日本の人口は減少の一途を辿り、市場規模も小さくなりつつある。もう国内だけに目を向けたビジネス・人材では日本を成長させていくことが出来ない。だからこそいま、日本人ひとりひとりの「グローバル化」が急務だと叫ばれているのだ。
そのため、今年度のAsahi Biz Stationの特集「ニッポン、グローバル人材のリアル」では、大学や企業のグローバルに関する個々の考え方・取り組みにスポットを当てていく。
WEFにおける国際競争力ランキング
実際に、国際社会における日本人の立ち位置・存在感はどれほどだろうか?現状の把握なくしては、実現も発展も難しいだろう。
様々な世界ランキングの日本の順位を確認して、国際社会における、日本の輪郭に触れてみよう。

WEF(世界経済フォーラム)の世界競争力報告資料をもとにした国際競争力ランキングにおいて、日本は9位。
この資料は、社会制度や経済、教育、ビジネス、技術、イノベーションなどを中心とした106項目を各種経済指標と世界13,000人以上の企業トップへのアンケート調査によって評価し、スコアを算出したものだ。
日本の他にアジアでTop10にランクインしているのは、シンガポールと香港。シンガポールは昨年のランキングだと2位まで順位を上げている。シンガポールの躍進の背景には、政府主導による多国籍企業の誘致によるアジアでのハブ化や、英語力とITリテラシーのある人材育成を体系的に実施したことが考えられる。とにかく、ビジネスを行う上で魅力的な環境なのだ。
この10年間で6位~10位と変動しつつも、Top10にランクインし続けている日本も、非常に悪い位置にいるとはいえない。しかし、「勢い」の面で押されているのは確かだ。
アジアの経済はこれからも発展を続けるはずだ。アジア拠点を設立する日本企業は増えているが、まだまだ海外で事業を行うことのできる人材が足りていないというのが現実だという。
シンガポールのように国家単位での人材の育成を成功させるのは理想的だが、もちろん短期間で実現できることではないだろう。まずは、企業内での育成はもちろんのこと、大学など教育段階でもアジアで活躍できる人材を育てていくことが急務だろう。
次は産業・労働環境に関するランキングを見てみよう。
日本の産業・労働環境

日本の産業といえば、自動車を想起する人も多いかもしれないが、販売台数ランキングでは中国・アメリカに次いで3位だ。輸出台数だとドイツに次いで2位となるため、日本車の人気はまだまだ伺えるが、自動車産業にはすでに「EV化」という新たな波が来ている。
EV車がさらに一般的になれば、おそらく自動車産業における日本の存在感は大きく変わる。これまでのエンジン技術とは違う、バッテリー技術・環境配慮などの点でいかに他国の技術力に挑めるかが肝になるだろう。


冒頭で紹介した「国際競争力ランキング」と見比べると、IT競争ランキングでは、Top10入りしている国が8カ国重複、航空・宇宙産業の付加価値額ランキングでは5カ国重複と、国際競争力ランキングと直接的な関わりがあることが伺える。
どちらも、文化・経済における変化を地球規模でもたらすため、日本が国際社会で活躍するためには間違いなく外すことができない分野であると言えよう。


また、国際社会で活躍するために欠かせないのが、新たな強みを生み出すための研究だ。日本は製造・サービス業における研究開発費ではTop3にランクインしているため、悪い順位とはいえない。
この20年で、どちらの研究開発費も3倍ほどに伸びており、この投資が近い未来に次々と成果になることも期待できる。
しかし、技術を支えるのは投資額だけではない。環境も大切だ。

このビジネス環境ランキングはIFC(世界銀行)によるランキングだ。
事業設立の容易性、資金調達環境、納税環境、貿易環境、破綻処理などの10分野における指標において順位がつけられている。
日本の順位は34位と経済規模の割には極めて低い。つまり、新規参入がしづらい環境であるということだ。新陳代謝が悪い環境というのは、いつか限界がくる。

加えて、自営業者比率も減少傾向にあり、世界ランキングで見ると27位だ。自営業者=事業主が減っているということからも、ビジネス環境ランキングの順位が事実であることが裏付けられている。
日本の教育

※年齢に係わらず大学への総入学者数を大学入学適齢人口で割った比率

日本が国際社会で存在感を示すためには、優秀な人材も不可欠である。少子化が進み、生産人口が減っている今では、否が応でも「量より質」を重視せざるを得ない。
これらのインフォグラフィックの中でも最も気になるのが、海外留学生数の少なさだ。2002年には4位だった海外留学生数が、2015年には33位にまで落ち込んでいる。若者の人口が減少しているという背景はあっても、内向き志向は否めない。
留学の傾向も、国民全体の国際意識もすぐには変わらないだろう。しかし、国内で「グローバル化」に取り組んでいる組織は大学・企業問わずたくさんある。
グローバルな世界に向かっていく流れの中で、日本人はどのように成長し、生き抜いていくのだろうか。当コラムでは、そんな日本人の姿を追っていく。
出典元一覧
国際競争力ランキング:https://www.globalnote.jp/post-1508.html
自動車販売台数ランキング:https://www.globalnote.jp/post-11249.html
IT競争力ランキング:https://www.globalnote.jp/post-1523.html
航空・宇宙産業の付加価値額ランキング:https://www.globalnote.jp/post-5377.html
製造業の研究開発費ランキング:https://www.globalnote.jp/post-10310.html
サービス業の研究開発費ランキング:https://www.globalnote.jp/post-14886.html
ビジネス環境ランキング:https://www.globalnote.jp/post-12031.html
自営業者比率ランキング:https://www.globalnote.jp/post-12903.html
大学進学率ランキング:https://www.globalnote.jp/post-1465.html
海外留学生ランキング:https://www.globalnote.jp/post-12641.html
外国人留学生ランキング:https://www.globalnote.jp/post-12643.html
※ 1:: https://www.lancers.co.jp/news/pr/12286/