主催:学校法人河合塾/MEPLO 後援:朝日新聞社/朝日学生新聞社

ゼミの採録

グローバルゼミ 第2回 「否定されるくらいのアイデアが、ちょうどいいんです」 ゲストスピーカー 玉樹  真一郎氏

 グローバリゼーションとボーダレス化の中で、日本のみならず世界が混沌とし続けています。21世紀の新しい秩序がいまだに見えない今、私たちは何をどう考え、どう行動すればいいのでしょう。河合塾のグローバル・ゼミでは、世界を舞台に、最先端の斬新な分野で活躍される方々をゲストスピーカーにお招きし、明日の日本を切り拓く中・高生たちへの、熱烈な応援メッセージを贈っていただきました。

特別講演「世界を変えるアイデア~コンセプトをめぐる冒険」 プロフィール プロフィール

心の中のもやもやは、コンセプト作りの素になる

photo 僕の講演には「世界を変えるアイデア~コンセプトをめぐる冒険」と、すこし大げさなタイトルがついています。でも僕としては、全然大げさじゃないと思っています。任天堂時代、Wiiの製品開発の道程は、苦しいけど楽しい、本当に冒険のような日々でした。

 モノを作る時、何か新しいことをやろうとする時、いきなり始めても失敗したり、最初思っていたことと違うことをやってしまったりすることがあります。だからこそ最初に「一番大切なことって何だろう?」と考えて、そこからモノを作り出したり、何かを始めたりしなければなりません。その一番大切なことを「コンセプト」といいます。それを見つけるには「自分って今、何を考えているんだろう?」と、心の中と対話しなければいけません。このあとのワークセッションを通して、みなさんの心の声を聞かせてほしいと思っています。

 僕が高校生の頃は、プログラミングが好きで、自分でゲームを作ったりしていました。その頃の自分は、心の中に何かもやもやしたものを抱えていました。さて、みなさんは、もやもやというか、いらだちのようなものを感じることってありませんか。なんでうまくいかないのかなぁ、こういうものがあればいいのになぁ。そういうもやもやとしたものがみなさんの中にも、ちょっとはあるんじゃないかなと思うのです。ただそのもやもやを、そのままにしておくと、何の役にも立ちません。それをしっかりと形にする。世界はこうあるべきだ、こうなってほしい、そういうことを形にまとめて、これをやるんだ、絶対にこれだけは実現するんだというところにまで仕上げていく。それがコンセプトです。だから、もやもやというのはコンセプトの素みたいなものです。心の中のもやもやと、世界を変えるということはつながっているのです。世界を変えるっていうと、すごく立派で正しくて、しっかりとしたことをしなきゃいけないと思うかもしれないけれど、そんなことはありません。もやもやが源泉となって、みなさんのやりたいことを実現する。もやもやには、世界を変えるパワーがあるのです。

世界を変えるためには、‟伝える作業”にひと工夫する

photo 今回のグローバル・ゼミの目標は「世界に存在する課題への複眼視点、問いの本質を見抜く力、自らの考えを表現する力」です。そこで、2つの問いを用意しました。正解の無い、とても難しい問題ですが、みなさんなら解けるかもしれません。第1問です。これ(※)知っていますか? 初代の「スーパーマリオブラザーズ」です。この最初の画面から問題です。このゲーム、いったい何をしたら勝ちのゲームでしょう? もう一度、画面を見てみましょう。これ、スタートボタンを押した直後の画面です。マリオがいます。ほかにこの画面から何が読み取れますか? 「雲が浮かんでいる」「コインが1枚ある」「時間制限がありそう」いろいろと情報がありますね。ただ、この画面の中に直接は入っていないけれども、このゲームは何をしたら勝ちのゲームかってことが、こっそり隠されています。ヒントを出します。次に見せる画面は最後の敵・クッパと戦うシーンです。クッパをなんとかして倒す。倒す方法は? 画面の右端に斧が置いてある。斧をとると、この鎖を切ることでこの橋を落として、クッパが溶岩の池に落ちて、それでやっつける。そんなルールになっています。どうしてそんなルールになっているんでしょう? それがヒントです。
※スーパーマリオブラザーズの最初の画面

 さぁ、「スーパーマリオブラザーズ」は何をすれば勝ちのゲームだといえる? 答えは最初の画面に隠れています。わかる人いますか? そう、右に進めばいいんだ。実はこのゲーム、右に行けば勝ちなんです。最初の画面で大事な情報は、マリオが右を向いているということ。さらに、この画面の右の方に広い空間がありますね。なんとなくその空間が広がる方向に向かって歩いて行けばいいのかなって思ってしまう。つまりこのゲームは、「右に行けばいいのかな?」と遊んでいる人に感じさせて、それがそのままゲーム最大のルールになっているんだね。なぜそうまでして右に行かせたいのかというと、ゲームを好きな人ならわかるのじゃないかな。ゲームを買ってもらった時って「うれしい!早く遊びたい!」って、いきなりゲームを始めるでしょう。すると説明書を読まない。だけど少し遊んで面白くないって思ったら「なんだこのゲーム」って投げ出しちゃう。そんなお客さんにでも、楽しんでもらわなきゃいけないのが作り手の使命なんだ。買ってもらって、テンションが上がって、説明書を読まないお客さんにも楽しんでもらうため、「右に行けばいいんだ」とすんなり理解してもらえるように、こうした工夫をしているのだと、僕は思います。

photo ゲーム作りって、面白いことや楽しいことを考えていれば良いから楽ですよね、って言われることがありますが、そんなことはありません。説明書を読まない人でも理解できるゲームを作ろうと、その点にエネルギーを費やすのです。お客さんにゲームのやり方が伝わってはじめて面白さもわかってもらえる。つまり、どれだけ商品が良くても、どういうふうに使えばいいかがわからなければ意味がない。大切さで比べると、「わかる>面白い」なんです。だからマリオの最初の画面で、右へ行きなさいってことをちゃんと伝えられ、それがうまく伝わって初めて、このゲームは面白いとわかるのです。

 第2問です。こんどはiPhoneを例に出します。まず画面にタッチして指を下にずらす。そうすると画面の上のところに少し余白ができる。指を離すともとに戻る。これが問題です。なぜ余白ができるのでしょう? スクロールしたときに、余白ができた。実はこれ、もうスクロールできませんよ、ということを伝えようとしているのです。さらに、別の理由もあるような気がします。何だかわかりますか? 上から下に操作するときに、まったく動かなかったら、ということを想像してほしい。そのとき上に余白ができないで、そのままの状態だったら、お客さんは「あれっ、壊れた!?」と思っちゃうよね。普通、ゲーム機だとボタンがあって、ボタンを押すと物理的にヘコんだり、カチッと音がなったりして、何らかのリアクションが返ってきます。だけどタッチパネルだとリアクションがない。まして画面が動かないとなると、何が起きているのかわからない。そうすると、間違ったことをしちゃったのかな、壊れているのかな、とお客さんが不安になる。だからこそ、こういう処理をしている、と僕は思います。そんな細かいところまで気にしなきゃいけないのかと思うかもしれないけれど、それが私たち人間の感覚というものです。何か新しいことをする、新しいモノを作る、その思いがすごく立派なものだったり、本当に世界を良くするものだったとしても、このように細かいところまで工夫をして気を配らないといけないんだね。お客さんに伝わらないと意味がない。伝わってはじめて、世界を良くすることができる、という話です。

良くないと思われる事象から、「未知の良さ」を探りだせ

photo 僕がみなさんに伝えたいメッセージは、「世界を良くしようとしてください」です。どんな方法でもかまわない、世界を良くしようということを考えましょう。ただ、これもまたややこしい話で恐縮ですが、良いものなら何でもいいかというと、そうでもないのです。たとえばゲーム機や携帯電話で良いとされるものって、どういうものかな? 軽いとか、小さいとか、動作が速い、性能が良い、機能がたくさんある、安い、そんなものだったら良いものだなって気がしますよね。ただ、何かものを作るときって、実はすごく大変なのです。みんな一生懸命に良いものを作ろうとしますよね。そうすると、すごくたくさんお金がいる。人手がいる。研究のためには時間もかかる。挙句の果てに、何かが足りなかったから結局出来なかった、ということにもなりかねない。誰が見ても良いようなものって、実は作るのが大変なのです。そこで、そういう良いもの、その良さに「既知の良さ」と名前をつけます。直感的に良いと思えるもの、どんなものがあるかな? 「格好いい」「失くしにくい」「環境にいい」「わかりやすい」。そう、みんな良いことだよね。だけど僕がさっき言ったように、それを極めるには人材や、お金や、時間が無限に必要です。無理だよね? ちょっと話を続けるよ。何かを考えなさいといわれたとき、みなさんは無意識に良いものを考えようとします。だけど「良い」って、けっこう範囲が狭いんです。まるで四方八方を雲に閉じ込められた町の空に少しだけ雲間があって、そこから陽光が射し込んでいるようなもの。その光の射し込む狭い場所、それが「良い」という範囲だと想像してほしい。良いものを考えようとしている限りは、その狭い範囲から一歩も出られません。そうした閉じ込められた良い町でモノを作ろうとすると、すごくお金がかかるし、人手がいるし、時間がかかる。じゃあ、どうすればいい? この閉じ込められた町から無理やりにでも外に出るしかない。そして本当に良いものが、どこかに隠れていないかと必死になって探してみることです。そうやって絶えず目配りしていると、一般的には良いと思えないもの、だけどよくよく考えると、もしかしたら良いかもしれない、と思えるものが見つかるかもしれない。そういう良さを「未知の良さ」と名づけてみよう。この未知の良さをどうにかして探し出せば、お金とか人手とかそういうものがなくても、これをポンと形にして、「ほらこんなに良いものが世の中に隠れていたよ」と、みんなをアッと言わせることができるよね。そういうものを作ることができれば、いっぺんに世界を変えられるってわけ。

 みなさんには想像しにくいかもしれませんが、僕が任天堂に入社した頃、おじいちゃん、おばあちゃんはゲームなどしないと決めつけている人がほとんどでした。だけどWiiとか、脳トレとか、お料理ナビとか、いろいろなゲームを作って、お年寄りや女性にも遊んでもらえるような世界を実現できました。学生の頃ですが、家族で鍋をつついていて、それがすごく良い思い出として残っていました。それで一家団らんで楽しめるような、そんな愉快なゲームが作れたらいいなって思いました。でもこうした考えは、同じゲーム好きの友人にすら反対されました。「家族そろって一つの部屋で楽しむゲームなんて作れっこない」と。でも、作れっこないと言われるくらいで、実はちょうどいいのです。未知の良さは、みんなからものすごく否定されやすいのです。

photo 見つけ出さなければいけないのは、未知の良さ。そして未知の良さは、既知の悪さとつながっています。今は良さを感じられないこと、むしろ悪いとすら感じられるようなこと、そこを考えていくと、そのなかに未知の良さが隠れている可能性がある。人から否定されるくらいの話を、考えてみましょう、口に出してみましょう。良いと思えないようなことの中にヒントがある、と考えてほしいのです。

 もうひとつ、これはたとえ話ですが、みなさんが桃太郎の物語の中に入り込んでしまったと想像してください。目の前に桃太郎がいます。鬼退治に行かないかと誘われました。ついていきますか? いきませんか? この話を大人にすると、ほとんどの人たちは「行かない」といいます。恐いからです。本当に鬼がいるんだもの。でも、みんなは知っているはずです。イヌ、サル、キジを仲間にすれば、鬼は退治できるはずだと。では、仲間にするにはどうすればいい? きびだんごが必要なんだね。どうやって手に入れるの? おじいさん、おばあさんが作ってくれるんだったよね。ということは、おじいさん、おばあさんがいれば、鬼は退治できるってことになる。桃太郎のお話で、最初に「昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがいました」と、さらっと書いてあるけど、実は「桃太郎」というのは、おじいさん、おばあさんが、鬼を倒し世界を救うための最重要アイテムであった、という話です。

 つまりこの世の中、何が世界を救うアイテムになるかわからない。目を見張って、一生懸命に探さないといけない。世界を救うアイテムを探し出さないといけない。こんなふうになればいいのになっていう思いと、これを使えばそれができるに違いないというアイテム、その二つをそろえて世界を変えるんです。ここまで目標を明確にできれば、それがコンセプトになります。このあと、みなさんに世界を変えるためのコンセプトを作ってもらいますが、テーマは「世界を変える高校を設計せよ」です。世界をこう変える、それを高校で実現する。そのためには、こんな高校にという素直な思いをみんなで協議する。それを実現するには、どんなアイテムが必要だろうと考える。こういう高校があったら、そこでこんなことができれば、といった企画を考えてもらおうと思います。

ワークセッション「世界を変える高校を設計する」

photo ワークセッションの冒頭、講演者の玉樹真一郎さんが音頭をとって、参加者全員(高1生15人、中3生2人)による軽めの体操が始まりました。突然のことに照れ笑いが漏れ、会場が和らいだ雰囲気に変わりました。4グループに分かれたワークセッションは1時間。立ちっ放しで議論や作業をするため、あらかじめの準備運動といったところでしょうか。「みなさんの笑顔を見るとうれしくなります。それにグループ作業をするときって、笑っていると元気が出ますよ。そして元気なチームには、自然とよいコンセプトが生まれるものです」と玉樹さん。生徒の間に晴れやかな笑顔が広がりました。

議論に熱中する参加生徒たち「発言をすべて肯定する」雰囲気のもと

photo いよいよ「世界を変える高校を設計せよ」をテーマに、各グループが4つのテーブルに移動し、コンセプト作りに挑戦することになります。最初に玉樹さんが作業手順を説明しました。

(1)発言はカードに書いてテーブルに貼る。
(2)なんとなく似ている、相性が良いと思われるカードは近くに置く。似ていない、または相性が悪いと思われるものは遠くに置く。似ている、似ていないの判断は、話し合って決める。
(3)各自の発言はすべて肯定される。発言を否定するようなことを言ってはならない。

 この3項目を遵守して、いよいよワークセッションの始まりです。参加者全員がすでに打ち解けた様子なので、いきなりあちこちから話し声が聞こえてきます。「先生は必要?」「全時間自習がいい」「学年を無くしたい」「行事を生徒の力で実施する」など、さまざまな意見が生徒たちの口をついて出ますが、変わったところでは「週に1回野宿する」「遊園地のような学校を」といった発言もありました。中でも目を丸くしたのは「魔法を教える」「先生を超えないと卒業できない」といった発言メモ。なにやら面白いディスカッションになりそうな予感です。

photo 議論の途中、玉樹さんがグループ内で席替えをさせました。立ち位置を替えることで、気分転換をしてもらいつつも、文字通り複数の視点で問題を観察して欲しいとの意図でしょう。そしてこう指示を出します。「自分の書いたものでない(他のメンバーが書いた)カードを1枚手に取り、本当はこの場所がいいんじゃないの? とみんなで相談しながら、グループとして最適と思える場所に貼り直してください」と。

 そうした作業を続けながら「相性が良い」と思われるカードをグループ化していく作業に入ります。そしてそのグループカードに、最適なタイトルをつけるよう指示が出ました。「生徒主導」「異文化交流」「グローバル」「校則」「授業のあり方」「自分次第」、中には「もうイヤ!シリーズ」といったものもありました。この作業の中で、グループ化できないカードは別にしておきます。

 グループ化を終えると「それを置く場所を考えなさい」との指示。早速、生徒たちの相談が始まりました。「ここがいい」「いや、こっちよ」と、作業は続いていきます。この間、玉樹さんは各グループをまわり、「いいね、その調子」とか「面白いね」などと言葉をかけますが、否定的な言葉はありません。グループ化したカードの置き場所が決まると、またまた次の指示です。「じゃあ今度は、現実の高校、ここがダメだという不満を書き出してみよう」。この提案で、会場の空気が一変しました。話し声が高くなり、議論もがぜん、盛り上がっていきます。「予習が多い」「テストが多すぎる」などなど、口角泡を飛ばすとはこうした光景をいうのでしょうか。

現実認識を踏まえた先に理想とする高校像を描き出せ

photo 興奮がやや収まった頃合いを見計らって、次の作業指示が出ました。赤ペンでカードにS(スタート)やG(ゴール)と書いてテーブルに貼るように、との指示です。現状に対する発言カード群がS、「世界を変える新しい高校」へのカード群がGということのようです。このためグループ化の検討、およびその場所の調整が必要となり、にわかに生徒たちの口と手の動きが忙しくなりました。この作業は、自分たちは今どこにいて、将来は何を成し遂げようとするのかを、テーブルの上ではっきりさせようとの狙いからだと思われます。

 こうして各グループとも、一連の作業を終えました。いよいよプレゼンテーションの開始です。玉樹さんはその前に、「20文字以内でコンセプトをまとめ、それを3分で発表するように」と指示しました。世界をどう変える高校なのか、テーブルに書いたことを実現したら何がどう変わるのか、それを20字以内で簡潔に表現しなさい、とのことです。

 最後に玉樹さんは、こう締めくくりました。「桃太郎では、おじいさん、おばあさんが重要アイテムでしたが、高校ではみなさんがその役割を担います。そこで現状の問題を解決するには、自分ならこうするとか、みんなでこう行動すれば高校が変わる、といったことを考えていくのです。つまりSからGに行くのです。しかしその間に、各グループとも、ややこしいカードもいくつか抱えていそうです。それを解決するアイテムを考える必要がある。それができれば、コンセプトは自動的に完成するでしょう」。こうして各グループとも、四苦八苦しながらも、自分たちのコンセプトを20字以内にまとめていきました。あとはプレゼンテーションでの発表を待つばかりです。

型破りで、発言力があり、行動力もあるそうした人間が世界を変える!

photo いよいよプレゼンテーションが始まりました。

 Aグループのコンセプトは「責任の上の自治(じゆう)~常識を超えた学校への挑戦~」というものです。「自治」と書いて「自由」と読むところに意味があると強調しました。そしてこのコンセプトの実現には、何よりも強力な生徒会が必要だといいます。生徒たちが生徒たちを自治し、それによって責任の上に自由があることを知らしめるのだといいます。その自由を、たとえばこうだと表現しました。「自由といえば宗教です。信仰の自由は保証され、さらに世界に向け宗教を発信すべく、教祖を育成する自由も有します。常識のワクを超えるのです」と。そして各人が好きな勉強に集中する、いわゆる一教科に特化した人物となり、器用貧乏的な生徒を生まないためにも入試は廃止すると宣言しました。つまり、自分たちだけで責任をもって行動する、自治する。それが自由の意味だといいます。そこに必要のないものは一切切り捨て、ムダを徹底的に排除したその先に「世界に通用する型破りな人材を育てる高校ができあがるのだ」と主張しました。

 Bグループのコンセプトは「自分の意見を発言し世界を変える」です。このためには、まずアンケートによる先生の人事権をもつといいます。さらに校長も生徒が選出し、生徒たちの要望の実現を確約させる方針です。ただ自分の発言力を鍛えるための訓練が必要で、そのため文化祭を生徒自身が企画し、毎月1回実施するとのこと。さらに選択制の授業システムを採り、自分の意見を深めていくといいます。こうして自分の意見をしっかりと発言していけるような学校を作ることで、世界を変えることができると主張しました。

photo Cグループのコンセプトは「先生のいない学校で自分たちの社会を作る」です。このグループの主張は、何よりも解決すべき問題は授業が面白くない、学校がつまらない、というものでした。そうした問題を打破するアイテムとして、生徒それぞれが自分の考えを持ち、その考えや行動に責任を持つことだとします。その観点から、クラス制、学年制は視野を狭くするとの理由で廃止。そのうえで、学校を生徒たちだけの一つの社会にしてしまおう、というものでした。

 Dグループのコンセプトは「生徒に力を与えて行動力のある人間を作る」です。生徒を縛りすぎる現状が、生徒の力をそいでいるというのがこのグループの現状認識。このため生徒主体の環境整備として、生徒独自の企画による文化祭などの行事の実施、さらには世界で活躍するビジネスパーソンを招いてのフォーラムの実現など、実用性のある活動を重視すべきだと主張します。それらの活動を通じて責任感、生きる力、行動力など、これからの世界を生きるうえで必須な力を身につける、そのことで世界を変えられるような人格形成を行っていく、そうした学校を作りたいのですと結論づけました。

◆◆◆◆◆

photo プレゼンテーションを受けて、ゲストスピーカーの玉樹さんが講評しました。「まずAグループは無視できませんね」と笑いを誘います。「このグループには強靭な意志、学ぶんだ、世界を変える人間になるんだ、それ以外のことはすべて切り捨てご免だ、との確固たる気概のようなものが伝わってきました」と評しました。また、教祖まで育成するとの主張には、教室内が大きく盛り上がりました。

 次にBグループには「毎月文化祭をするって、すごく楽しそうだね」と感想を述べ、しかしそれを自分たちだけで計画することの大変さにも言及しました。「大変な困難があるかもしれないけれど、実現できたら、本当に世界を変えてしまう生徒が現れそうだね」。

 Cグループは主張が明確です。玉樹さんの評も、いたってシンプル。「先生がいない、クラスがない、そうすれば自分たちの社会を作れる。学校は社会なんだ、社会になれるんだとの主張は頼もしい。『学校を卒業して、社会へ出ていく』っていう表現があるけど、それって言い換えれば『学校は社会ではない』って言っているようなもので、みんなから見ると、ちょっとシャクだよね(笑)」。

 Dグループは、行動力がすべてだとの主張でした。でも玉樹さんは違った視点から、このグループを高く評価しました。「グッときたのは、魔法を教えるってカードがあったこと。すごく良いカードです。僕たちにとって、魔法って何だろう? 魔法的なことって何? 私たちが魔法だと感じることの核心が何だかわかれば、本当に世界を変えるような高校を作りあげるパワーになるのかもしれない」という言葉が印象に残りました。

 そして最後に玉樹さんは、こう付け加えてワークセッションを締めました。「コンセプト作りは冒険だ、と言いましたが、みなさん不安だったでしょう? 不安の中、コンセプトをチームで作り上げたこと、本当に素晴らしいことだと思います。しかし…コンセプトは作って終わりというものではありません。実行に移すのは大変で、しかもコンセプトができたところで不安は消えない。Wiiを開発した時も、発売日までずっと不安でした。でもみんなで心を合わせて、そして不安も一緒に分かち合いながら最後まで走っていくことで世の中を変えられると思います。みなさんも不安と戦い続けてほしいと思います」。

◆◆◆◆◆

photo コーディネーターの瀧本哲史さんが、今回のゼミを総括しました。「こんなことができればなぁって夢を見ることがあるけど、やってみると意外とできてしまうものです。実際、そういう体験を持つ人たちをたくさん見ています。ですからみんなも、何か問題にぶち当たったときに、今日の経験を活かして問題の処理に挑戦してくれるなら、このワークセッションは非常に価値あるものだったといえるのではないでしょうか」と締めくくりました。

 生徒たちもワークセッションの1時間、真剣に議論し、作業を楽しんでいたようです。短い時間ではありましたが、その貴重なひとときの重みは、帰途につく彼らの晴れがましい顔が教えてくれているようでした。

インタビュー

水島 陸さん(洛南高校  1年)

 第1回に参加したときはあまり発言できなかったので、今回は頑張ろうと思っていました。初対面の人もいて、そうした人たちに自分の考えを伝えるのは難しいなと実感しました。2回のゼミに参加してとても印象的だったのが、「常識外れな考えが世界を変える」ということでした。僕は普段、みんなと同じようなことしか考えないので、「へぇ、そんな考えもあるのか」と驚くこともありました。

 そんな経験から、ちょっと考えていることがあります。今度の文化祭、型破りな企画を立てて実践してみたい。今はそんな気持ちになっています。

水島 陸さん(洛南高校  1年)

前谷 織江さん(大阪教育大学附属池田高校  1年)

 まだ将来の志望学部だとか、めざす職業だとかが決まっていません。とりあえず今は、いろんな話を聞いてみようと思って、このゼミに初めて参加しました。

 自分から何かを企画するとか、行動するとか、そのためには何が必要なのかとか、あまりわかっていないので、コンセプト作りという作業がとても新鮮な感動となりました。もともと受け身のタイプなのですが、テーマが身近なせいか、自分なりに積極的に意見交換ができたと思っています。今後、選択しなければいけないことって何度もあるでしょうから、そのときのために今日のコンセプト作りは役立つかなと思っています。

前谷 織江さん(大阪教育大学附属池田高校  1年)

第1回

第3回

ゼミの採録 一覧
  • 第1回
  • 第2回
  • 第3回
  • 第4回
  • 第5回
  • 講師プロフィール

このページの先頭へ

  • 個人情報保護方針

Copyright © Kawaijuku Educational Institution. All Rights Reserved.