人間の尊厳を支える コミュニケーションを支援
近年、わが国では高齢化を背景に、言語や聴覚に障害を持つ人が急増している。また、言葉の遅れを持つ子どもたちへの対策も十分とは言い難い。。そうした社会的なニーズを背景に1997年、新しい医療専門職として言語聴覚士が法制定された。 言葉は人間だけに与えられた機能で、高度に発達した脳がベースとなっている。私たちは言葉を用いて自分の考えや感情を相手に伝え、お互いに情報を共有している。通常の生活においては、言葉は大きな役割を担っているといえよう。 一口に言葉といっても、言語、聴覚、 発声、発音、知能、記憶、認知、注意などの機能が密接に関係している。これらの機能が病気や事故、発達上の問題などでダメージを受けると、失語症、言語発達の遅れ、難聴、発音障害、吃音、発声障害などの言語聴覚障害が生じる。 ニーズの多い新分野 活躍の場は多彩 言語聴覚士の業務は言葉によ るコミュニケーションが困難な人に 対し、機能の最大限の回復や言語以外のコミュニケーション能力の獲得と訓練を図り、その人らしい日常生活と社会参加ができるように支援すること。摂食・えん下の問題についても専門的に対応する。 具体的には、さまざまな検査・評価をし、その結果に基づいて訓練・指導・援助などを行う。場合によっては、医師や理学療法士、作業療養士などの医療専門職、ソーシャルワーカーやケアマネージャーなどの福祉専門職、教師や臨床心理士などとチームを組む。 治療や訓練は長期にわたることが多く、年齢層も子どもからお年寄りまで幅広い。粘り強さと細やかな心配りはもちろんのこと、優しい心遣いが必要である。 言語聴覚士が活躍する場は多彩だ。病院、診療所、リハビリテーシ ョンセンター、発達支援センター、児童相談所、老人ホーム、介護老人保健施設、通所リハビリ施設・訪問 リハビリ施設、ことばの教室・特別支援学級・特別支援学校、保健所などがある。 言語聴覚士資格を取得するには、 高校卒業後、大学、短大、養成所などで言語聴覚士として必要な知識及び技能を修得し、国家試験を受験して合格することが必要である。
細やかな心配りで 視力障害を訓練・回復
私たちは情報の多くを視覚によって得ている。毎日の生活の中で、「みる機能ー視能」は重要だ。視能に障害[はっきり見えない(視力障害)、見える範囲が狭い(視野障害)、二重に見える(複視)、見えていてもわからない(視覚認知障害)など]があると、クオリティオブビジョン(視覚の質)の低下が余儀なくされる。 近年、早期発見・早期治療が叫ばれているが、眼科医療においても例外ではない。視能障害には、先天性のものと後天性のものがある。昨今は、生活習慣病の増加で、糖尿病などによる眼の合併症や、高齢社会に伴う白内障などの疾患、また情報機器の普及や車社会によるクオリティオブビジョン(視覚の質)の低下など、新しい形の後天的障害が増えている。 視能訓練士は、医師の指示のもと、こうした人たちに「視覚の質」を検査・評価し、矯正や訓練で視能が向上する可能性がある場合は、斜視・弱視の視能矯正計画を立てて実施する。また視覚障害者となった人には、リハビリやカウンセリングの専門家と連携しながら指導・訓練をしていくのも視能訓練士の役割だ。 眼科診療の一端を担うプロ 人材の育成に期待
視機能検査のスペシャリスト・視能訓練士を求める声は年々高まっている。英国を初めとする欧米では、古くから医療専門職として定着しているが、わが国での歴史は浅く、1971年に導入された。 その後、93年に法改正され、矯正分野だけでなく、眼科一般分野まで幅広く検査ができるようになった。しかし、有資格者は、眼科医の半数に満たず、今後一層の人材育成が期待されている。 視能訓練士の職場は、眼科のある病院や診療所が中心。検査結果が適切な診断治療と繋がることから、眼科診療チームの一員である重要な専門職として認められている。 視能訓練士の資格を取るには、高卒は3年以上、短大・大学卒及び看護学校卒は1年以上、視能訓練士の教育課程を修めた後、国家試験に合格することが必要である。