていないが、ほとんど狂気に近い強欲ではないだろうか。犯行の主な舞台は42丁目の地下だが、そこからウォール街まで地下鉄でわずかだ。

 ここにあるのは二つの世界。狂気を呼び込んだウォール街と平凡な人々。しかし、平凡な人々もただ正直ではいられないという苦い思いをもたらすのが現代だというものか。息もつかせぬ展開で、男たちを描き、ウォール街を描き、アメリカを描く。見事だ。

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