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| 玉川雅章さん(写真左) たまがわ・まさあき/早稲田大学理工学部卒業。東京ガスに入社後、ガス調理機器を中心とした商品開発・調理科学研究に従事。1997年より「食」情報センター所長に。大学・セミナー・イベントなどで、ガス機器や食育、食生活に関する講演、企画活動も行う。 |
福島敦子さん(写真中央) ふくしま・あつこ/津田塾大学卒業。NHK、TBS、テレビ東京などで活躍。また、雑誌等で数多くの企業経営者を取材。著書に『それでもあきらめない経営』『ききわけの悪い経営者が成功する』(毎日新聞社)、『これが「美味しい!」世界のワイン』(幻冬舎)、『美味の誘惑』(中央公論新社)など。1997年、ワインアドバイザーの資格を取得。 |
西田利貞さん(写真右) にしだ・としさだ/京都大学大学院理学研究科動物学専攻博士課程修了。東京大学助教授を経て、1988〜2004年、京都大学理学部動物学教室教授。タンザニアで野生チンパンジーの行動学・社会学を研究。現在、財団法人日本モンキーセンター所長。理学博士。 |
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| 家庭で料理を作り、家族がそろって料理を楽しむ「共食」という、人間ならではの文化が希薄な時代になってきました。好き勝手に自分の食べたいものだけを食べる「個食」も進んでいます。そんな「食」文化に危惧の念を抱いている東京ガス「食」情報センター所長の玉川雅章さんと、動物の「食」を研究している西田利貞さん、キャスター・エッセイストの福島敦子さんが、現代の「食」の問題点と、「共食」の大切さを語り合いました。 |
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![]() 火の周りに人が集まり 地域の文化が生まれた 福島 東京ガスでは「キッズインザキッチン」という子ども向けの料理教室を10年以上前から開催していますね。料理というのはそのプロセスのなかでいろいろなことが学べると思うんです。食材を買いに行けばその季節の旬がわかるし、値段を見れば今年は豊作だったかどうかを知ることもでき、食材を大切にする気持ちもわきます。 玉川 そのとおりです。「キッズインザキッチン」は小学生を対象に行っていますが、食材を実際に手にしたり、自分で調理することによって、生産者や、日ごろ料理を作ってくれる人への感謝の気持ちも生まれます。家庭でそういったことを教える機会が少なくなっているので、私たちが代わりに教えられればいいと思っています。 福島 確かに今の時代は、自分で火を使って料理することがどんどん省略されていますね。玉川さんが西田さんの書かれた『動物の「食」に学ぶ』(女子栄養大学出版部)という本に興味を持たれたのは、こうした現代人の食生活とかかわりがあるのですか。 玉川 今の日本の食生活は非常に問題点が多いと思っているなかで、この本に出あい、人類の食文化の原点にかえれるのではないかと感じて拝読しました。地球上のあらゆる生物のなかで、唯一人間は生活のなかに火を取り入れました。火を使って調理し、身を守り、暖をとりました。一つの火の周りに人が集まってきてコミュニケーションが生まれ、コミュニティーが成立する。それが受け継がれて一つの文化が形成されてきたんじゃないかと思うんです。そこにはもちろん、家族の絆も生まれてきたわけです。 西田 火を使うかどうかは、人間と、人間以外の動物の食を比較したときの最も大きな違いです。それに、手に入れた食物に火を通すことによって、消化がよくなり、解毒作用も生まれるんです。 福島 火を使うことによって、食にかかわる時間もぐっと短縮されましたよね。 西田 そうなんです。チンパンジーは起きている時間の約50%を「食べる」ことにさいています。残りの時間は毛づくろいや居眠りにあてられますが、それは食べ物を消化するための時間なんです。 福島 「生きること」は、まさに「食べること」なんですね。私たち人間は1日のうち、どれぐらいを食べる時間にあてているのでしょうか。 玉川 食の位置づけは非常に低くなってきています。食べ物に関心がなくなって、食事の時間もどんどん短縮されて、胃のなかに食べ物が入ればいいというような……。一方で、外食は盛んで、みんなでワイワイ楽しみながら食べたりする。 西田 他の国ではどうなんですか。 玉川 イタリアでは10年以上前から「スローフード」という考え方が出てきました。スローフードは地元で取れた良質で安全な食材を使った郷土料理を守り、食を通じて人間本来の喜び・楽しみを呼び戻そうということです。 西田 スローには、手作りという意味も含まれているんですね。 玉川 そうです。お金をかけてグルメを楽しもうということではないのです。手作り料理をゆっくり味も時間も楽しもうということです。 西田 なるほど。そういえばチンパンジーは同じ時間にみんなで食べ物のある場所に行って食べるんですが、食べるときはみんなバラバラに散らばるんです。食べ終わるとまた集まってくる。でも人間は、非常に長いあいだ、集まってみんなで一緒に食べていたわけです。火があることが最大の理由になっていました。人間にとって「一緒に食べる」ということは、文化的にみて大変重要なことなんです。 |
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![]() 作ることを人任せにした「個食」の家庭が増えている 福島 西田さんがおっしゃった「一緒に食べる」というのは「共食」のことですね。以前、共食は人間が本能的に持っていたものではなくて、長い時間をかけてつくりあげた文化だということを聞いたことがあります。火を使うことでそこに人が集まって、共に分かち合って食べるようになったと。 玉川 その「共食」に対して「こ食」という言葉があります。「こ」は孤独の「孤」と、個人の「個」という二つの漢字が当てられていますが、どちらも問題です。「孤食」は子供がたった一人で食事をするような状況で、「個食」の方は家族が一緒の食卓を囲んでいるけれど、それぞれが全く別のものを勝手に食べている状況をいいます。調査によると、この個食が非常に増えてきている。その場にあるものや簡単に手に入るもの、手を加えなくてもすむものなどのなかから、おのおのが好きなものを食べる。それを親も子どもも気にしない……。 西田 そういうことをするのは、やはり自分で料理を作っていないからではないですか。動物の「食」には、探す・取る・食べられる部分を取り出す・口に入れるという四つの段階があるんです。我々は口に入れる以外のことを人任せにしています。スーパーやコンビニで買った食品に、最後にちょっと火を加える程度のことですませてしまっている。今、学校では家庭科で料理を教えないのでしょうか。 玉川 全く教えないということではありませんが、家庭科自体の位置づけが低くなってきているようです。 福島 料理のアウトソーシングが進んでいるんですね。 西田 極端な例ですが、大学生にもなってガスコンロの火のつけ方を知らない人がいましたよ。 玉川 子どもに火をつけさせたり包丁を持たせる機会を、家庭でも奪っているのではないでしょうかね。「キッズインザキッチン」では火の扱いも包丁の使い方もすべて教えます。 福島 この料理教室に参加した子どもたちには性格の面で変化が見られるそうですね。 玉川 料理教室を体験したあと、よく話すようになったとか、よく食べるようになった、食事中の会話が弾むようになったというようなデータがあります。 西田 子どもも料理したがっているということでしょうかね。やってみると面白いですよね、料理って。 玉川 ええ。非常に創造的な作業といえますね。 西田 定年後、時間に余裕ができた男たちが料理をやりたがるのもわかる。 玉川 達成感もありますからね。子どもたちが料理を作ると、真っ先に「お父さんやお母さんに食べてもらいたい」って言うんです。 |
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![]() 「食」は、体はもちろん 心の健康にも深くかかわる 福島 「食」を介して家族のコミュニケーションが弾み、人の輪が広がっていく。残念ながら、それが今の時代は希薄になってきていますね。西田さんは著書のなかで、動物は本能的に備わった食べることの知恵を生かして、食べることで自分の体をつくり、自らの健康を保っている。そういう動物たちの食べる行動から私たちも本来のあるべき姿を学べるのではないかと書いていらっしゃいますね。 西田 食べ物がたくさんあれば、おいしいものを好きなだけ食べる。これは人間も他の動物も同じなんです。でも、動物は1年中食べ物がたくさんあるわけではないので、食べ物が少ない季節はやせてくるんです。それでバランスをとっています。現代人は1年中好きなものが好きなだけ食べられる。だからどんどん太ってしまう。いつでもどこでも食べ物を簡単に手に入れることができる今、自制して、腹八分目に抑えなくてはいけないんです。それにしても、日本人の食生活はあまりにも大きく変わってきていますね。 玉川 地域の食文化の特徴を長いあいだ経験して日本人の体はつくられてきました。和食離れが進んで、日本人が自分の体を健康に保つこともだんだん難しくなってきましたね。もう一度、和食の文化を見直す必要があるかと思います。 福島 食生活の変化に伴って、生活習慣病などの慢性の病気が増加する一方で、日本人のからだが現代の飽食の状況に適応するよう変化することはないのでしょうか。 西田 1000年や2000年では無理でしょうね。 福島 自分で料理するようになると食材を大切にする気持ちが生まれますが、この「食」の問題は、地球環境にも深く関係していますね。 西田 エビを養殖するためにマングローブが切られたり、中南米の森林を伐採して牧草地に変えて牛を飼育したりしています。こんなこと、エビやビーフを食べている人は誰も想像していませんよね。 玉川 自分で料理をすると、必要な食材の量やカロリーのことまでわかります。いためものや揚げものに使う油の量や、味つけの調味料の量、使われるエネルギーや水の量も自分でやれば加減できます。料理教室では、ガスや電気・水を大切にするようにとか、買い物袋を持参しなさい、と言っています。買ってきた食材を無駄にしない料理の仕方も教えています。エネルギーも水も食材も大切に。そういう思想で、環境にやさしい「エコ・クッキング」も開催しています。 福島 自分で料理することが、人間の体と心にとって非常に大切なことだということがよくわかりました。 西田 「同じ釜の飯を食った仲」という言葉もあるくらいですからね、一緒に食事することは人間として大事ですね。 玉川 食事を楽しみながら会話を弾ませる。このことが人間関係にとっていかに重要なことであるかをもう一度考えてみてほしいですね。 |