戸板学園では、生徒たちに文化に触れさせる目的で「歌舞伎教室」という体験学習を行っています。その教室で私もはじめて歌舞伎を見たんですが、その時受けたインパクトがとても強かったんです。大学の卒業論文で元禄歌舞伎について研究したのも、中学3年の時の歌舞伎教室というきっかけがあったからですね。
 中学3年間の担任の先生は国語を担当されていたのですが、ユダヤ系の精神医学者ヴィクトール・E・フランクルの『夜と霧』というナチス強制収容所での経験が描かれた本を朗読してくれたことをよく覚えています。そうした本によって「優しさ」について考えさせられました。
 落ち込んでいる時に「これを読みなさい」と言って本を渡してくれたこともありました。「元気を出しなさい」と直接言われることはありませんでしたが、そういうさりげない心遣いをしてくれる先生でした。先生は、私たちがどういう精神状態にあるのかを、キャッチしようと努力されていたと思います。先生から吸収したものはとても大きかったですね。
 そうした経験が、現在のテレビプロデューサーという仕事に大きな影響を与えていると思います。ものを伝えることの大切さ、みたいなものをこの時期に先生や体験学習から学びました。

テレビプロデューサー
小松昌代さん

こまつ・まさよ/1983年戸板女子高等学校卒業。現在NHKエンタープライズでドラマのプロデューサーを務める。手がけた主な作品は「大地の子」「盲導犬クイールの一生」「少年たち」「NHKスペシャル 望郷」。



 私の場合は先生に恵まれていたのかもしれませんが、やはり中高一貫教育で私のことをよく知っていてくれる先生が、6年間ずっと近くで見てくれていたというのはありがたかったです。卒業後も機会を見つけては先生に何かお願いをしたり、相談したりしています。戸板学園にはそんな家族のような雰囲気があるんです。
 今の女子中高生には、とにかく好奇心を持って多くの人々やものに触れ、自分の好きなことをどんどんつくってほしいのです。大人もなかなか希望を持てない時代ですから、それを見て育つ子供たちも、人生をあきらめてしまうような気持ちになるかもしれません。でも、大人も一生懸命に生きている人がたくさんいるはずです。それを信じて、前向きに自信を持って歩いてほしいと思います。人と人とのつながりが希薄になる中で、中学高校の時期はどうしても「自分一人で生きている」と思う時があるかもしれません。でも、決してそうではないこともそのうち分かるはずですから。(談) 

さとう・ゆか/1989年世界ジュニア選手権優勝。92年アルベールビル五輪7位、94年リレハンメル五輪5位。94年幕張で行われた世界選手権優勝後、プロに転向。現在、米デトロイト在住。
 
1991年戸板女子高等学校卒業
プロフェッショナル・フィギュアスケーター
佐藤有香さん
 本格的にスケートを始めたのは、戸板学園時代です。中学3年の時に初出場した東日本選手権での優勝、高校時代の国体での優勝、世界ジュニア選手権での日本人としての初優勝など、忘れられない思い出があります。先生をはじめ友人たちの温かい励ましに支えられました。感謝の気持ちとともに私の一生の宝です。現在、プロスケーターとしてアメリカを中心に元気に活躍しています。今も自分の中で、夢・目標を持って勇気をだして行動、努力したいと思っています。

こまた・さだお/早稲田大学大学院修了。1971〜75年、戸板中学・女子高等学校で教壇に立った後、埼玉県に移り、県立浦和第一女子高等学校教頭、同春日部女子高等学校校長などを歴任。2002年より現職。
戸板中学校・戸板女子高等学校校長 駒田貞夫さん
 理想の学校とは「校力」旺盛な学校のことを指すのではないでしょうか。「校力」とは、学校のあらゆる活動の場において、生徒の活動と教師の指導とがぶつかり合って醸成されるエネルギーのことです。これが校内に充満していると、学ぶ者はおのずとこれに感化され、秘められた能力や個性を発揮するようになる、つまり、自立への道を拓いていくようになるわけです。そしてその根本を支えているのは環境でしょう。
 本校には100年にわたる歴史と伝統がある、これも一つの環境ですが、もう一つ施設設備、生徒、教員、保護者、卒業生等を含む優れた環境が存在します。それらが集合体となって、「校力」をより良質・高質なものにしているわけです。
 本校の校訓「知好楽」は、ものごとはそれを楽しむという境地に至ったとき、はじめて自分自身のものとなり、自らも豊かになるということを意味します。それは、戸板学園が常に追求してきた「女性の自立」を導く学びの態度です。
 本校では、今後ともこの態度を大切にし、真に自立した女性を育ててまいります。(談)

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