清宮 克幸さん
サントリーサンゴリアス監督
清宮 克幸さん
1967年生まれ。大阪府出身。1986年に早稲田大学入学。4年時に主将として大学選手権優勝に導く。1990年にサントリー(株)に入社。2001年に引退後、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任、早稲田ラグビー復活の原動力となる。2006年、サントリーラグビー部へ監督として復帰。

「逃げない人間」の姿に、理想のリーダー像を見た

体を張れる男たちに深い共感

 ラグビーでは、重大な局面に遭遇した時に逃げない人間のことを「あいつは体を張れるヤツだ」と表現します。技術的に未熟でも体を張れる選手であれば、周りから信頼され、将来リーダーに育つ可能性があるのです。逆にどんなに身体能力や頭脳がすぐれていても、体を張れないプレーヤーは結果を出せません。この映画のガーバーは、まさに体を張って自分にしかできないことをやり遂げた人間です。彼はやむを得ず自分の不利となる告白をしますが、それは目前の危機を避けるための行動で、実は後ろめたいことは何もないのではないか。そう信じたくなるほどです。

 地下鉄の乗客として登場する空軍出身の男性も印象的です。彼の行動は、プライドが恐怖を凌いだ結果です。ラグビーでも「ノブレス・オブリージュ(責任ある立場にある者はそれ相応の責務を果たさねばならない)」という言葉をよく使いますが、体を張って守るべきものを守る姿に共感を覚えました。

綿密な心理戦が勝敗を左右する

 ガーバーとライダーは無線を通じて相手の真意を探り合いますが、ラグビーでも相手チームを惑わすために心理戦を仕掛けることがあります。例えば、あえて普段とは違うスタイルの戦い方をして、次は何を仕掛けてくるだろう、と相手を疑心暗鬼にさせる。また、相手に余裕を持たせないように情報発信する。2006年に早稲田の監督としてトヨタと戦った時は「我々にとってトヨタは最も戦いやすい相手だ」「見逃せない歴史的な一戦になるだろう」などと発言し、それが勝利に結びつきました。

 ガーバーの発言や行動を自分に置き換えて、自分だったらどうするだろう、と考えながらこの映画を観ると、彼がどんなに頭の良い、すぐれたリーダーであるか気付くはずです。残念ながら現実には必ずしもこういう人間が偉くなるとは限りませんが、彼は確かにひとつの理想像です。

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