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広告特集 企画・制作 朝日新聞社メディアビジネス局

ニッポン、グローバル人材のリアル

英語能力指数ランキング、日本は37位。
「ESL・EFL」で変わる英語習得の難易度

英語能力指数ランキング、日本は37位。「ESL・EFL」で変わる英語習得の難易度

英語を扱えると、ビジネスや学問の幅が広がる。もはや周知の事実だろう。これはもちろん、日本でだけの話ではない。日本以外の英語を母語としない国でも、英語はコミュニケーションの幅を広げる言葉として学ばれている。

世界中の人々が英語を学ぶ中、日本の英語学習とそのレベルはどの程度だろうか?参考にできるデータとして、16ヶ国で語学学校を展開する世界最大規模の国際教育機関「EF(イー・エフ・エデュケーション・ファースト)」が実施する、EF英語能力指数ランキング(EF EPI)の第7版が公開されている。

EF EPIとは、世界中で100万人以上が受験している、誰もがいつでも無料で受けられるオンラインの適応型英語テスト(EFSET)の得点を元に作られた英語能力指数ランキングだ。

引用:https://www.efjapan.co.jp/epi/

2017年秋に発表されたEF EPI第7版では、日本の順位は37位。決して高くない順位だ。しかし、2020年東京オリンピックの開催や、グローバル化が必要とされる昨今、英語力の向上は急務だとされている。

英語ランキング1位のオランダをはじめとした英語力の高い国の教育と日本の教育にはどのような差があるのだろうか。

オランダの英語教育は小学校から

オランダはEF EPIの過去7年間の調査で常に3位以内に入り続けているとても英語力の高い国だ。そんなオランダではどんな英語教育を行っているのだろうか?

EFスタッフであり、オランダ出身のPetra Cubretovicさんにオランダの英語教育についてお話を伺った。

Petra Cubretovic
イー・エフ・エデュケーション・ファースト
アジア地域セールスディレクター

―本日はよろしくお願いします。オランダの子供たちは、いつ、どのように学校で英語を勉強し始めるのでしょうか?(以下敬称略)

Petra:オランダの場合、Basic school(小学校)は4歳からの8学年になっていて、英語の授業は1年生から始まります。

授業は最低でも毎日1時間と定められていて、文法から入るのではなく、聞き取り・読み・書き・話すことに特化して評価しています。

学校によってはネイティブの先生が教えている場合もありますが、ほとんどはネイティブではありませんね。教科書は、それぞれの小学校が自由に選ぶことができ、授業はかなりインタラクティブで生徒中心です。

―早期教育と毎日英語に触れるのが、オランダの英語教育方針なんですね。英語以外の授業でも英語を使うことはありますか?

Petra:ここ数年、オランダ語と英語のバイリンガル教育を提供する学校が増えています。はじめはネイティブスピーカーと同じレベルの英語を取得させるために高等学校で導入されたのですが、小学校でも始まりつつあります。

また、生徒たちはよく先生から「英語でインターネット検索をするように」と指導されます。その理由は、オランダ語で検索するよりも、はるかに情報量が多く、多様性のある検索結果が得られるからです。

―これだけしっかりとした英語教育が行われているとなると、オランダの人はかなり英語が堪能なんでしょうね。

Petra:ほとんどのオランダ人は、英語圏の職場に入っても問題ないでしょうね。オランダのミュージシャンは、オランダ語だけではなく英語で作詞作曲することも珍しくありませんし、英語の映画やドラマは吹き替えではなく字幕が多いです。

オランダに拠点を置く国際企業だけではなく、国際貿易やサービスに関する事業を行う企業でも、どれだけ英語が堪能かは基本要件として求められています。

ESLのオランダ、EFLの日本

ほとんどの人が英語を喋れるというオランダで英語教育が始まるのは4歳から。日本も2020年から小学3年生からの英語教育が義務化され、オランダほどではないものの、英語の早期教育が始まる。

しかし、本当に英語教育の開始を繰り上げただけで日本人の英語力は上がるだろうか?いま、そしてこれからの日本の英語教育について、大阪教育大学の柏木賀津子教授にお話を伺ってみよう。

大阪教育大学
柏木 賀津子 教授

―本日はよろしくお願いします。日本でも、小学3年生からの英語必修化が始まりますが、これによって日本もオランダのように英語力が上がるでしょうか?(以下敬称略)

柏木:この話を語る前提として、オランダと日本では英語を取り巻く環境が違うことを知っておく必要があります。この環境の違いは、ESL・EFLと呼ばれています。

オランダ語は語源が英語に近く、英語の親戚のような言語です。それに加えて、Petraさんがおっしゃっているように、オランダでは英語を日常的に使い、街でも自然と英語が聞こえてくる環境です。このような環境で学ぶ英語はESL(English as a Second Language)に分類されます。

それに対して、日本のように日常的に英語が使われず、聞こえてこない環境で学ぶ英語はEFL(English as a Foreign Language)に分類されています。外国語として英語を学ぶということですね。

そのため、「英語を学ぶ」ことの難易度が、日本人とオランダ人では違ってきます。

―そもそも英語を取り巻く背景が違うから、英語が得意な国の教育法を安易に真似することはできないということですね。

柏木:オランダ以外のESLの国、スウェーデンやデンマークでは早いうちに英語を始めるだけではなく、第二言語の教え方について科学的に研究を重ねられているという背景もあります。

フィンランドはEFLに近いのですが、フィンランド語は日本語と同様、英語とは親戚の言葉ではありません。まず、低学年では国語教育をしっかりやります。そのうえで小学3年生から質の高い英語教育を始めています。日本のこれからの英語教育では、低学年での国語教育を大切にしたうえで、質の高い英語教育をめざす研修がどれだけ出来るかが鍵になってきます。

―2020年度から英語の必修化をして終わりではなく、そこから英語教育の質を高めなければならないんですね。デジタル教材なども今より積極的に使われるようになるでしょうか?

柏木:2020年度からの必修化に向けて、2018年度から英語の授業を始めている自治体もあるため、すでにデジタル教材は配布されています。私のパソコンにも入っていますが、かなりたくさんの映像と音源が入っています。

子供たちに映像を見せることは簡単なのですが、問題はそこからの先生と生徒とのやりとりですね。

例えば、フルーツショップの映像を見せた時に、
先生「What fruit do you see?」
生徒「Bananas.」
先生「You see many bananas. Where are they from?」
とか、子供にわかる英語のやりとりで会話を広げたり、世界地図を指さして、バナナの輸入先や、日本と世界のつながりに気づかせたりする力が必要になります。このやりとりは「スモールトーク」と呼ばれて、指導要領の目玉になっているんです。

ただの挨拶だけではなく、世界と渡り合っていくための英語教育を。

―コミュニケーションに重心を置いた英会話の授業になるんですね。

柏木:単純に「今朝は何を食べた?」「パンです」というような、考えずに答えられるような会話ではなく、先ほどのフルーツショップの例のように「考える場面を作る」というのは日本に限らず世界中の外国語教育で大切だと言われています。小学校の英語指導者は、子供の学びをささえる担任の目、グローバルな視点、スモールトークを実現できる英語力が必要になってきます。教員が外の視点を得られるような海外研修プログラムや、異文化を持つ教員との協働がとても大切になります。

考えさせる時には、母語も使うのですが、子供が母語で考えたことを先生が「良い考えだね!」と拾って、すかさず英語で言って聞かせます。つまり、子供たちから母語で簡単なつぶやきを引き出しながら、考えが一段深まるところで目標の表現になる英語を使うということですね。

外国語は相手と何か交渉し、グローバルな社会の中で地球市民として一緒に働くために使うものだから、挨拶などの初歩的な会話ではなく、場に合わせて言葉を使うための教え方なんです。また、考える場面で使う言葉のほうが、英語を深く学ぶことができます。

―文法から習う、これまでの英語とは全く違うんですね。子供たちは楽しく英語と出会うことができそうです。

柏木:その通りですね。今までの単語を10回書いてきなさいとか、先生の文法の説明をノートに綺麗にうつしなさいとか、そういったことをしている間に、他の国の子供たちは違う方法で勉強しているので、それはもう、変えていかないといけないです。

グローバルな社会で共に働くには、たくさんの新しい情報を組み合わせ、考え、アクティブに行動できる子供に育てることが必要なので、世界の教育は今その方向に動いています。日本でも大学入試の内容が、暗記型から思考型へと変革しようとしていますね。

また、日本は単語と文法をしらないと英語は使えない、という根強い信仰があります。しかし、それはあまり効果がないというエビデンスが出ているんです。私自身も、「文法から教える」「フレーズと場面から教える」両方の教え方を比べて、どれくらい聞く力・話す力・文法力が変わるかを調べていますが、やはり日本の子供たちでもエビデンス通りです。

フレーズと場面から英語を学び始めても、文法がおろそかになるわけではありません。小6か中1くらいでフレーズの規則性に気づいて、疑問が出てくるんです。その段階でさらっと生きた文法を学ぶと、小学英語から中学英語にスムーズに連携できます。小学英語と中学英語のギャップも、しっかりと先生たちの研修で埋めていくことが肝心だと思います。

また、音声面で強くなってきた子どもには、「音声からの文字言語との出会い」が大切です。音と綴りの関係に気づかせながら、親しんできた表現が文字になるという楽しさを、味わわせたいものです。

―日本の英語力の底上げは、小学校での英語義務教育化が始まろうとしている今こそ正念場ですね。本日はありがとうございました。

「日本の英語教育」を考えていかなければならない

オランダと日本の英語教育を比べてみて分かることは、「日本には日本のための英語教育が必要」ということ。子供たちに英語を教え、育てていくことはもちろん重要だが、教師がどのように英語の指導方法を学び、「日本の英語教育」をどう作っていくかという研究も非常に重要だ。

今回使ったランキングを発表したEFでも、教員を対象とした研修プログラムを提供し、教育委員会や学校現場に働きかけているほか、ハーバード大学、北京大学、東京大学などの教育機関と連携して、言語学、教授法、教育テクノロジー、語学力評価、異文化体験などの様々なアプローチで英語教育の研究を進めている。

しかし、英語教育について考えていかなければならないのは、教育関係者や教育関連企業だけだろうか?柏木先生のお話の中で、日本と同じEFLのフィンランドの英語教育の例が出たが、フィンランドの学習指導要領の内容は新聞上で議論され、決定後にも国民のほとんどが目を通すそうだ。フィンランドが教育先進国といわれ、EFLの中でも高い英語力を保つ背景には、このように教育がボトムアップで作られている事情もあるだろう。

教育について考えるということは、未来を考えるということ。グローバル化が叫ばれるいま、日本でも英語教育について国民全体が考えていく機会が必要かもしれない。

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