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広告特集 企画・制作 朝日新聞社メディアビジネス局

IoTが描く未来に潜むリスクとは?「誰でもIoT」を実現する基盤技術の現在形

IoTが描く未来に潜むリスクとは?
「誰でもIoT」を実現する基盤技術の現在形

IoTが描く未来に潜むリスクとは?「誰でもIoT」を実現する基盤技術の現在形

AI、IoTが叶える数々のテクノロジーは、私たちの日常に溶け込み、欠かせないものになりつつある。AIスピーカーや自動運転車が実用化の段階に入り、スマートハウスの実現もそう遠くないだろう。しかし、AI、IoTが描く未来像が、すべてバラ色とは言い難い。IoTによるパラダイムシフトを迎えるにあたり、研究者たちは今、どのような課題を想定し、その先を見据えて、どのようなイノベーションを実現しようとしているのだろうか。

IoTのイノベーションには、情報技術とイノベーションマネジメントの両輪が不可欠である。それぞれの分野において最先端をリードする、北陸先端科学技術大学院大学(以下JAIST)の丹康雄教授と内平直志教授に、IoT時代の情報技術、そしてイノベーションの可能性について伺った。IoTのイノベーションに必要な両輪を1つの研究科で研究・教育を行う点がJAISTの強みになっている。

北陸先端科学技術大学院大学
先端科学技術研究科セキュリティネットワーク領域 教授・学長補佐
高信頼IoT社会基盤研究拠点 拠点長
丹 康雄
東京工業大学博士(工学)。北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科助手、助教授を経て、2007年から現職。総務省情報通信審議会・専門委員、スマートIoT推進フォーラム技術戦略検討部会 技術・標準化分科会長を務める。専門は計算機ネットワーク、ユビキタス・コンピューティング、情報家電。

IoT推進事業で中心的な役割を担う、JAISTの研究と実践

―ここ数年、話題を集めている「IoT」ですが、丹先生はこの分野で25年も研究を続けられているとお聞きしました。今日に至るまでに、IoTの技術開発にはどんな変遷があったのでしょうか。

丹教授(以下敬称略):1980年代に「ユビキタス・コンピューティング」が提唱されて以後、人間の生活とコンピュータの共存には、常に多くの人が関心を寄せていました。しかし、実用化までのヴィジョンの不透明さから世間に幻滅されたり、忘れられた頃に再び過剰な期待を受けたり、というサイクルを繰り返してきたのが、IoTの研究の歴史だと言えます。

現在、研究が進められているIoTの基本は、ネットワークを通じてデバイス同士が連携しながら、システムの根幹となる知能であるクラウド上のAIに常時接続し、実世界とのやりとりを行うシステムです。コンピュータがモノに組み込まれているだけでは、80年代のユビキタス・コンピューティングと変わりません。「クラウド」「ネットワーク」「デバイス」の3点が揃っていること。それが、JAISTが中心となって提唱しているIoTの国際標準の条件でもあります。

―石川県域のIoT推進事業において中心的な役割を担っているJAISTですが、丹先生ご自身も地域のフィールドで共同研究を行っているのですか?

丹:私の研究室では、サービスプラットフォーム型のホームネットワークのあり方を検証するため、実際の住宅を模した木造実験住宅「iHouse」を石川県産業創出支援機構の協力のもと、いしかわサイエンスパーク内に設置し、実証実験を行っています。

例えば、時間と天候、温度や湿度に応じて窓やカーテンの開け閉めを自動的に行うことでエアコンを使わなくても一定の快適指数範囲内に収まるよう温熱環境をコントロールしたり・・・。室内環境のデータは4秒間に1度、クラウドに転送しています。内壁の取り外しも可能なので、実験のたびに機器の位置や配線を自在に変えることも可能です。実際に人が生活するのと同じ環境で実験を行うことのできる貴重な環境なので、クラウド上に蓄積されたデータはオープンデータとして公開することを検討しています。

実証実験を行う木造実験住宅「iHouse」

スマート社会のリスクを把握し、セキュリティー人材の育成に注力

―IoTに関連した研究を幅広く展開しているJAISTですが、現在は特にどの領域に力を入れているのでしょうか?

丹:JAIST全体として力を入れているのは、IoTのセキュリティ面です。スマートハウスが実現し、多くの人の生活が情報通信インフラに依存するような形になったとき「いかに安心安全に暮らせるようにするか」というのはIoTの研究が抱えている喫緊の課題でもあります。

例えば、スマートハウスのネットワークを不正にハッキングすれば、エアコンの温度をコントロールして人間にヒートショックを起こさせることも不可能ではありません。IoTのシステムを悪用すれば人間を物理的に攻撃することができるため、過去に前例のないリスクとなり得るのです。

JAISTで開発中のサイバーセキュリティの演習環境を講師の方針に合わせて自動生成する技術。CyTrONE(サイトロン)
公開サイト https://github.com/crond-jaist

―身の回りの全てのデバイスがネットワークに接続している分、不正にアクセスされたときのリスクも大きいのですね。

丹:IoTの本格普及に向けて、セキュリティの専門人材の育成が急務です。そういった点から、本学はセキュリティ教育にも力を注いでいます。「CyTrONE(サイトロン)」と名付けたサイバーセキュリティの演習環境の自動構築技術を研究開発しています。また、本学でサイバーセキュリティの研究を行っている篠田陽一卓越教授は、世界最大のネットワーク・シミュレーターを開発し、情報通信研究機構と運用しています。このシミュレーターを使えば、昔だったら1週間かかる検証実験も、秒単位で結果を出すことができます。こうした実験環境を活かし、学生たちはセキュリティの知識・技術を徹底的に身につける「訓練」と、実践の場でそれを確かめる「演習」を何度も繰り返すことで、セキュリティの専門知識を深めているのです。

JAISTが誇る最新のスーパーコンピューター(スパコン)。高性能な演算処理が可能で学生は自由に使える。

IoTの技術者に必要なのは、「白紙に絵を描く力」

―近い将来、ユーザーとして私たちがIoTを使う上では、どんな知識が求められるのでしょうか?

丹:極端に言えば、IoTの理想は「ユーザーが何もしなくてもいい」状態。例えば、Amazon社の「Dash Button」やGoogleのAIスピーカー「Google Home」が最近注目を集めていますが、若い人から高齢者まで誰もが使えるサービスかというと、決してそうではありません。ある程度のリテラシーが必要です。

アメリカでは富裕層向けのサービスとしてIoTの研究開発が進められていますが、日本のIoT技術がめざすべきは「電気が使える人なら誰でも使える」サービスだと考えています。

―これからのIoT 時代の研究を背負っていくJAISTの学生には、どんな力を身につけてほしいですか?

丹:学生たちに身につけてほしいのは「白紙に絵を描く力」。IoTの分野に必要なのは、あらゆるリスクを想定し、全体のアーキテクチャの設計からプロトタイピングまで、一貫して担っていける人材です。またJAISTは企業と連携した共同研究も活発で、今まさに社会から求められている最先端の研究に取り組むことができます。学生たちには失敗を恐れず、トライ&エラーを繰り返し、これからのIoT時代に「新しい絵」を描いていってほしいですね。

―ありがとうございました。

IoTが生活に溶け込む時代におけるリスクを分析し、セキュリティ人材の育成とスマートハウスの実用化をめざす丹教授。そしてもう一人、「イノベーション」の視点から今後のIoT時代を捉え、IoTとビジネスの連携に取り組んでいるのが内平教授である。

北陸先端科学技術大学院大学
先端科学技術研究科 知識マネジメント領域 教授
内平 直志
東京工業大学博士(工学)、 北陸先端科学技術大学院大学博士(知識科学)。株式会社東芝 研究開発センター次長、技監を経て、2013年より北陸先端科学技術大学院大学に着任。日本MOT学会理事、研究・イノベーション学会総務理事。専門はソフトウェア工学、サービス科学、イノベーションマネジメント

ビジネスにおけるイノベーションに不可欠な「3つの視点」

―内平先生の研究テーマである「イノベーションデザイン」とは、どのようなものなのでしょうか?

内平教授(以下敬称略):グローバル市場での競争が激化し、AI技術が台頭しつつある昨今、ビジネスは私たちの想像をはるかに上回るスピードで動いています。ひと昔前は商品企画部門、設計部門、営業部門が連携し、時間をかけて製品・サービスの開発を行っていましたが、現在インターネットサービスなどの業界では、極端なことを言えば「朝に考えたアイデアをその日のうちにシステムとして実装し、夕方にはサービスを提供する」というスピード感あるマネジメントが重要です。そのためには、企画、実装、ビジネスのサイクルを1つのチームで統合的に回す必要があり、そのサイクルを実践するための手法が「イノベーションデザイン」です。

―なるほど。ビジネスのスピードアップは、グローバル市場での競争力に直結するのですね。そうしたイノベーションのためには、どんなスキルが求められるのでしょうか。

内平:ひとりの人材が、企画から設計、ビジネス化までのスキルを総合的に身につける、というのは必須条件になってくるかもしれません。アイデアをつくって、システムをつくって、サービスとしてビジネスをつくる。私はこれを「ネタづくり」「モノづくり」「カチ(価値)づくり」と呼び、学生たちにもこの3つの視点と思考法を教えています。昔から日本の企業はモノづくりが得意でしたが、近年ではカチ(価値)づくり=ビジネスモデルの設計の部分で苦戦を強いられています。その現状を打破するためにも、アイデア生成とシステム設計、ビジネスモデルの設計を俯瞰的にリードできる人材の育成が必要なのです。

あらゆる企業で実践できる「IoTイノベーション」の方法論とは?

JAISTの全学イノベーションデザイン教育。専門の異なる学生がグループを作り、新製品開発のための課題の洗い出しからロードマップを組み立てる。

―これからのIoT時代に求められる「イノベーションデザイン」とはどのようなものなのでしょうか?

内平:私は主に、イノベーションデザインに関する2つの研究を同時に進めています。1つ目は、イノベーションデザインの方法論。IoTを使ったイノベーションをどうやって設計していくか、というのが私の研究テーマです。例えば、私たちのような研究者や、ITの先進的なメーカーの技術者はともかく、ITのユーザー企業や中堅・中小企業の方々の多くは「IoT」や「イノベーション」と言われても、どう実践すればいいのかわからない人たちがほとんどだと思います。そもそもIoTで実現したい価値は何なのか、その価値をIoTで収集した大量のデータからどのように生み出すか、またその価値を生み出すためにどのようなパートナーと組めばよいのか。これらのIoTイノベーションをデザインするための一連の手順を、IT企業だけでなくユーザー企業、中堅・中小企業などのあらゆる企業で実践できるようにするための研究を行っています。

―IoTを利用した、イノベーションの「仕組み」そのものの研究なのですね。

内平:そうですね。そして、もう1つの研究テーマが「音声つぶやきによるサービス業務の気づきの収集と活用」です。いまIoTと言えば「モノからデータを収集する」のが一般的なイメージですが、私が着目しているのは「人からデータを収集する」技術。この場合、IoE(Internet of Everything)と呼ぶべきかもしれません。視覚や聴覚といった人間の五感も、IoEシステムの中でセンサーとなり得るのです。人間が持っているセンサーと物理的なセンサーの両方のデータをクラウド側で分析することで、従来のIoTの限界を超えた新たな価値を生み出すことができるはずです。

人間のセンサー(五感)からデータを収集する、IoTの新技術

―「音声つぶやきシステム」は、どのような形で実用化を想定しているのでしょうか?

内平:最初に応用先として考えたのは、介護の現場でした。例えば、ウェアラブルのセンサーを使えば、体温や血圧、排泄などのデータは自動的にとれるようになるかもしれません。しかし、高齢者のちょっとした表情の変化や発言内容は、現場のスタッフが気づいていても介護記録として残らないことがほとんどです。このシステムは、人間の些細な「気づき」を記録する、業務上のTwitterのようなツール。介護スタッフがその場で気づいたことのつぶやきがテキストとなって、クラウド上で他のスタッフと共有できるのです。

―なるほど。すでに「音声つぶやきシステム」の成果は実証されているのでしょうか?

内平:実際に介護施設で実証実験を行った結果、さまざまな効果が確認できました。まずは、介護士同士の連携の向上です。情報を必要な分だけ共有するので、トランシーバーのようにも使えますし、様々な場所にいるスタッフとも最新情報を共有できるので、従来の携帯電話を使った連絡よりも、密接な連携が実現しました。また、介護記録のクオリティの向上にも成果を残しています。従来の介護記録と、音声つぶやきシステムを利用した介護記録では、内容の密度がまったく違います。勤務後の夜に介護記録を書くまでに忘れてしまう「気づき」や、「わざわざ伝えなくてもいい」と介護士が勝手に判断していた「気づき」がシステム上に残るので、従来は消えていた「気づき」をベテランスタッフと共有したり、介護記録にも生かせるようになりました。この技術は、介護分野だけでなく、他の多くのサービスで活用できます。現在、農業IoTでの試行評価を行っていますが、農業のすべての情報を物理センサーだけで収集するのは、コスト的にも現実的でなく、物理センサーと人間センサーの併用が極めて有効です。

―音声つぶやきシステムの開発・実践が、内平先生が直接的にIoTに関わる研究で、こうした技術をさまざまな企業でどのように業務に導入すればいいのかを考えるのが、先ほどのイノベーション・デザインの研究、というわけですね。

内平:その通りです。AIやIoTは、これからの時代に必ず求められる技術です。しかし、技術に長けた人材が技術開発だけに専念していればいい、という時代ではありません。イノベーションを生み出すためには「どうやってビジネスとして成功するか」という視点を持った上での技術開発が必要なのです。ビジネスの視点を併せ持った情報技術者・データサイエンティストをいかに育成するか。それがJAISTの役割であると考えています。

仕事と学問の相乗効果でビジネスを追究する「東京サテライト」

JAISTの東京サテライトでは、社会人学生を対象に東京社会人コースを設置している。ここでの学びのコンセプトは、「職学近接」と「知的刺激」。つまり、仕事と研究を両立させ、双方に相乗効果をもたらす学びが実践されているのだ。

社会人が対象とはいえ、講義での知識やスキルの習得だけでなく、論文作成を通じた研究を重視した環境であることもポイントだ。「最先端のIoTイノベーションを情報技術と技術・サービス経営の両面から学べる場が品川にある。情報技術やイノベーションマネジメントの表面的な理解ではなく、主体的に取り組む研究を通じて、本質を追求し深く思考する能力が身につくので、修了後の実務での応用力が違います」と内平教授は語る。

さらに、社会人学生にとって学ぶモチベーションが続く知的刺激のある環境、すなわち「短期集中型の講義」「複数教員指導制度」「ICT技術を活用した遠隔教育」などを整備。石川県のJAIST本校の学生との交流・連携も推進しており、バックボーンの異なる学生同士が互いに刺激を与え合っている。

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