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インタビュー
2017年3月28日

大学生が考える農業のリアルと未来

若い世代は日本の農業についてどう捉えているのだろうか。様々な視点から「食」と「農」について考え、伝える活動をしている学生団体「FaVo」に所属する大学生の皆さんに、農業との関わりやこれからの農業をテーマに伺ってみました。

大きな枠組みで農業をとらえてみたい

――はじめに簡単な自己紹介をお願い致します。

外山雄士(以下、外山) 代表の外山です。東京農業大学の国際食料情報学部1年で、農業を海外で活性化させるための勉強をしています。静岡県出身で、実家は三ヶ日みかんなどの果物や野菜を作る農家です。育った環境では、仕事と言えば農業か教師という感じでしたので、将来の職業の選択肢として農業は自然なことのように感じています。

Favo代表 外山雄士さん(東京農業大学1年)

森優(以下、森) 法政大学文学部地理学科1年の森です。大学では農業に関わる勉強がほとんどできないので、FaVoに入りました。実は高校生の時、農業関係の大学をインターネットで調べている時に、FaVoのホームページを見つけて興味を持ちました。農業以外にも勉強したいテーマもあったので、FaVoに入ることができれば、農学部に入らなくてもよいと考え、現在の学部に進学しました。

私は東京の練馬区出身ですが、小さい頃はまだまだ周囲に畑がたくさんあって、小学校の授業でも畑に行く機会が多くありました。中学生、高校生となるとつれ、時代の変化と共に畑がどんどん宅地化されて行き、なんとも言えない寂しい気持ちになったのを覚えています。今考えると、この時感じた思いが自分の興味の方向を農業へ向かわせるきっかけになった気がしています。

増田雄太朗(以下、増田) 私は中央大学理工学部生命科学科2年です。大学ではDNAや遺伝子組み換えについて学んでいます。茨城県出身ですので、周囲に農家は多く、家でも庭でジャガイモやトマトを作っていました。地元にいた頃はそこまで農業への関心はなかったのですが、進学を考えた時に大きな枠組みで農業というものをとらえてみたいという気持ちになり、FaVoに入りました。

増田雄太朗さん(中央大学2年)

小林葵(以下、小林) 昨年12月まで外山君の前に代表を務めていました小林です。東京農業大学応用生物科学部栄養科学科の3年です。入学した当初、せっかく農業大学に入ったのに栄養科だと農業の勉強ができないことに寂しさを感じ、FaVoに入りました。東京育ちで野菜はいつもスーパーで買う生活だったため、畑から収穫して食べるということに憧れを抱いていました。小さい頃におままごとをする時も、畑がある設定で人形に自給自足の生活をさせていた程です(笑)。潜在的に、畑から採って食べることが大好きだったんだと思います。

外山 実際、みかんでももぎたてが一番美味しい。今は実家から送ってもらったものを食べるのですが、現場で食べるのとは全然違います。

自ら積極的に動き、農業の魅力を体感

――現在のご自身と農業の関わりについて教えていただけますか。

 実は、この4月から山梨県上野原の農家に住み込みながら大学に通う予定です。中学校の頃、たまたま中央線に乗った時に見た上野原の風景が忘れられず、いつか上野原に住みたいと思っていました。FaVoで農業に関わるうちに、やっぱり上野原で農業をやりたい気持ちを抑えられなくなり、上野原の地域おこし協力隊の方に連絡したところ、学生を募集している農家さんがいると聞き、思い切って決めました。幸い1年生の時に単位をたくさん取得しましたので、週に2回ほど大学に行けば大丈夫です。FaVoに入らなかったら、ここまでどっぷり農業につかろうと思わなかったと思いますし、行動力のあるメンバーとの出会いがなければ、自分から積極的に動いてみようという意識も芽生えなかったと思います。

森優さん(法政大学1年)

増田 私はもともと環境問題に興味があったのですが、大学受験で受かったのが中央大学理工学部でした。農業とは直接関係のない学部ですので、農業をやりたいなら自分から動こうと思い、FaVoとは別のメンバーで料理イベントを企画しました。コンセプトは、全国のまだ知られていない美味しい食材を味わってもらい、情報を拡散してもらうこと。こうした企画を思いついたのは、FaVoの活動を通じて、とれたてのレタスの美味しさを知った体験があったからです。せっかく美味しい食材があるのに、情報が伝わっていないのはもったいない。こうした経験も踏まえ、将来は全国の農産物を、流通面や地域の活性化も含めて包括的に活性化していく仕事に就きたいと考えています。

小林 私は食べ物という観点から農業に興味を持ってFaVoに入ったので、美味しい野菜や果物で作った食べ物を提供するカフェの活動に力を入れきました。その間、協力してくださる農家さんとの関係が難しくなった時期もありました。農家さんは変わりませんが、私たちのような学生団体は毎年メンバーが変わる。初代のメンバーとは信頼関係ができているけれども、意識の違うメンバーが入ることによって農家さんを困惑させてしまい、「何のために活動しているのか?」と問われてしまったのです。これを機に、私たちの活動を見直し、活動を持続的に続けるためには学んだことをすぐに生かしていく取り組みが必要だということに思い至りました。そこで、野菜を使って料理を出す際に、農家さんのこだわりや人柄、野菜が育った場所の風景などの独自の情報を伝えることにしました。私たちが知って欲しい情報をお客さんに伝えた上で最高に美味しい物を味わってもらいたいと考えたからです。さらには、来店者の方に料理の評価やイベントの感想を聞き、それをまとめた手紙を農家に送りました。その結果、農家の方はとても喜んでくださり、「問いに対してきちんと応えてくれたから、今度はこちらが応える番です」という言葉をくださったんです。その時は本当にうれしかったです。

小林葵さん(東京農業大学3年)

外山 FaVoでの遠征や合宿を通じて、農業という一つの産業がどのように利益を得ているのかをいろいろな面から考える貴重な機会となっています。また、アルバイトでも農業に関わりたいと思い、こだわりの野菜をアプリで選んでもらい、お客様に届ける宅配サービスの会社で働いています。全国展開している会社なのですが、売り上げの半分は東京なんです。配達をするなかで高所得者の方ほど野菜を多く買っているのではないかということが見えてきました。

熟練の農家の知見のスマート化に期待

――低所得の人ほど野菜を摂れていないというデータもあります。

外山 限られた食費の中でどれだけ野菜に使えるかという切実な問題もある。その一方、実家が農家だからこその感覚かもしれませんが、スーパーで野菜の値段を見る度に「安すぎる」と思ってしまいます。採算が取れる感覚ではない。

増田 農家の方も同じようなことをおっしゃっています。自分で売り手を探して直販した方が労働力に見合った値段で売れると。でも、消費者の立場で考えると、例えば200円と100円のレタスがあるとして、その価値の違いが伝わっていない現実はある。そうなると、安い方に手が伸びてしまう。

実際の農家さんのもとを訪れ、農業のリアルを体験取材(Favo提供)

――小売価格の問題は大きいですね。他に、日本の農業が抱える問題をどんな風にとらえていますか。

 現場の課題と政策がかみ合っていないという話をよく聞きます。こうしたことは現場でしかわからないことも多いので、これから長期的に考えてみたいと思っています。

増田 農業人口の減少の問題もあります。農業人口が減っても、規模が大きくなれば生産性も上がり補助金の必要もなくなるという見方もありますが、今日私が行ってきた茨城県の地域では60代以上の農家の割合が圧倒的に多く、正直10年後が心配になりました。農業者の平均年齢が66.8歳。やはり、就農人口を増やすことも必要ではないかと思います。

外山 大学の授業で、少子高齢化が進み人口が減れば食料も少なくて済むという考え方もあると知りました。しかし、どのレベルで考えるのかが問題です。インスタント食品だけでも生きていけますが、健康で文化的な食生活とは言えない。難しいですね。

増田 農業全体が内向きになっていると感じています。もっと農業への敷居を低くする活動が必要ではないでしょうか。少し前にランニングがブームになったのは、ウェアがお洒落だったというのも大きい。薄っぺらいと言われるかもしれませんが、農業にファッションやお洒落の要素を加えていくことも有効だと思います。

小林 農業は産業としての歴史が浅く、自然が相手なのでリスクも多く、儲からないイメージがある。そこが一番の課題だと思います。どうしたら産業として成り立つか、そして格好良く見えるか。今まさに現在進行形で伸びている産業だと打ち出すことができればいいなと思います。

普段あまり話さない関心事にまで話は及んだ

――近年、スマート農業にも関心が集まっています。

増田 機械化が進むことで農村に興味を持つ人が増えていけばいいですよね。

 今後は、こだわりをもって手で作業をする農家と大規模で効率化を進める農家の二極化が進むと思います。中途半端なのが一番難しいかもしれません。

小林 安定供給が可能という意味では需要がある。消費者の選択肢も増えるのはよいですね。

外山 例えば、レタスの苗を植える際も力加減が本当に難しい。こうした農業の現場でどこまでスマート化が可能か気になるところです。エンジニアとかIT関連の人が参入し、もしも熟練の農家の知見をIT化していくことができるならば、小規模農家の人にとっても魅力的なことだと思います。最近は野菜工場という言葉も耳にしますが、スマート化によって農業への敷居を低く感じる人は増え、そこに就職という形で農業人口が増えることもあるかもしれません。

小林 仕事の管理という視点も、スマート農業に含まれますよね。これまで農業は、どの作業にどのくらい日数がかかるからこうしようと練ることも、収穫にどのくらいの人員を投入すべきか、どうしたら効率がよくなるかということをデータ化してこなかったと思います。予想外のことも発生しますし、見えにくい作業も多いのでデータ化は難しいかもしれませんが、農業を産業として育てていくためには、こうした意味でのスマート化にも期待したいと思います。

――ありがとうございました。

(2017年3月8日収録。所属・学年は当時)

学生団体Favoとは
農業に興味がある東京近辺の学生が集まる学生団体。「食」と「農」を生産から流通、消費まであらゆる側面から捉え、考え、伝えて、生産者と消費者の輪を広げることを理念としている。今年で結成5年目、約30人でマルシェやカフェなどの活動を展開中。農業の現場を見て、農家と語り、土にまみれて田畑を全身で感じ、丹精込めた野菜を一番おいしい時にいただき、農業の現状や魅力を学生視点で発信している。
「学生団体FaVo」ホームページ

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