神戸 孝さん
ファイナンシャルプランナー
神戸 孝さん
1956年生まれ。埼玉県出身。1980年早稲田大学法学部卒業。(株)三菱銀行などを経て、1999年日興證券(株)を退社後、FPアソシエイツ&コンサルティング(株)を設立。現在、同社代表取締役。CFPR認定者。日本FP協会理事。早稲田大学ビジネス情報アカデミー講師。

アメリカ社会でプライドを取り戻そうとする”個人”の闘う姿が、ここにある

「身体を使って稼ぐ人間」VS「頭を使って稼ぐ人間」

 私は、お金の稼ぎ方には3つのタイプがあると思っています。自分の身体を使ってコツコツ稼ぐタイプと、自分の頭を使って稼ぐタイプ、そして手にした資金を働かして稼ぐタイプです。この映画も、異なる稼ぎ方をする主人公2人の対決の物語として見ると面白い。ガーバーは、身体を使って稼ぐ典型的な勤め人タイプ。一方、ライダーは頭を使いお金を動かして稼ぐタイプ。対極的な2人ですが、それぞれに自分の仕事へのプライドがある。ガーバーの仕事は地味ですが、ニューヨーカーの足として役立っている仕事への思い入れは非常に強い。ライダーはやはりニューヨークのために付加価値の高い仕事をしてきた、という自負を持っているはず。それぞれプライドを持って働いてきた仕事で犯罪者のレッテルを貼られたこの2人が激突し、最後には体力と精神力がモノを言う、ギリギリの闘いになる。スピーディな展開の中、緊迫した対決シーンが繰り広げられます。

金融至上主義へのアンチテーゼ?

 これまでの日本が格差の生じにくかった「公平な社会」なら、アメリカは格差はあれど機会も与えられる「公正な社会」といわれます。セカンドチャンスを求めて、ライダーは自ら一発逆転の機会を創り出そうとしたのでしょう。しかし、この機会均等というイメージにも錯覚がある。ガーバーのようなマイノリティはチャンスを掴みにくく、身体を使って稼ぐしかないという現実があります。実は、アメリカ人の多くはガーバーのような人たちなのです。そして皮肉にも、ガーバーはライダーによって滅多に得られないセカンドチャンスを与えられることになりそうです。

 映画の後半に、マネー経済が実体経済とは比較にならないほど莫大な利益を生む、という展開が用意されています。「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である」という二宮尊徳翁の言葉がありますが、オバマ大統領は「道徳ある経済」への道を目指しているように思えます。この映画には、多くのガーバーたちが財を失う結果となった、金融至上主義へのアンチテーゼが込められているのかもしれません。

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