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12月17日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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愛知医科大学

1972年に医学部の単科大学として開学。1980年に医学研究科、2000年に看護学部、04年に看護学研究科を開設し、2学部・2研究科体制の医科大学となった。キャンパスがあるのは、住みよい街として人気の長久手市の高台。実習の主な場となる隣接の大学病院は高度先進医療を行う特定機能病院で、高度救命救急センターや、愛知県で唯一のドクターヘリも有する。2014年5月には、より高度な機能を備えた新病院も完成した。

〒480-1195
愛知県長久手市岩作雁又1番地1
TEL: 0561-62-3311

情緒と品格

時代に応える医師・看護師を輩出
今、新たに掲げる教育理念は
「情緒と品格を備えた医療人の育成」

愛知医科大学の開学は1972年。背景には当時の医師および医師を育てる大学の不足があり、優れた臨床医を育て、地域に役立つこと、発展途上国の助けになることを主な目的に建学された。その後、社会のニーズに応えて看護学部と大学院が設置され、2学部・2研究科を擁する医系大学へと成長。開学から45年が経ち、取り巻く環境も大きく変化した現在。今後目指していく方向性を改めて示すため、打ち出した新たな教育理念が「情緒と品格を備えた医療人の育成」だ。

三宅養三理事長は力強く言う。
「深い知識と確かな技術はもちろん、そこに情緒と品格を備えた医療人を養成することこそが、これからの医療の発展につながります」

情緒と品格。医療とはやや遠いイメージの言葉だが、そこには熱い思いが込められている。

「日本の医療・医学が世界トップクラスになれたのも、物事を深く感じ取る力、情緒があってこそ。感性を磨いてそれを守っていかなくては、未来はありません。また、超高齢社会では命に対する価値観も多様化します。そんな時代の医療人には、深く人間を見る目、本質を見極める力が必要になります。それが品格です」

新病院の開院から3年。約10年がかりで進めてきた40周年記念事業のキャンパス再整備が今年度中に完了し、一区切りがつく。一方、医学教育は大きな転換期を迎えており、人材の質向上、グローバル化や国際基準の確保、地域医療への対応、経営など、多方面の変革を求められている。「発展の舞台は整い、ここから大学の3本柱、教育・研究・経営を強化していきます。なかでも、良い人材を育てることが本学の現時点のグランドデザイン」と三宅理事長。その方針として「情緒と品格を磨くため、医療という仕事の素晴らしさを伝えていきます。学ぶ側は、自ら学ぶ姿勢と意欲を持ってきてほしい。また、医学部にも女子学生が比較的多い本学ならではの、女性がより活躍できる道も切り拓(ひら)いていきたいと考えています」と語る。

改革はすでに始まっており、あと5年を切った50周年に向けて加速する。

カリキュラム改革

医療人材への多様なニーズに対応
臨床実習の大幅な拡充を実現した
新カリキュラムをスタート

実習を体験することによって、講義などで得た基本的な知識と技術を磨く。

医学部では、WFME(世界医学教育連盟)が定める「国際認証」(※1)の審査、医学教育分野別評価の受審が2019年度に決定。その基準確保をベースに、数年前から教育プログラムの整備を進めてきた。「医療人入門」「臨床入門」「行動科学」などの独自の授業も導入。そして、以前は約50週だった臨床実習の拡充を図り、2017年度から72週を確保するカリキュラムをスタートした。岡田尚志郎医学部長は「基礎・専門教育の質を保ちつつ、低学年で臨床科見学実習のような早期体験実習を取り入れると共に、臨床実習においては診療参加型実習時間を増やしました。2年前から学外実習も導入しており、地域の約20の病院の他、全国から希望する実習先を選ぶことも可能です」と説明する。

グローバル化対応では、国際バカロレア資格での入試を2017年度入試から導入。一方で、ローカルでは愛知県の要請・寄付による「地域医療教育学寄附講座」を2016年11月に設置し、総合診療専門医の養成で地域包括ケアへの貢献を目指す。

また、入試の利便性向上にも取り組み、2018年度入試よりWEB出願を開始すると共に、入試会場を名古屋駅前に設ける。

看護学部でも2017年度に新カリキュラムをスタート。臨床実習を増やし、4年次はシミュレーションセンターを活用して多職種連携を学ぶ内容も充実。教養科目が広く選択でき、卒業研究を必修化することで深い教養が身につく構成になった。

看護学部は2016年から2年連続で国家試験合格率100%を達成。この結果は病院実習の充実や、医学部教員による指導など、さまざまな要素に起因する。白鳥さつき看護学部長は「大学病院への就職が他校と比べ圧倒的に多く、将来像が見えやすいこと、現場の看護師が〝臨床教授〟として実習指導することも大きい」と付け加える。

看護師の役割が高度化する中、研究科では高度実践看護師教育を実施し、診療や検査、処置などの特定行為を行える「診療看護師」の養成コースも設置。「看護実践研究センター」では卒後研修を東海地区の看護職者を対象に行い、看護の質向上に貢献している。

※1 米国・カナダ以外の医学部出身者が米国内で医師活動をするにはWFME(世界医学教育連盟)の認可が必要で、2010年、その受験資格を2023年以降は国際認証を受けた大学医学部の出身者に限るとの意向が示された。日本での国際認証は、WFMEの認可機関、JACME(日本医学教育評価機構)の医学教育分野別評価で審査される。

ICT環境

情報を使いこなし、学び続ける力を養う
ICT教育の基盤を構築
画期的な教育用電子カルテも稼働へ

医学や看護学の統計解析に必要なソフトなどが揃(そろ)うマルチメディア教室。

情報の取捨選択と活用は医療教育においても重要なテーマ。愛知医科大学ではそのカギとなるICT環境(※2)の整備を推進し、2007年には独自の授業支援システム「Aidle(アイドル)- K」を導入。ウェブを通して講義資料の利用、小テストや教員評価もできるものだ。また、学習の履歴・成果を蓄積できるシステム「eポートフォリオ」の開発も進め、最近、その蓄積期間が無制限になった。

ICT環境の開拓を先導するのは佐藤啓二学長。「新時代の教育の中心課題は、『生涯学習能力』と、情報を使いこなす『情報リテラシー能力』と言われます。それらを養うにはICTの設備だけでなく、支援する組織能力、時代に対応した仕組みも必要。その基盤として2017年4月、総合学術情報センター『アカデミックメディアセンター』を発足しました」

同センターは、従来の医学情報センター(図書館)と情報処理センターを統合し、その2部門に加えて「ICT支援部門」を設置。人材活用と能力開発の機能も備える。

ICT支援の例をあげると、まず「Aidle-K」と「eポートフォリオ」の利用促進。次に推奨資料の選択・紹介。動画や画像も著作権を確認して紹介することで、教育研究の効率を高める。学内研究者の実績・領域・技術をまとめるデータベースの作成も重要なミッションだ。同大学では「研究創出支援センター」を2016年に立ち上げており、データベースはそこでの効率的なリレーションを叶(かな)える。そして、「教育用電子カルテⅡ」の利用促進。実際の電子カルテをプライバシー確保のうえで教育に生かすシステムだが、最新バージョンのⅡは、診断、治療、手術前後といったフェーズ毎(ごと)の課題を提示するというもので、診療ガイドラインに基づく解説の参照、キーワードのマスクや関連情報のリンクも可能になった。今年度中にも実習で活用する予定だと言い、佐藤学長は「全国でも前例はなく、多大な教育効果が得られるのは間違いない」と自信を見せる。

大きな進化を遂げたICT環境。これもまた、時代に応える医療人教育の一環である。

※2 Information and Communication Technologyの略語、情報通信技術

注目トピック

シミュレーションセンターや
セミナー室など、教育施設が充実

キャンパスの敷地内に、特定機能病院である大学病院をはじめ、「運動療育センター」や「災害医療研究センター」などの多彩な研究施設があり、医療人として成長できる環境が整う愛知医科大学。再整備によって教育環境も一層充実した。

その一つが、2015年に設置された「シミュレーションセンター」だ。センターでは、全身の状態を自在に変化させられることで、人の体や状況をリアルに再現できる人体シミュレーターを用い、各種の手技トレーニング、静脈注射や超音波といった処置・検査技術の習得など、さまざまなプログラムを提供。状況設定機能を使い、遭遇が稀(まれ)な場面の模擬演習も実施している。技術の習得にはトレーニングが必須だが、医療事故防止や患者の権利擁護の観点から現場でそれが難しくなっている中、医学部・看護学部の学生および病院職員らのスキルアップに役立っている。

自主学習に効果的なのは「セミナー室」。学習用施設として新設された「医心館」には35室があり、医学部6年生と看護学部4年生が国家試験に向けたグループ学習などに利用する。4月から試験終了までは7~24時の利用が可能だ。医学部では本館2・3階にも20室があり、グループでのレポート作成や試験勉強などに使われている。本館7階には5年生用に70名収容可能なグループ学習室、60名収容可能な個人ブースが、4年生用にも50名収容可能な学習室が整備され、誰もが好きな時に利用できる充実度。いずれもWi-Fiを完備し、授業支援システム「Aidle-K」を活用して成果を上げている。