能動的な学びを促す教育へ
インストラクショナルデザインで
能動的な学びを促す

教員の中には、名人芸ともいえるほどに教えるのが上手な先生がいます。私が専門に研究している「教育工学」では、そうした名人芸を分析し、より適切な教育法を一般化していきます。その際、工学的な手法を用いるので「教育工学」といいますが、テクノロジーの活用に限らず、心理学や社会学、統計学などあらゆる学問の知見を活用し、教育の改善を試みます。例えば、インターネットをはじめとしたデジタル技術を活用して学習を行う「e-ラーニング」や、事前に学習者が知識の習得をし、授業では知識確認を行ったり、知識を踏まえてディスカッション等を行ったりする「反転授業」などが具体例として挙げられます。
教育工学の一分野に「インストラクショナルデザイン」というものがあります。直訳すると「授業設計」。学習の「効果」、学習者や教員に対する「効率」、学習者がさらに学びたいと思う「魅力」の3つの観点から、授業の質を高める研究を行います。
日々科学技術が進化していくグローバル社会においては、リーダーシップや高いコミュニケーション能力が求められます。そうした人材を育成するためには、教員から与えられたものをこなして学ぶ受動的な授業形態ではなく、学生が主体性をもって能動的に学ぶ「アクティブラーニング」を推進していく必要があります。必要な情報を主体的にノートにとったり、ディスカッションやプレゼンテーションを行うことで思考のプロセスが外へ出てくるような授業へと「デザイン」していかなければなりません。その際、非常に有効なツールとして機能するのがICT(情報通信技術)です。
アクティブラーニング
推進のカギはICTの活用

グループディスカッションの発表内容を、画面表示した解答例に書き込みながら照らし合わせる。

グループワークを積極的に行い、主体的に学ぶ意識を促す。
例えば、本学でも使用している「インタラクティブ機能搭載プロジェクター」(EPSON)もICT化を進めている機器の一つ。投写した画面に直接書き込みができるのが大きな特徴です。グループワークで各グループの発表を電子ペンで書き込めば、それをデータとして保存したり、タブレットなどを通して学生一人ひとりに配布も可能。プロジェクターを2台用意し、片方に学生の発表、もう片方に模範解答例を表示させれば、教員がグループワークのフィードバックを書き加えながら問題点を可視化しつつ、インタラクティブに議論を進めていくこともできます。学生が能動的に学んでいく学習の「効果」を高めるとともに「効率」よく授業を行えますし、直感的な操作で、学習意欲に関わる「魅力」の面でもよい効果が得られると思います。また、短焦点のプロジェクターの場合は壁掛けをして真上から投写すれば影が写りにくく、画面が見やすい。学生がストレスなく授業に集中できる環境を整えることも大切です。
大人数の授業では、学生の意見を効率よく回収するのは難しいものですが、「クリッカー」という通信機器を学生に配布すれば、ボタン入力で回答を瞬時に集め、プロジェクターの大画面に回答結果を表示させることもできます。アクティブラーニングを実践するために、ICT機器をうまく活用することが欠かせないと思います。
本学では4月からスタートした教育改革により、重点的にアクティブラーニングに取り組むことになりました。目指すのは、自ら課題を発見し、主体的に学べる自立した学習者を育成すること。そのためにICTが担う役割は大きく、教育工学の意義は一層重要になっていくと考えています。
(談)