ジョージ・モンロー42歳。建築事務所デザイナー。彼には既に別の人と再婚している元妻ロビンと16歳になる反抗期の息子サムがいる。
 ある日彼は20年間勤めてきた建築事務所をいきなり解雇され、その上残りわずか3ヶ月の命と宣告される。このまま死んで悔いはないのか、自分の人生は一体何だったのか・・・。ジョージは初めて自分の人生に、そして息子サムに向き合う決意をする。 (配給:日本ヘラルド映画株式会社)













  脚本、演技、映像、音楽、全てにおいて素晴らしい映画だ。

ケビン・クラインは、死の恐怖を抱えながらも、「家を建てる」という最初で最後の目標に向かって懸命な主人公ジョージを、ユーモアも含めて演じている。ともすれば暗くなりがちなテーマだが、リアリティを失うことなくすがすがしくまとめるのはさすがアカデミー賞受賞経験者だ。
その元妻ロビンを演じるクリスティン・スコット=トーマスも、自然な演技が魅力的だ。知的でしっかりものの彼女は、相変わらずマイペースな元夫ジョージにイライラしながらも息子サムが心配なためにサポートを続ける。そして次第に、かつては誤解していたジョージの愛情と優しさを知っていくのである。
二人の思い出の曲に包まれ、美しい夕日をバックに踊るダンスシーンは、年齢を重ねた二人だからこそ愛らしく、誰もが胸を締めつけられることだろう。
そして、不良息子サム役のヘイデン・クリステンセン。彼は「スター・ウオーズ エピソード2/クローンの攻撃」でアナキン・スカイウォーカーに大抜擢された期待の新人だ。独特の甘く優しい瞳に加え演技も迫力があり、若い女性に絶大な人気を誇るのもうなずける。
サムは、誰にも心を開かず、自分の命すら軽んじる自虐的な若者である。しかし、戸惑いながらも、家作りを通じて父の愛を感じ、幼なじみアリッサとの触れ合いによって、生きる喜びをも知っていく…。

その他の登場人物もまた印象的だ。
仕事中心で家族との関係が希薄なロビンの夫は、実は「自分が一生懸命働いて豊かな生活を与えること」こそが、彼の唯一の愛情表現だった。
ジョージの隣人コリーンは愛情に飢えた母親で、娘の彼氏とも関係を持ってしまう。欠点の多いキャラクターではあるが、優しく不器用で、愛すべき存在だ。
思春期の娘アリッサは、好奇心旺盛な行動によってまわりの男達をどぎまぎさせているが、ただ純粋で無邪気なだけに憎めない。

全ての人の行動が、愛と思いやりに満ちている。
人間の強さ、弱さ。すべてに共感でき、人を愛さずにはいられない気持ちになれる映画だ。

脚本は「恋愛小説家」の共同脚本家としてアカデミー賞にノミネートされたマーク・アンドラス。人間の温かさ、優しさがしみじみと伝わってくるのは、彼ならではの味である。また、今回は、コンピュータの台頭、リストラ、ドラッグ、離婚、同性愛、貧富の差、住民同士のコミュニケーションの欠如…など、現代のアメリカを辛辣に描いている点も、話に深みを与えている。
撮影監督のヴィルモス・ジグモントのカメラワークもすばらしく、「海辺の家」の建つ、南カルフォルニアの自然は神秘的なほどに美しい。

アメリカの開拓者精神の根元は「家」にある。日本人が、そのアメリカ人の家というものをどれだけ理解できるかは疑問だが、死を目前にした不幸のどん底で「住む家が自分自身」だとして家を再構築するジョージの姿はやはり胸を打つ。そして、家とは住む場所以上のものであり、アイデンティティーなのだとわかる。

スクリーンの幕が閉じるまで、席を立てる人はいないだろう。 エンディングも心が洗われる。
マーク・アイシャムの情緒的な音楽と余韻に浸りながら、良い映画に出合った喜びをまっすぐに感じた。
誰もが、穏やかな心地よい感動に包まれるに違いない。

この夏、必見の一作品だ。
 
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