一色 清さん
朝日新聞社編集委員
一色 清さん
1956年生まれ。愛媛県出身。東京大学法学部卒業 。1978年朝日新聞社入社。1983年、東京本社経済部に。主に証券、農林水産、エネルギー、自動車、貿易、大蔵などを担当。2000年から2003年までAERA編集長。その後、朝日新聞編集委員。

大人の男のスリルとサスペンスと人生

ぞくぞくさせるトラボルタ

 乗っ取り犯と交渉人とのやりとりを描いた映画はいくつか見た気がする。その面白さを決めるのは、場面設定やラストの意外性など脚本によるものであるのは当然だが、対峙する二人の俳優の演技の魅力に負うところも大きい。

 特に乗っ取り犯。頭の良さとその裏にある狂気がポイントだ。ライダーという名の乗っ取り犯は、まさに知恵と狂気の両方を兼ね備えて、ぞくぞくさせる。「うまい。これは誰だ」と思ったら、あの「サタデー・ナイト・フィーバー」のジョン・トラボルタではないか。

 私が大学4年だった年、「サタデー・ナイト・フィーバー」は日本でも大ヒットした。土曜の夜だけでなく、仲間と遊ぶときには、「フィーバーしようぜ」というのが合い言葉だった。そして、遅熟な貧乏学生たちは、トラボルタのようにフィーバーすることなく、淡い悔恨を抱えて、下宿に帰るのだった。

さすがの名優ワシントン

 ほぼ同年代のトラボルタがこんな怪優になっていたのか、と人間の成長に思いをいたしていると、交渉人のガーバー役のデンゼル・ワシントンもほぼ同年代であることに気づいた。こちらは、アカデミー賞2回受賞の言わずとしれた名優。今回も、まじめで冷静な中に強さと優しさを秘めた地下鉄マンをさすが見事に演じている。

 警部補、乗っ取り犯一味の元地下鉄マン、ニューヨーク市長など、周りを固める俳優も魅力的で、いずれも私に近い年代だった。そう、この映画は、成熟した大人の男のスリルとサスペンスと人生を描いているのだ。

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