集団から個人重視の医療へ 患者志向の薬剤師の養成を
近年、先端科学技術の著しい進歩により、新しい医療技術と医薬品の開発がこれまでにない早いスピードで展開されている。その影響で、薬学を取り巻く状況も大きな変化が起きている。昨年から薬学6年制が実施された背景には、これらの医薬品の使用に当たって、安全性への配慮をさらに強めなければならなくなってきたこともある。 21世紀の医療は、薬物による治療が一層重要となるだろう。従来の集団から個人重視のそれに変化している現在、患者の立場に立った優秀な薬剤師の養成が不可欠である。 薬剤師の主な業務は3つある。 (1)医薬品・医薬部外品・化粧品・及 び毒物劇物の製造、輸入、販売、 授与、管理、保存、試験等 (2)食品衛生及び環境衛生関係の 化学的な試験・研究その他 (3)日常生活での薬などの使用に関 する相談・助言等 これらの業務は、あらゆる部門の薬剤師に当てはまり、それぞれの立場でその業務を行っている。 薬剤師の最も代表的な業務「調剤」では、病院や街の薬局で、医師や歯科医師などの処方せんに基づいて、薬剤を調合する。 しかし、薬を正確かつ迅速に調製するだけでは十分とはいえない。薬が有効・安全・適切に使用されるには、個々の患者に合わせた服薬指導を行わなければならない。それには副作用や併用薬との相互作用などについて、十分な情報を得ることが大切である。患者の体質やアレルギー歴、服薬状況などをまとめた記録と照合したり、患者とのやりとりなどから、必要があれば担当の医師に照会したうえで調剤することが求められている。 加えて、医師にも必要な情報を提供することが期待されているため、薬に関する最新情報の収集と整理も重要な業務となっている。 医療機関、薬局、メーカー、行政など 幅広いフィールドで活躍 最近の病院薬剤師は、調剤業務に加え、チーム医療の一員として、入院患者に服薬指導や副作用のチェック、注射薬の管理などを行う臨床活動も盛んである。 また、チーム医療の進展に伴い、高度な専門知識や技術が必要となってきたため、専門薬剤師の認定制度も発足。現在、がん専門と感染制御専門薬剤師がある。このほか精神・神経疾患、HIV感染症、高齢者、小児、核医学(PET)などの分野で、専門薬剤師の認定が計画されている。 薬局薬剤師は、大衆薬の販売を通じてのセルフメディケーション(自己治療)の支援と、調剤による医療機関の一翼を担う役割を果たしている。昨今は、店舗内での業務のほかに、要介護者などを訪問して服薬指導や薬の管理指導などを行う「在宅医療業務」が増えてきている。 企業の薬剤師の主な仕事は「医薬品の供給」。医薬品の製造、輸入、流通、販売などのすべてに関わり、消費者の手に渡るまでを管理する。 製薬企業では、医薬品の製造に関する責任者として、製造現場で製造管理や品質管理、研究分野で新薬の開発研究などを担う。また、医薬品に関する情報の収集・管理を行うとともに、病院や薬局を訪問して、専門的な情報の提供を担当する。 卸売業では、医薬品の保管・販売の責任者として、適正な保管、販売管理や品質管理を行うとともに、医療機関や薬局への情報の提供など。 行政機関では、薬事、食品衛生、環境衛生、公害・環境などに関する許可や指導、医療機関・薬局・国民への情報提供・収集などのほかに、研究機関での試験なども行う。 学校では、校内の保健衛生管理全般を担当。飲用水・プールの水質検査や消毒、給食施設の衛生指導、教室内の環境検査などを実施する。 医療の一角を担う人材 専門性とコミュニケーション能力が必要
医療の一角を担う人材 専門性とコミュニケーション能力が必要
我が国の薬学教育は100年以上の歴史があり、薬剤師のみならず科学者や化学者を養成する学部としても役割を果たしてきた。今後は医・歯学教育と同じ6年制となり、医療の一角を担う人材の養成に主眼をおくことになる。 医薬分業により、薬剤師は今まで以上に、一人ひとりの患者に対して薬の飲み方や効能について丁寧に指導することが要求されるようになった。高い専門性と同時に、患者の不安を取り除くためにわかりやすく説明するコミュニケーション能力も必要である。 薬剤師になるには、高校卒業後、薬学系学部を持つ大学(総合大学の薬学部か薬科大学)で、正規の課程を修め、国家試験に合格することが必須である。