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広告特集 企画・制作 朝日新聞社メディアビジネス局

ニッポン、グローバル人材のリアル

ウェルビーイングが超高齢社会を変える。
「最新センサ技術」を通して見つめる、介護の現場

ウェルビーイングが超高齢社会を変える。「最新センサ技術」を通して見つめる、介護の現場

27.3%。日本の人口において65歳以上が占める割合だ(平成28年9月15日現在)。誰もが認識している通り、日本は世界に類を見ない超高齢社会であり、その割合は年々増加している。

超高齢社会は、言い換えれば医療の発達の証でもある。医療を発達させ、平均寿命を延ばすところまで辿り着いた日本が次に取りかかるべきことは、なんであろうか。

その答えのひとつが、「ウェルビーイング」だ。ウェルビーイングとは、一般的には「身体的、精神的、社会的に健康で豊かであること」だとされている。具体的な解釈は様々だが、超高齢社会を語る上では「健康寿命」「介護負担の削減」などと合わせて使われる言葉だろう。

そんなウェルビーイングに、理工学を中心とした分野から取り組む大学が青山学院大学だ。その取り組みは「次世代Well-being」とされている。

今回は、次世代のウェルビーイングに取り組む、青山学院大学理工学部の栗原陽介先生と、技術協力をされている株式会社アーチ技研の横田満さんに「健康福祉」のジャンルでお話を伺った。

青山学院大学理工学部経営システム工学科
栗原陽介准教授
研究テーマ:システム工学・センシング工学

株式会社アーチ技研
横田満代表取締役
事業内容:受託開発 / 設計 / 製品試験 / 製造,組立,検査 (医療機器からオモチャまで)

人間をストレスから解放する、「無拘束」の計測技術

―本日は、よろしくお願いいたします。まずはお二人がどんなことを研究されているか教えてください。(以下敬称略)

栗原:私たちが研究・開発しているのは、ベッドに寝た状態の人の心拍・呼吸・いびき・寝返りなどを無拘束で計測することができるシステムです。そこに使われているセンサと活用方法を、アーチ技研さんと一緒に研究しています。介護施設などを中心に高齢者への応用例を想定していますが、自己健康管理などで高齢社会を支える生産年齢世代にも使用して欲しいと考えています。

横田:このシステムはまさに今、研究と同時に商品化を進めています。無拘束、つまり計測のために体にセンサや、コードなどを付けずに済むよう、ベッドの下に敷けるような形になっているんです。

1cmの気圧差を測れるほどに感度の高いセンサが使われている、生体情報の無拘束モニタリングシステム。

栗原:無拘束であることは、「何かに繋がれているストレス」から解放された状態での計測が可能になるということでもあるんですよ。無拘束・無意識でデータを計測することによって、継続的に「日常的な状態」の推移を把握できます。

―「日常的な状態」の推移が把握できると、どんなことに役立つのでしょうか?

栗原:主に、生活習慣の改善です。例えば、睡眠の質の改善ですね。高齢者になると深い睡眠を取るのが難しくなるんです。特に睡眠段階の「ノンレム4」という疲労を回復する睡眠の時間が短くなってきます。

睡眠の質というのは、「昨日はよく眠れた」「寝付けなかった」など、主観でしか分からないものです。それを、心拍・いびき・寝返りなどの生体情報をもとに、睡眠段階を推定するシステムを開発しています。

また、同時に呼吸状態もモニタリングできるので、一晩の睡眠中に無呼吸状態が何分間あったかを定量的に把握することができます。

このように、睡眠の質や、無呼吸の状態を客観的なデータとして意識できると、改善策を講じられるようになりますよね。

ベッドの下に敷かれたセンサの情報がパソコンに表示されている様子。

―高齢者の生活リズムの乱れは、介護者・介助者にとっては死活問題だと聞きます。計測されたデータから、改善に取り組めるとすごく良いですよね。他に高齢者向きの研究はありますか?

栗原:昨年から膀胱内蓄尿量の推定についての研究も始めました。膀胱内に尿が蓄積していく過程を数学モデルとして表現することで、できればセンサを体に設置することなく、設置したとしてもなるべく拘束性が小さく、高齢者へ負担がかからない手法で膀胱内の蓄尿量を推定できないかと考えています。

横田:介護の現場の方に聞いてみると、やはり排泄管理は大変らしいです。適切な時間にトイレに連れていける仕組みが欲しいと言われています。

新しい技術は、問題を抱えている「現場」で育つ

―実際に介護に携わる方にヒアリングを行ったりしているんですか?

栗原:実際に介護の現場の人たちと話すことで、どういう研究をしようかというアイデアが出ることがあります。現場の人から聞いた悩みを分解していき、横田さんと話し合って、基礎技術の研究・実用化が進んでいきます。

横田:介護現場が抱えている問題は本当に様々です。新たな技術を使ってデータを取り、介護者・介助者の負担を軽減していくような形で役立つことができないかと考えて、今回のセンサも開発しました。新しい技術は、問題を抱えている現場で育っていくという側面があると思います。

―研究室で行われた基礎研究が実用化される上で、想定外のことも起こるのではないですか?

栗原:やはり、現場で使われることになると、研究室での想定通りにはならないことがあります!研究室ではセンサを感度が良くなる位置に設置しますが、慌しい介護の現場では設置状態まで気に留める余裕はない、など現場で使ってみないと分からないことがたくさんあります。

他にも、“センサからコードが出ていると危険”とか、“汚れてしまうから、丸洗い出来るようにしないといけない”とか、研究室では考えもしない配慮が必要になります。

研究・商品化が進められている「スリープケア」の一部。

これからの課題はデータの集め方・使い方

―実際に介護現場で研究を活かされているとのことですが、高齢化の進んでいる日本だからこそ計測することのできるデータ集積や、研究はありますか?

横田:難しい質問です。日本は個人情報の管理が比較的厳しい国ですので、ビッグデータから深い研究というのはしにくい状況ではあります。そのあたりを、もっと突っ込んで研究を行うことができれば、健康寿命を延ばすような成果を得られないかな、と考えているところです。もしかしたら、海外の方が今現在は、そういった研究が進めやすいかもしれないですね。

栗原:もちろん、個人情報保護法というのは必要な法律で、それに則って研究をする必要があります。これからビッグデータを用いたAI・ディープラーニング等の研究がもっと盛んになると思いますが、データを集めるぞ、という時には個人情報保護法とうまく付き合う必要がありますね。

―ビッグデータとして取り扱うにしても、行政の理解・協力が必要なのが現実なんですね。

栗原:例えば、技術的に面白そう、役に立ちそうな研究があった時に、「個人情報保護法があるから、やめようか」となると大きな損失ですよね。うまく研究が進んで、広がれば世の中をより良く変えていける技術のはずなのに、なかなか研究に着手できないとか、研究自体をあきらめてしまうということがあっては、大きな損失だと思います。データの集め方は私たちのひとつの課題であり、社会にとっても課題だと思います。

それぞれに最適なサービスを。「次世代Well-being」が見つめる未来

―お話を聞いていて、栗原先生、横田さんのやっていらっしゃることは、超高齢社会である日本が目指すべき「ウェルビーイング」に寄り添っていると感じました。最後に、青山学院大学の「次世代Well-being」について教えて下さい。

栗原:青山学院大学では、すべての人々が身体的・精神的・社会的に良好な状態で生活できる社会を目指して、個々人から取得したデータをそれぞれに最適なサービスとして提供する枠組みを「次世代Well-being」としています。特に対象としているのは、健康福祉、知識教育、技能研修の分野です。

その「次世代Well-being」の観点から、従来の不特定多数を対象とした画一的なサービス提供に対して、個々の対象者に最適なサービスを提供するシステムを構築することを目指しています。

これまでのサービスにも、ある種の共通モデルはありますが、データを計測して個人個人にカスタマイズしたサービスを提供できるようにする、というのが趣旨です。

―世の中で一般的に言われているウェルビーイングを、さらに掘り下げたものなんですね。

栗原:具体的には、産官学プロジェクトで共同実施実績がある地方自治体や、国内の企業や大学と連携し、社会実装を行おうとしています。さらに、国外の大学の研究チームと共同で実証実験を実施することで、海外でのモデルケースを構築し、海外展開を図ろうとしています。

―社会実装、という点では、栗原先生と横田さんの研究は実現がすごく近いですね!

栗原:自分たちの研究成果が世の中に出て社会に貢献する、という喜びを身近なところで感じられるのは嬉しいですね。我々の「次世代Well-being」の中での位置付けは、お話している通り個別適合のための計測に関する研究です。より良い生活を送るための礎を築くには、個々人のデータ計測が必要不可欠です。そのため計測技術に関する研究をしているというわけです。

―栗原先生とアーチ技研さんでやってらっしゃる健康福祉における計測技術の研究は、「次世代Well-being」の他のジャンルでも使われることはありますか?

栗原:我々の研究室では、知識教育分野の研究も行っています。その分野では脳波、脳血流量などを計測し脳活動を評価しています。例えば、日本語や英語などの言語を聞いている時に人間の脳活動はどうなっているか、という観点から言語の習熟度が評価できないかなどを研究しています。

―健康と教育の研究は全く別のように思えますが、社会をより良くするためには「計測」を中心に交わっていきそうですね。

栗原:そうですね。従来の画一的なサービスではなく、個々人に最適なサービスを提供するという観点では、個々人の感情や状態を把握する必要があります。健康や福祉の場合には高齢者や生産年齢世代の方々などが対象者、教育の場合には学習者が対象者となり、対象者の状態を把握し、それを対象者個々人へ最適な形でフィードバックするというスキームは、健康福祉分野、知識教育分野とも同じなんです。それを実現するための重要な要素技術の一つであるのが「計測」ということです。

―本日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

青山学院大学 Well-beingプロジェクトの詳細はこちら

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