今井 澂さん
国際エコノミスト
今井 澂さん
1935年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、山一證券入社。山一證券経済研究所を中心に証券アナリスト・ファンド運用・年金営業などに従事。山一投資顧問取締役を経て、1989年日債銀顧問として転出。1997年日債銀退職後、国際エコノミストとして活躍中。

アメリカの"チャレンジとフェアネスの精神"を読みとる

経済の知識が、謎を解くヒント

 「サブウェイ123」は、金融市場やインターネットなど現代のさまざまな要素が織り込まれていますが、ITバブル、9.11事件を経て金融危機に至る経済の流れを念頭に置いて観ると、犯人であるライダーの計画の周到さがよく理解できます。

 一体ライダーはどんな人間で、何を目的にしているのか。ビジネス英語に詳しい方は、ライダーの話し方をひとつのヒントとして謎解きを楽しむこともできます。私が聞く限り、彼のテンションの高い話し方は、ウォール街で働く人間特有のもの。それも一流大学卒のエリートではなく、叩き上げでしょう。このようなバックボーンを持つ人間は、マーケットで失ったものはマーケットで取り返そうと考えるのがごく自然です。

 ガーバーとの間で交わされる宗教用語を含む会話も、ライダーという男を知る上で重要です。そして、それが思いがけないラストシーンへとつながる見事な伏線になっています。

チャレンジとフェアネスを標榜するアメリカ

 私は、過剰な金を手にして駄目になった人間を数多く見てきました。これぐらいあったらいいな、と願う金額にゼロを2つ付けた程度が、日本人なら正気を保てる限界です。しかし、アメリカでは大きく儲けることは、少しも悪ではありませんし、別におかしくもなりません。また、一度失敗しても、プライドを賭けて再びチャレンジする者には喝采を送ります。だからこそ、アメリカ人の多くは一見悪役に思えるライダーに感情移入すらしてしまうのではないでしょうか。

 儲けを出すべき投資会社が大きな損失を出したら、トップが必ず腹を切る。それがアメリカです。金融危機以来、米経済界に対する批判が高まっていますが、このようなフェアさは尊敬に値します。改めて、日本とは異なるアメリカの長所を感じさせられる作品です。

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