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日本の介護における問題点やこれからの高齢社会について考えるフォーラム「高齢者が幸せになる社会とは」が開催されました(7月7日・浜離宮朝日ホール)。「ホームはご入居者様の幸せのためだけにある」という理念のもと「ワタミの介護」を設立し、介護の世界に新しい風を吹き込んでいる渡邉美樹さん。そして、渡邉さんと親交の深い北村晴男さんをゲストに迎え、対談のみならず、VTR上映やパフォーマンスなどを交えた充実したフォーラムになりました。 |
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| 田村 介護事業に取り組まれて約7年が経ちますが、「ワタミの介護」を始めたきっかけは何だったのですか。 渡邉 病院経営を通して、介護の実情に触れたことです。退院された方が、その後どうしているのかを知ろうとご自宅を訪問したところ、狭い部屋に一人で寝ていました。ご家族に「どうして老人ホームに入居しないのですか」と伺うと「特別養護老人ホームは入居待ちの人が何十万人もいるし、高い有料老人ホームに入れるようなお金はない」という答えが返ってきました。 田村 特別養護老人ホームは公的な施設、有料老人ホームは民間経営の施設ですね。 渡邉 そうです。「ワタミの介護」は有料老人ホームになります。高齢者が幸せに過ごせるよう、居酒屋経営で培ったサービスやおいしい食事を提供するノウハウを、介護の世界でも生かせないだろうかと思い、創業を決意しました。 |
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| 北村 渡邉さんはまっすぐな人ですね。普通なら退院された方の家庭を訪問しようとは思いませんし、介護の問題を解決するために自分が事業を立ち上げようとはしませんよ。しっかりした価値観があるからこそ、直面した現実を受け止め、進むべき方向を冷静に判断できるのでしょうね。私は渡邉さんの本を読ませていただいて、「特殊浴」の存在を知り、衝撃を受けました。 渡邉 洗浄から乾燥までを自動で行う、カーウオッシュのような機械を使った入浴のことですね。特別養護老人ホームでは、スタッフが洗ってさしあげても、機械が自動的に洗っても、介護保険から頂ける入浴料に差がありません。これでは機械にまかせた方が得ということになります。食事についても同様で、30分前によそった硬いご飯や冷めたみそ汁を出している現場を見た時には、思わず怒鳴ってしまいました。現在の介護システムは、「ご入居者様の幸せを考えた介護」という概念が失われている気がします。しかし、20年以上外食産業に携わってきたワタミは、お客様であるご入居者様のことを最優先に考えます。そして、サービスの質を向上させることを、何よりも大切に考えています。 北村 ある施設で素晴らしいサービスが提供されているならば、他の施設も追従して、そのサービスをスタンダードにすればいい。「ワタミの介護」のサービスが素晴らしいなら、みんながそれを知ることで競争原理が働き、業界全体がもっと良いサービスを提供していこうという意識を持つようになるはずです。 渡邉 本当にその通りだと思います。ただ、なかなか障壁は高いと感じています。以前、寝たきりの状態で入居された人がいました。元気になるようにスタッフみんなでサポートし、一人で歩けるまでに回復しました。一緒にお祝いをして喜んだのですが、実は今の介護システムでは、ご入居者様の回復は施設にとって収入減になる。おむつを着けたご入居者様が多い方が売り上げが良いのです。ここに我々の目指す「ご入居者様の幸せ」を考えた介護との矛盾が生じている。この業界には、システムの変更や規制緩和が必要です。そうすれば民間が参入しやすくなり、よりサービスの良い施設に安価に入居できるようになります。政治家も、特別養護老人ホームを造ることだけにこだわらず、民間をもっと利用して新しい老人ホームのかたちを提案していくべきです。 北村 こうした情報や問題点がもっと発信されればいいですね。自分や親が入居するときだけではなく、普段から十分な情報を得ていないと議論すらできませんから。 田村 情報がないために、介護に関する悩みを家族で抱え込んでしまっているケースもあるのではないでしょうか。 渡邉 そうですね。正しい情報がないために、老人ホームに入れることを「親不孝だ」と思い込んでいる人もいます。でも、どれだけ仲が良い家族でも朝から晩まで世話をしていると、介護する側もされる側もつらくなる。それなら老人ホームを活用し、定期的に家族で訪問してだんらんの時間を持つ方がお互いのためによいと思うのです。 田村 この国は「高齢化先進国」です。海外に向けて介護福祉のモデルを発信していけるのではないでしょうか。 渡邉 いま海外から、「ワタミの介護」のノウハウを提供してほしいという要望が来ています。これからは、国同士が協力し合いながら「それぞれの国の高齢者の幸せを守っていく」という気概を持つことが大切です。それが、高齢者が安心して介護や医療を受けられる国をつくることにつながる。国民がこの国に誇りを持ち、高齢者が心から長寿を喜べる社会にしていかなければなりません。 |
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| 「ワタミの介護」には、現在4,400人を超えるご入居者様が暮らしています。私は、その一人ひとりに親孝行をするような気持ちで接しています。10歳で母を亡くし「もし母が生きていたら何をしたいか」を常にイメージしてきた私にとって、「ワタミの介護」は、かなわなかった親孝行を実現する場なのです。 介護事業を始めたころ、私は介護のことを何も知らない素人でした。しかし、だからこそ自分の思い描く親孝行のイメージを率直に実行できたのだと思います。ご入居者様みんなで温泉に行く「日帰り温泉バス旅行」、食堂に炭火焼きの屋台が登場する「うなぎ屋さん」、握りたての寿司を楽しむ「寿司キャラバン」などを実施しました。温泉でおじいちゃんの背中を流せば、亡き父に孝行しているような気持ちになりましたし、おばあちゃんの100歳の誕生日を祝いに行けば、泣いて喜んでくれました。介護というのは、本当にありがたい仕事だと実感しています。 「ワタミの介護」では、おむつゼロ、特殊浴ゼロ、経管食ゼロ、車椅子ゼロの「四大ゼロ」を推し進めています。特に力を入れているのは、胃にチューブで直接栄養を与える「経管食」をなくすこと。1人に対してスタッフ総がかりで取り組めば、年間約10人が口からご飯を食べられるようになります。このような活動は、多くの労力と時間を費やしますが、「ご飯がおいしい」という声を聞く喜びが原動力となりました。そのご飯をお弁当にして、日本中の高齢者に届けようと、お弁当の宅配事業「ワタミタクショク」を始めました。手渡しを基本とすることで、独り暮らしの高齢者の安否確認(事前登録必要)が同時にできるシステムです。実際、今まで何人もの人が倒れていた場に遭遇し、病院に連絡しました。このような現実と向き合うと、胸が張り裂けそうになります。その度に湧き起こるのは、もっと早くいいサービスを提案し、誰もが幸せになれる社会をつくらねばならないという焦りと使命感です。今の「ワタミの介護」よりさらに低価格で入居できるホームを計画したのは、そのような理由からです。現在は環境に優しい老人ホームや、デイサービス事業の立ち上げに日々奔走しています。 「ワタミの介護」の入り口には「ホームは、ご入居者様の幸せのためだけにある」という言葉が掲げられています。これは、「今まで生きてきたなかで一番幸せなのが、『ワタミの介護』で過ごす日々だと感じてもらえる場所にする」という、私からの約束です。終のすみかで、素晴らしい人生を送っていただけるよう努めて参ります。 |
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