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真のグローバル人材とはこうでなくてはならない、というものはないと思います。ただし、最低限必要なものはあります。それは「逆Tの字理論」と呼んでいる、二つの要素です。一つは、逆T字の横軸でベースとなる「グローバル社会での共通基盤」。これは、異なる意見や価値観を受け入れる力とコミュニケーション能力です。
海外では、様々な文化のなかで生活しなければなりません。私もアメリカに留学した当初は文化の違いで大変苦労しました。しかし、「いろいろな考え方がある」と思うと、異なる考えが面白く感じるようになったのです。さらに、こちらから話をするようになり、英語も上達しました。
日本をよく知ることも大切です。海外で日本について話すと「君、面白いこと知っているね」「面白い人だね」となります。語学だけではなく、多くの知識を持つことがコミュニケーションにつながるのです。
もう一つが、逆T字の縦軸「専門性」で、自分の強みです。自分や自国にアイデンティティーを持ち、意思を示していける能力が必要です。世界では「沈黙は金なり」は通じません。黙っていては意見がない人だと思われます。自分の主張をし、相手の主張も聞き入れる。自分の強みが何かを考え、伸ばしていってもらいたいのです。
グローバル人材というのは、つき合いたい人、魅力のある人だと思います。そうなるためには、海外での経験がとても重要です。いろいろな人に会うことで、様々なことを考えさせられます。多くの学生が海外留学して、世界を体感し、グローバル人材になってほしいと思います。
私は早稲田大学の野球部時代に、メジャーリーグで働く故・アイク生原さんの話を聞いたり、米国遠征に行ったりして、アメリカの野球に触れる機会があり、当時からアメリカでプレーしたいと思っていました。最終的に夢はかないましたが、アメリカに行ったのは37歳。あと10年早かったら人生が変わっていたと思います。
会場にいる高校生は、目の前に留学するチャンスがあるのなら、ぜひ利用してほしい。それを逃してしまうと、人生を振り返ったときに後悔しか残りません。たとえ失敗しても、挑戦して失敗したことは必ずプラスになるはずです。
今後、グローバル化を考えるなら、海外に行き自分の目で世界を確かめることが大切。その経験が強みになるのです。私はプロとして20年ほどプレーしましたが、1年しか行っていないアメリカでの経験が今も非常に役立っています。例えば、私が日本とアメリカの野球の比較を話した場合、見たもの、感じたことを伝えるだけで相手はその話を経験談として捉えてくれるのです。引退後も野球の専門家として仕事ができているのは、そのおかげだと思います。
新浪さんが話しましたが、ベースになる部分をしっかりさせることで、専門性も伸びていくはずです。逆にベースが小さいと上にくる専門性もぐらついてしまい、なかなか思うようになりません。横軸、縦軸のどちらも伸ばすには、いろいろな知識を吸収し、学習することが大事です。大学には様々な留学プログラムがあるので、それを利用しない手はありません。若い皆さんには、悔いの残らない人生を送ってもらいたいと思います。
基調講演の後には、文部科学省の留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」の取り組みが紹介された。
下村博文文部科学大臣は「意欲と能力のある全ての日本の若者に留学するチャンスを提供できるよう、我々は留学促進キャンペーンと併せ、制度面、予算面で全力をあげて支援したいと思っています」と話した。
さらに、AKB48の高橋みなみさん、島崎遥香さんなど8人によるスペシャルユニットが登場した。ヒット曲「恋するフォーチュンクッキー」の替え歌で秋元康氏が新たに歌詞をつけた「トビタテ!フォーチュンクッキー」をオーディションに受かった学生たちと一緒に披露。学生にエールを送った。
高野 最近いわれている「グローバル」「グローバル化」とは何でしょうか。
丸山 生き方の問題です。自分を発見し、自分を知り、自分を作っていく。そのプロセスだと考えます。
辰野 世界のことを考え、社会を作っていく担い手である「地球市民」のことだと思います。
當作 様々な技術が進歩し世界が近くなったことで、遠くの人とも瞬時につながれる。そういう社会がグローバルだと思います。
大柴 丸山さんが話された自己発見という意見に共感しました。どんな環境におかれても、自分がどう行動するかが全てだと思います。
豊嶋 留学したとき、日本は海外から「技術がすごい」など高く評価されていると知りました。日本人として誇らしいし、私も日本に貢献したいと思うようになりました。グローバルとは、自国民としてアイデンティティーを確立することだと考えています。
平田 もっと日本のことを世界に発信していかなければならないと思います。しかし日本人は国際的な舞台で発言力が弱いと思いますが、どうすれば改善できるでしょうか。
丸山 日本は周りを気にしすぎる。それは海外でも非常によく出ています。大勢のなかで自分の意見を言える人は少ないですよね。穏便にことを運ぼうとするけど、それでは解決できない問題も多い。他人の目を気にせず、自分は自分だということを徹底する必要があります。
三本松 最近、グローバル化の話をよく聞きますが、日本の文化が失われるなどの悪い影響はないのでしょうか。
辰野 今、国連で地球市民を育成しようとしています。英語が話せるとか、グローバル企業で働くとかではありません。地球に生きている感覚を持ちながら、自分の行動を考えられる人。それが地球市民です。海外に出なくてもいいのです。
鈴木 海外に行って気づくことも多いと思います。日本の技術や文化を再確認でき、それが日本人としてのアイデンティティーを持つことにつながるのではないでしょうか。
高野 留学生の立場からはいかがですか。
WU やはり言語の勉強が大切です。下手でも留学先の言葉を話すことが一番。言葉を学び、留学している国のことに興味を持つことが大事だと思います。
NIHAUSDEEN グローバルな考えを持つのは大切ですが、自分の国の歴史や文化を尊重することを忘れては意味がありません。自分の国をリスペクトしながら、グローバル化していければすごくいい世界になると思います。
當作 グローバル化を考え、外国語を学ぶのは大切ですが、まずは日本語を勉強してほしい。考えるときは日本語を使うはずです。日本語を知らないと論理的に考えて自分の意見を主張できません。発言力をつけるには日本語の勉強が必要です。
高野 皆さんの話を聞いて、いかに地球市民としての意識を持てるか、自分を確立して高めていけるのか、それが今の時代には求められていることだと感じました。
私は2013年7月からマサチューセッツ工科大学のメディアラボでいろいろなリサーチをしています。そこで、途上国でベンチャー事業を企画するクラスと教育プラットフォームのプロトタイプをつくるクラスの二つをとっています。
どちらの授業もグループワークで進められます。ただし、先生にグループを決めてもらうのではなく、学生たちが自分の関心分野を説明しあい、一緒にできそうな相手を見つけるのです。
グループは、人種も大学も違ういろいろな人で構成されます。グループを作る際に先生たちが口をそろえるのは、スキルやバックグラウンドなどが異なる、多様な組み合わせが必要だということ。その方がクリエーティブなものができるからです。
物事が右肩上がりのときは、その延長線で考え、等質な集団で効率よくものをつくればいいと思います。しかし、今求められているイノベーションやクリエーティブなものをつくり出すためには、そこから上に行かないといけません。複雑な問題、想定外の事象は、多様性のあるメンバーと考えることで答えを出していけるのです。
これは海外に限った話ではありません。日本にいても、いろいろな人たちと一緒にやることで、今までと違うものをつくっていくことが大事だと思います。グローバルについて、より大きく考える、ビッグに考えることです。そして、複雑な問題の解決に取り組む。多様な人たちと一緒によりクリエーティブなことをしていってもらいたいと思います。
『GLOBE』には副題として「世界のどこかで日本の明日を考える」というコンセプトがあり、テーマごとに世界各国で取材をします。昨年6月の「ダンス」の特集では、フィリピンの刑務所でも取材をしました。朝日新聞社の海外勤務経験者は7%しかいませんが、記者は「グローバル人材」になり得る仕事だと思います。
朝日新聞紙上に初めて「グローバル人材」という言葉が登場したのは、2004年8月14日の「be」のコラムです。そこには、気軽に話してみるとか、語学力とかも必要だけど、それは軽く学べばいいもので、ときには、日本の綿密で真面目な風土で育まれたもてなしや、ものづくりなど自分たちの文化の重みを知ることも大事だとあります。
グローバル人材というのは自国とともに、他国の文化・風習・歴史も尊重しながら行動できる人だと思います。そうなるには、課題を見つけて自分で解決できる力を養わなければなりません。そして意思疎通を図るために語学力も必要になります。新聞記者はこうした力を持っている人が多いと思います。
「グローバル人材」といわれると難しく考えてしまう人が多いかもしれません。しかし、高校生もすでに同じような体験をしているのではないかと思います。例えば、小学校から中学に進学するとき、違うバックグラウンドの学生たちが集まって、新しい中学の風土を作り上げていきますよね。そこでやってきたことと同じことを海外の人とできれば、グローバル人材になりえるのではないでしょうか。
2013年の大学への入学率は88%です。つまり、希望すればほとんどの人が大学に進学できる時代になっているということです。1990年は55%ほどでしたので、その割合が非常に増えていることが分かります。
大学の数も増加しています。現在、日本には770の大学があり、494種類の学部があります。非常に多種多様な選択肢のなかから大学を選ばなければならないのです。
大学を選ぶとき、多くの人が入り口の情報を中心に決めがちです。数学と理科が得意だから理系に行こう、英語が得意だから英文学科という人もいますし、英語と国語が苦手だから理系に行くという消去法で選ぶ人も多くいます。入試科目や偏差値から合格できそうな大学を選ぶ傾向が強いです。
もちろんそれは必要なことですが、その前に大学に進学する目的・希望に必要な情報を収集してほしいです。大学のホームページには様々な情報が載っています。そこで大学の取り組み、教育の内容、国際化や就職の対応などを把握することが大切です。
河合塾と朝日新聞社共同で各大学の教育方法や国際化への対応などを調査した結果を公表している「ひらく 日本の大学」というサイトもあります。その他、大学の基礎データが掲載されたホームページ「大学ポートレート」などもあるので、利用してほしいと思います。
アメリカ、イギリス、オーストラリアなどでは、各大学を比較できるサイトもあります。全て英語になりますが、海外への進学を考えるなら、こうしたサイトも活用できると思います。
今の時代は、大学についての情報があふれています。そのなかから自分に必要なものをセレクトすることが大切です。そして、様々な情報を活用して、自分に合った進学先を選んでもらいたいと思います。
Facebookもそうでしたし、アメリカの企業の多くはインターンシップで優秀な学生を採っています。1・2年生から普通に企業で働くレベルの仕事を要求され、その成果で、入社してもやっていけるかを判断されます。ただし、インターンシップの資格は多くの場合、4年制大学の学部生にならないと与えられません。海外で就職を考えるなら、まずは学部生になることです。
グローバルな企業で働く場合でも、自分が生まれ育った国の文化や風習などを尊重しないといけません。そして他の国の文化と融合させながら仕事をすることが重要になります。私の職場には世界中の人が集まっていましたが、「日本ではこうだ」と言うと、すごく尊重してくれるのです。日本の文化をもっと教えてくれと。海外に目を向け、グローバルに考えるのはいいですが、自分のアイデンティティーはしっかり持たなければならないと思います。
あらゆる国に拠点を持っているのがグローバル企業かといえばそうではない気がします。「使命」が明確で大きいのがグローバル企業だと思います。例えば、Facebookは全人類70億人をコネクトするというミッションがあり、Googleは、世の中の全てのものを検索できるようにするという使命を持っています。そうすると必然的に世界を相手に考えないといけないのです。
「こんな仕事をしてみたい」というのもいいですが、「自分は世界をこう変えたい」「この企業はどんな考えを持っているのだろう」というところに焦点を当てると、もっと仕事選びが面白くなると思います。
私は34歳の時にFace bookに入ったのですが、今まで何をやっていたんだ?と思うぐらい刺激を受けました。海外に行こうと考えている人は、迷わず行ってください。そして、学んできたことを周りの人に伝えてあげてほしいと思います。