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大学力

大学が社会を更新する 特集大学2015

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特集大学

京都大学

河勝雅行さん
京都大学の大学力Message & Topics

三方を山に囲まれ、移ろう四季と豊かな自然が身近にある千年の都・京都で、9人のノーベル賞受賞者や西田哲学などに代表される世界レベルの人材の輩出と研究を行ってきた京都大学。恵まれた立地で育まれた「自由の学風」のもと、学生の独創的な発想力を鍛え、その能力を遺憾なく発揮し活躍できるよう、世界の舞台へと送り出すために、戦後生まれ初の総長は、新たなミッションを掲げた。

伝統の「独創性」をさらに磨く「WINDOW構想」

山極壽一総長
昨年10月に就任した山極壽一総長

2015年5月、京都大学は、理学部の卒業生で昨年のノーベル物理学賞受賞者、赤﨑勇先生に名誉博士の称号を授与した。「赤﨑先生の記念講演で、本学に入学されたころの思い出話をお聞きし、『自ら考え、判断する』という京大生の姿勢は、70年近い年月を経ても変わっていないと再認識しました」と山極壽一総長。多数のノーベル賞受賞者の存在や山極総長自身が歩んできた日本発祥の霊長類学などが象徴する、独創性と創造力に富んだ人材養成で高く評価される京都大学。その強みは、対話を根幹とした「自学自習」を尊重する伝統的な風土に培われてきたと山極総長は分析する。その風土をさらに生かすために立ち上げられたのが「WINDOW構想」だ。

大学を社会や世界に通じる窓として位置づけ、大学の中と外の風通しを良くし、外の世界で活躍できる学生や研究者を育てようというもので、構想を力強く推進するためにWINDOWの各文字を当てた目標が定められた。WはWild and Wise。未知の世界に向かって自分の能力を鍛え、対人力に優れたタフで聡明な人材を養成する。IはInternational and Innovative。国際性を持ち、常に新しいことを考え、イノベーションを創造する。NはNatural and Noble。歴史と豊かな自然に恵まれた京都の地を活用した品格ある精神を培う。DはDiverse and Dynamic。様々な価値観や文化が交錯する時代に、世界の流れをつかみながら、多様な人の考え方を理解する力と時代に流されない力を醸成する。OはOriginal and Optimistic。独創性を獲得しつつ対話を重ね、失敗や批判を恐れず、そこから楽観的に学び、成功に導く力を養う。そしてWはWomen and Wish。女性の活躍は、教育や研究に更なる深みと奥行きを与える、大学にとっての大切な希望。女性が勉学や研究などに打ち込める環境を独自に整える。「こうした目標を推進することが、世界へと向かう人材の背中を押すことになると考えます」

そして、均質性を求めてきた時代に、山極総長は一石を投じる。「新しいものは、違う能力が出合って初めて生まれます。それを象徴するキャッチフレーズが『おもろいこと』なんです。自分が面白いと思うだけではなく、その魅力を他人に説明し、『おもろい』と賛同されて、みんなが手を組んで作っていくのが『おもろいこと』です。そういうものを私たちは、京都大学から力強く発信していきたいのです」

質の高い教養・共通教育の実施
1・2年次から最先端の研究者に学ぶ機会も

国際的な舞台でリーダーシップを発揮する人材には、文系・理系の枠を超えた質の高い教養も欠かせない。そうした教養を身につけるための教養・共通教育の企画および実施を一元的に担う組織として13年4月、国際高等教育院を設置。全学の教員の協力のもと、質の高い教養・共通教育を実践するシステムが整えられた。全学生は1・2年次で多様な分野にわたる教養科目や数学、物理といった基礎科目を履修し、学問の幅を広げる。

同時に、入学時から専門分野への学びをシームレスにつなぐ4年一貫教育の実現のため、学問の多様性や階層性を配慮したコースツリー(専門科目へとつなぐ教養・共通教育科目の組み合わせ)を考案。専門性の高い学部教育を受ける選択肢が1年次から用意されているのも大きな特徴だ。「ポケットゼミ」と呼ばれる少人数セミナーでは、各学部の教員はもちろん、研究科や研究所、センターに所属する教員たちとじかに接し、対話や実践を重視した授業を受けていく。「京都大学が誇る最先端の研究をしている研究者と早くから接し、緩やかな専門化を進めることができます。まさに18の研究科・14の研究所・17の教育研究施設を有する本学の特徴が、いかんなく発揮された授業だと自負しています」(山極総長)。

またグローバルに活躍する人材育成や専門教育への土台づくりを目的に、外国語教育、とりわけ英語教育の強化にも大きな力を注ぎ、成果を上げている。5年間で外国人教員を100人増やし、すでに多くの授業やゼミが英語で行われている大学院に続き、学部の講義や実習も英語で行うものを大幅に増やす方針だ。

国際戦略の推進
研究協力をベースに海外との学生交流

ハイデルベルク大学との海外事務所相互設置
ハイデルベルク大学との海外事務所相互設置

現在、京都大学の国際戦略の大きな柱となっているのが「京都大学ジャパンゲートウェイ構想」だ(Topics参照)。構想に基づき現在、主に大学院以上の学生を対象としたダブル・ディグリー、ジョイント・ディグリーの各プログラム実現を目指した協定締結の準備が進められている。

今年初め山極総長は、京都大学が拠点を置くイギリス・ロンドン、ドイツ・ハイデルベルクの複数の大学を訪問した。そこであらためて確認したのは、京都大学との研究協力への期待の大きさだ。まず双方向での研究協力体制を整え、そのうえで学生の主体的な交流を進めていくという流れだ。「それは結果的に、本学の強みを生かす方法にほかなりません。本学の研究者は世界最先端の研究を進めている方ばかりです。国際競争力のある海外の大学等と双方向の研究協力を進め、その体制のもとに学生を海外に送り出し、海外からは優秀な留学生を受け入れる。このスタイルでゲートウェイ構想が進んでいくという確かな手応えが得られました。」

特色入試の導入
自発的、能動的に学ぶ学生への期待

16年度からは「京都大学特色入試」を導入する。高校での学修における行動や成果及び個々の学部の教育を受けるにふさわしい能力並びに志を総合的に評価する入試である。教員たちから高校生への“メッセージ”ともいうべき特色入試導入の背景には、高校と大学の教育を接続させ、大学という学びの場に対応できるよう、高校において幅広い学習に裏付けられた総合力と学ぶ力、高い志を養ってほしいという期待がある。「一番重要なのは、考える力を身につけることです」と山極総長は強調する。高校までの勉強では、すでに先人が答えを見つけている問題を素早く解くことを考える。しかし大学で取り組む学問は、まだ答えが無いばかりか、問い自体を自ら立てなければならないこともある。「自分のとがった能力を信じ、自ら考え、仲間と討論し、そのなかからいろいろな答えを見つけていく。そうした姿勢で学問に取り組める人が京都大学での勉強を楽しめる人です。ぜひ、そんな新入生を迎えたいと思っています」

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