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広告特集 企画・制作 朝日新聞社メディアビジネス局

ニッポン、グローバル人材のリアル

観光業界に求められている「国際化」と「日本の個性」

帝国ホテル×学習院大学

ここ数年、日本で外国人を目にする機会が増えた・・・そう感じている人も多いのではないか。観光庁によると、2017年9月時点で今年の訪日客は2000万人を突破し、目前に迫る様々な国際的スポーツイベントに向けて、ますます増加すると考えられている。単に増加しているだけでなく、訪日客の国籍や文化的背景も多様化しているため、その受け入れ対応は急務だ。

多様な訪日客を受け入れるためのサービスはどのようにあるべきか、それを支える人材に求められるものは何か。各国から多数の賓客が訪れる、帝国ホテルの代表取締役社長・定保英弥さんと、定保さんの母校である学習院大学に新設された、国際社会科学部の学部長・末廣昭さんに話を伺った。

株式会社帝国ホテル
定保 英弥 代表取締役社長
1984 年に学習院大学経済学部を卒業し、同年株式会社帝国ホテルに入社。2008 年帝国ホテル東京副総支配人 兼 ホテル事業統括部長、2009 年取締役常務執行役員 帝国ホテル東京総支配人を経て、2013年代表取締役社長・ 帝国ホテル東京総支配人に就任。

学習院大学 国際社会科学部
末廣 昭 教授(学部長)
1976年東京大学大学院経済学研究科修了後、アジア経済研究所、大阪市立大学を経て、1992年より東京大学社会科学研究所助教授、1995年より教授。1991年経済学博士(東京大学)。2009年~ 2012年、同研究所所長。2016年より学習院大学国際社会科学部教授、学部長。

「国際化=海外へ出ること」だけではなくなった

―「訪日客が増えている」というのが肌感覚としてある人もいると思うのですが、実際のところはどうなのでしょうか?(以下敬称略)

定保:為替やビザ発給条件緩和など、海外から日本に訪れやすい環境が整ってきた状況もあり、帝国ホテルでも外国人のお客様は増えています。ただ、日本人と外国人のお客様の比率は、半々と以前と変わりません。ですが桜や紅葉のシーズンなどは、海外からのお客様が6~8割に達する時もあります。著しい変化としては、アジアからのお客様が増加し、全体の2割を占めるようになったことですね。

末廣:私は40年以上、アジアの経済と社会を研究していますが、今一番着目しているのが、「消費する国」としてのアジア、そして観光業ですね。社長がおっしゃるように、今までタイやマレーシア、インドネシアからの観光客は少なかったのですが、最近では全国で見かけることが増えました。

―アジアをはじめさまざまな国からの観光客が増えたということですが、その受け入れ体制の現状はどうなっているのでしょうか?

末廣:他の国に比べると日本は遅れていると言わざるをえません。

今まで日本では、国際化といえば海外へ出ることでした。訪日外国人が増えた現在、日本国内における国際化も問われます。例えば、タイでは中東からメディカルツーリズムとしてやってくる観光客が多く、大手病院の中にはアラビア語で対応し、レストランではハラル食を提供するところもあります。静岡県でもイスラーム圏から来る観光客の確保のために、ハラル食対応の検討を開始しましたが、まだまだ日本国内の国際化は始まったばかりです。各国の文化背景に合わせたサービス対応を早急に進める必要があります。

こういった背景もあり、私が学部長を務めている国際社会科学部では、国内外の両方のビジネスコミュニティで活躍できる人材を育てることを目指しています。

定保:さまざまな国からのお客様が増えたとしても、おもてなしの心やサービスの基本姿勢は同じで、「あたり前のことをあたり前にやること」です。弊社の創業者の一人で初代会長の渋沢栄一が残した、「丁寧に心を尽くしサービスを提供すれば、外国から来られたお客様は一生日本のことを忘れずに、懐かしく思い出してくれる、国家のための大事な仕事」という言葉が、私どもの精神的基盤になっています。

民間外交としてのおもてなしを常に意識しており、例えば、「さすが帝国ホテル推進活動」を18年に渡り実施しています。これは帝国ホテルの110周年を前にした1999年に全社員のモチベーションアップとサービス向上を目指しスタートしたものです。社会人としての基本、立ち居振る舞いとして大事な、挨拶・清潔・身だしなみの3つ、ホテルスタッフとしての心構えである、感謝・気配り・謙虚の3つ、帝国ホテルスタッフとしての業務に対する姿勢である、知識・創意・挑戦の3つを合わせた9つの実行テーマに沿って毎年大賞受賞者を選ぶなどして、全社員の接客術向上に努めています。

末廣:この9つの実行テーマは私が学部で言っているものとも重なる部分が多いですね。

語学だけでは不十分、Made in Japanのホテルとして、一人一人のニーズに応えるおもてなしが必要だ。

―ますます多様化する国内の国際化に対応するために、必要なことは何でしょうか?

定保:まず、語学力。とくに英語は必須です。弊社でも、サポート社員を含めた全社員2,000人以上の英語力を上げていくための、研修などを行なっています。

末廣:もちろん語学力は欠かせません。ただ、求められるのはコミュニケーション手段としての言語です。私は常々、日本人同士でも会議や打ち合わせなどのオフィシャルな場では、英語でコミュニケーションを取れるくらいでないと、と思っています。逆に「文化としての言語」は学生に求めていません。議題になっていることについて英語できちんと話せるならば、発音などは必要以上に苦手意識を持つ必要はありません。

加えて、「語学力プラス何か」があると良いと思います。今はインターネットが発達しているので、来日される方はすでに日本に関する基礎知識を持っています。それを踏まえて、より詳しく日本を知りたい、実際にこの目で見たいと思っているのです。訪日客のニーズは確実に多様化し細分化しています。タイの本屋では「日本」のガイドブックは減っています。代わりに各都道府県のガイドブックや、ドラマのロケ地にスポットを当てた本が置かれています。

―単に外国語でコミュニケーションがとれるというだけでなく、相手のニーズに合った対応が必要ということでしょうか。

定保:例えばレストランやバーで外国のお客様をおもてなしするとき、日本のおもてなしの基本としては一歩下がって相手の様子を伺いますが、心地よい距離感は文化によっても異なります。状況に応じて一歩踏み込んで、フレンドリーに接客することも大切です。その際、誰に対しても同じ話題を振るようではいけない。相手がどの国の方か、何を目的に来日されたかなどを知り、その国で話題になっていることや、相手の興味関心に合わせた会話をすることを心がける必要があります。

ホテルチェーンではなく、独立系の「Made in Japanのホテル」として、帝国ホテルらしく一人一人のニーズに合わせたおもてなしを目指しています。

末廣:相手のニーズを掴み、それに合わせたコミュニケーションを取るには、相手に対する好奇心を持つことが重要ですね。私が国際社会科学部の学生に常々言っていることは、「世界の問題に関心を持ち、分析するだけでなく解決しようとすること」です。そのため私の学部では、英語だけでなく社会科学(経済学、経営学、法学、地域研究、社会学)の履修が必須です。

―国や文化背景の違う他者に対して関心をもつために、企業や大学単位で取り組んでいることはありますか?

末廣:好奇心の前提となる相手へのシンパシー(共感)は、誰かに教わって身につくものではありません。実際の現場で、他者と関わりあうことが何よりも大切です。ですので、国際社会科学部では、4週間以上の海外研修が卒業要件になっています。それも、提携校にまとめて学生を送り出すのではなく、一人一人が望む大学や研修先へ行けるように、私たちは情報を提供する。短期で海外に出た学生たちは4週間では物足りないと思うようで、次は半年ほど行きたいという希望も結構あります。

もちろん、国内や学内にいても異文化交流ができるようにしています。学部として留学生の受け入れを始める予定ですし、現時点でも全学的な取り組みとして、日本人学生が留学生をサポートするバディープログラムをはじめ、様々な機会が用意されています。

定保:帝国ホテルでも社員が海外に行く機会づくりは進んでいます。先ほど申し上げたような「外国のお客様にフレンドリーに接する」といった接客術は、どうしても国内のお客様に接しているだけでは身に付きづらいものです。やはり海外での研修や営業を経験した社員のほうが、外国の方への接し方を心得ています。ですから弊社でも、積極的に海外の提携ホテルなどで学べるようにしています。

積極的にリスクを取り、チャレンジする人が求められている

―急速に進む国内の国際化において、サービスを支えるために求められている人材はどのような資質をもつ人でしょうか?

定保:サービスに携わるのですから、基本的な素直さはもちろん大切ですが、それに加えて、積極性があることです。弊社は幸いにも、家族旅行を楽しむ国内のお客様から、国際会議などで訪れる各国からの賓客まで、幅広いお客様をおもてなしする機会に恵まれています。これほど幅広い方々と接する機会があるホテルはそうそうありません。チャンスは今、目の前にあるのですから、それを積極的に掴んでいく人が良いですね。

末廣:社長のおっしゃる積極性とも通じますが、リスクをとってチャレンジする学生がもっと増えて欲しいですね。国際社会科学部の学生は、将来は民間企業や国際機関などで活躍してほしいとも思っていますが、一方で起業して、例えば海外のお客様を迎える帝国ホテルなどとともに、ビジネスを展開していくくらいの気概を持つ人も出てほしい。今の日本が活力を取り戻すには、私は起業が欠かせないと思っています。

定保:日本の活力ということですが、各国の過去の状況から景気が低迷すると予測される2020年以降も、日本への訪日客を増やし、観光業を盛り上げたい。そのためには、官民の連携強化が必須だと思います。現状では、たとえ大きな国際会議などを誘致できても、その後につなげることが充分にはできていません。民間外交の窓口として周囲の国際会議場やホテルとも連携して訪日客をより一層受け入れていきたいですし、そのためには行政とも、もっと連携していきたいですね。

学習院大学 国際社会科学部とは

末廣さんが学部長を務める学習院大学国際社会科学部では、まさに上記の話にあったように、国内外の国際化に対応できる人材を育てている。2016年に開設されたばかりの学部には、1・2年生合わせて450名ほどが在籍し、学習院大学を卒業された定保さんが「羨ましい」と言うほど、恵まれた学習環境と意欲的な学生が揃う。

「国際社会で活躍するビジネス人材を輩出する」とはっきり掲げており、2年生後期からは英語による専門科目の授業が始まる。必須となっている海外研修は、これから1期生が3年生を迎えるにあたり、企業と連携し、就職活動とも連動させていくとのことだ。

学部では全学生がPCやスマホを持って授業に参加しているが、これはめまぐるしく変化していく海外、特に新興国の経済や社会事情は、過去に学んでいては追いつかないためだ。だから、学生たちはインターネットで最新のデータにアクセスする。各国の、過去のものとなったイメージや偏見にとらわれることなく、変化に対応できる人材を育てる方針が、日々の授業にも表れているといえるだろう。

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