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特集大学

奈良先端科学技術大学院大学

額田知実さんマシュー・ホーランドさん
奈良先端科学技術大学院大学の大学力Message & Topics
大学全景

1991年に建学した奈良先端科学技術大学院大学。学部を置かない国立大学院大学として、21世紀の社会基盤となる情報科学、バイオサイエンス、物質創成科学の3研究科を擁し、世界トップレベルの教育・研究を推進する。同大学院の特徴と今後の展開について、小笠原直毅学長に聞いた。

最先端の教育・研究環境で未来を拓く

小笠原直毅学長
小笠原直毅学長

関西文化学術研究都市にある奈良先端科学技術大学院大学。その名の通り、大学卒の院生だけが通う理工系大学院だ。「91年の設立当時、理工系人材の専門性を高めなくては、日本は世界で通用しない。大学院の教育を充実させようという動きが高まり、本学が生まれました。理学、工学、農学、薬学といった既存の学問領域の枠を超え、発展の著しい最先端の研究領域に特化した大学院として、高度な人材を養成し科学技術の進歩と社会の発展に貢献するのが使命です」と小笠原直毅学長は、建学の意義を話す。

現在、理工系の大学生の多くは、大学院を視野に入れて進路を考えるという。「日本は欧米と違い、同じ大学の大学院へ進むのが一般的。そうした大学院では、内部進学者と外部進学者との差が出やすいという懸念もありますが、本学なら全員が同じ位置から大学院の学びをスタートできる。さらに、どんな場所でも生き抜く力が求められる今、いろんな教育の場を体験し視野を広げることは、学生の成長にとって大切でしょう」

国際色豊かなことも“独立の大学院大学”のメリットだ。全学生約1,000人のうち留学生が42カ国・地域から約200人。「アジアや欧米のほか、中南米やアフリカなど世界各国・地域から来ています。全研究室約60の多くに留学生が数人いるので、日常的に多様な文化や価値観とふれ、グローバルな視点が自然と身につきます

多彩なバックグラウンドをもち、能動的に進路を決めた学生が集まる同大学院。約200人の教員は、学生のモチベーションを刺激するハイレベルな研究者がそろう。未知の研究分野に切り込む土壌は固まっている。

3研究科の特色
未来に貢献する最先端科学

実験装置を操作している様子
実験装置を操作している様子

同大学院の3研究科はどんな学び舎なのか。まず情報科学研究科について、小笠原学長は「今はやりの言葉IoT(Internet of Things)は、車の運転や電気製品の自動制御や自動認識など、身の回りのモノがインターネットでつながること。また、膨大なデータの解析が新しい知識や価値を生むビッグデータの活用も始まっています。最先端のコンピューター技術は、新しい形で社会を支え暮らしを豊かにするはずです」。

バイオサイエンス研究科は、「21世紀はバイオの時代といわれ、様々な生きものの基本メカニズムが遺伝子レベルで解明できるようになりました。例えば、本学に在籍された現京都大学・山中伸弥教授が開発したiPS細胞は、再生医療や治療薬の開発につながります。将来は、生物資源を有効活用し、炭素資源の枯渇や、食糧難の問題に対応できるかもしれません。人の健康や持続可能な社会の実現に貢献できる学問です」。

最後に物質創成科学研究科。「ナノテクノロジーといえばわかりやすいでしょうか。ここ数年、分析・計測技術が高度化し、ごく小さな物質の姿が見えるようになりました。原子・分子レベルでの物質の挙動を解明すれば、新しい物質や構造、新しい機能が創造できます」と説明する。どの研究科も“新しい何か”で社会を変革する可能性に満ちている。

異分野融合教育の展開
3研究科から1研究科体制へ

研究内容について議論する留学生
研究内容について議論する留学生

同大学院は、文部科学省の平成25年度「研究大学強化促進事業」の支援対象機関に採択された。この取り組みとして、フランスのポールサバチエ大学に国際サテライト研究室を設置。教員を常駐させ共同研究を進める。また、アメリカ・カーネギーメロン大学の教授を 招聘 しょうへい し、学生参加のもと共同研究も実施。「研究分野を開拓するため、将来性のある研究者を招き、今いる先生方には海外で研究力を向上していただきたいですね」。次はアメリカにもサテライト研究室を設置の予定で、現在整備中だ。

昨年は文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援事業(タイプB)」の採択も受けた。「本学は10年後、留学生の数を現在の1.5倍に増やし、グローバルキャンパスの実現を目指すとともに、挑戦性、総合性、融合性、国際性を 涵養 かんよう する異分野融合教育も展開します」。その目玉が2018年度にスタート予定の3研究科体制から1研究科体制への移行。「基礎科学と技術の融合や研究分野のオーバーラップが進む今、研究科間の壁をさらに下げて学際的、全学的な教育・研究を展開せねばなりません」

課題創出連携研究事業も同大学院ならでは。「大学のシーズと企業のニーズをマッチングする産学連携とは異なり、テーマを創出する段階から、両研究者がブレーンストーミングして共同研究を進める異分野融合型事業です」と小笠原学長。現在ダイキン、ヤンマー、サントリーと連携し、新ビジネスの開拓に注力する。

サポート体制
研究に没頭できる制度と雰囲気

物質創成科学研究科博士前期課程2年 今井祐輝さん
物質創成科学研究科
博士前期課程2年 今井祐輝さん

研究風土について小笠原学長は、「他の研究室の人と議論をし、自らの研究を深める雰囲気がある。そこをもっと強めたいですね」と話す。物質創成科学研究科の今井祐輝さんは、「様々な測定に精通する技術職員の方のサポートなしに、私の研究は成り立ちません。学生宿舎やリサーチ・アシスタント制度での雇用による経済的支援、国際学会への派遣制度も充実し、安心して研究に没頭できます。それに、周りの学生はやる気のある方ばかり。もっと頑張らねばと痛感する日々です」と手厚い研究サポートと意欲の高さをあげる。

「本学は、今までの学習環境では考えられなかった、新しい能力、新しい未来が創れる大学です」と断言する小笠原学長。大学院大学として改革の歩みを速める同大学。世界水準の教育・研究モデルを完成させる日は近い。

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