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広告特集 企画・制作 朝日新聞社メディアビジネス局

ニッポン、グローバル人材のリアル

【Spiber株式会社】タンパク質が解決する資源・環境問題。
導くのは未来をつくる「人工クモの糸」

【Spiber株式会社】タンパク質が解決する資源・環境問題。導くのは未来をつくる「人工クモの糸」

いま、あなたの体に触れているものはなんだろう。シャツ、ネクタイ、Tシャツ、腕時計、スマホ、マウス、パソコン。そのどれもが、原料を辿れば地球の資源だったものだ。

地球の人口は増え続けている。資源を消費するスピードも上がり続けている。もう、時間はあまり残されていないだろう。人類は、資源の問題に真摯に向き合っていかなければならない。

2013年、東北は山形県鶴岡市のバイオベンチャー企業が一本の糸を紡ぎ出した。それは、「人工クモの糸」。この糸がいま、資源問題・環境問題解決への一筋の光になろうとしている。

この「人工クモの糸」を開発したSpiber株式会社の代表、関山和秀さんに、新たな素材としての人工クモの糸のこと、地球規模の問題を解決するために必要なことについて、お話を伺った。

Spiber株式会社 取締役兼代表執行役
関山和秀
2005年 慶應義塾大学環境情報学部卒業
2007年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了
2007年 スパイバー株式会社設立

タンパク質を使いこなせば、素材は進化する

―本日はよろしくお願いします。Spiber(以下スパイバー)さんでは、「クモの糸」を人工的に製造しているとお聞きしています。この「人工のクモ糸」というのは、どういった素材なんですか?(以下敬称略)

関山:スパイバーでは人工合成クモ糸素材「QMONOS®」をはじめとした、タンパク質素材を人工的に作っています。新世代の産業用基幹素材として、 大規模に使われる素材になってほしいと思っているので、まずは自動車産業やアパレル産業から普及させたいと考えています。逆に、自動車やアパレルで使えるくらいの価格帯で作れるようにならないと普及させることが難しいので、低コスト化にも意識して取り組んでいます。

―どうしてクモの糸を人工的に作ろうと思ったのでしょうか?

関山:クモの糸は昔から夢の素材だと言われていました。天然のクモの糸は重さあたりの強靭性が鋼鉄の340倍、炭素繊維の15倍といわれています。もしかしたら、重さあたりの強靭性で言うと地球上で最も強い素材といえるかもしれません。
さらに特徴的なのは、クモの糸は「フィブロイン」と呼ばれるタンパク質からできているので、原料を石油などの枯渇資源に依存することなく生産をすることができます。また、生分解性があるため再資源化も可能です。

―QMONOS®は、どうやって作っているんですか?

関山:天然のクモの糸は、タンパク質でできていますが、このタンパク質は、20種類のアミノ酸によってできています。

この20種類のアミノ酸の並ぶ順番が変わることで、ウールやカシミア、人間の髪や皮膚などさまざまなものになります。
この設計図が書き込まれているのがDNAで、私たちはアミノ酸配列と遺伝子配列のデータを解析からはじめ、新しいタンパク質の分子をデザインし、その遺伝子を合成し、微生物を用いた発酵培養によって人工タンパク質を製造しています。そして、その微生物の餌となるのは糖だけです。

―分子レベルから設計してタンパク質を作っているんですね。

関山:タンパク質を素材として使いこなせるようになれば他にも様々なものに活用できると思っています。
たとえば、自動車メーカーから「こんな特性を持った素材が欲しい」というオーダーが来たら、ナイロン工場ならナイロンしか作れないし、炭素繊維の工場なら、炭素繊維しか作れない。でも、タンパク質の場合は設計図を変えることで機能が違うものを作り出すことができるんです。つまり、テーラーメイドで人工タンパク質を提供することができる上に、ひとつの工場でさまざまな素材を作れるのでコストダウンにも繋がります。

―DNAレベルからテーラーメイドというのは衝撃です。ひとつの工場で様々な素材を作れるというのは、環境面においても良さそうですね。

関山:いま、CO2排出削減など、世界中で環境保護の取り組みをしていますが、私は人間が行っている産業と地球の生態系を、より循環的に設計していった方が効率的だと思います。そのためには、「進化する素材」だったり、ひとつのプロセスでいろいろな素材が作れるプラントの方が最終的には合理的なんです。
これまでは、コストの問題や技術的な問題があって、タンパク質を材料として使いこなしていくことができなかった。この10年、20年くらいでバイオテクノロジーやITなどさまざまな技術が成熟してきて、今初めて実用化が可能になろうとしているんです。そこに一番乗りしようとしているのが、我々スパイバーです。

恩師との出会いが、夢を大きく前進させた

―そもそも、クモの糸に目をつけたきっかけは?

関山:きっかけ自体はとても単純で、大学時代の「クモの糸はすごい」という雑談だったんです。素晴らしい性能を持っているクモの糸を実用化できれば、石油などの化石資源に頼らない素材ができるかもしれない。これを人が作れたらすごいよね、ということでやってみることになりました。

―「単純にすごい」という興味がきっかけだったんですね。慶應義塾大学の環境情報学部ご出身ですが、もともと環境への興味があったんですか?

関山:そうですね。昔から環境問題やエネルギー問題、食料問題などの地球規模の問題を解決する仕事をしたいと考えていました。それで、高校の時に慶應の先端生命科学研究所の所長である冨田勝教授の話を聞きにいったのが環境情報学部に入ったきっかけです。冨田勝教授の話がとても熱くて、絶対に冨田研究室に入りたいと思ったんです。

この分野で本当に事業をやっていくにしても、研究の最前線に身を置いてみないと、本当に何が求められているか、取り組むべき課題が何なのかが見えてこないと考えて、1年の時から冨田研究室に入れてもらいました。

どういう研究テーマに取り組んだら、課題に対して一番大きなインパクトを出すことができるかをずっと考えてきて、さまざまなテーマに触れてきた中のひとつがクモの糸だったんです。逆に言えば、クモに興味があったわけではないので、問題が解決できればテーマは何でも良かったんですよね。

―はじめからクモの糸の研究は手段だったんですね。2004年に研究を始めて、2007年に起業というのは早いように感じますが、地球規模の問題解決を志したときに既に起業について考えていたんですか?

関山:起業も手段だと思っています。現実的に、いまのスパイバーのような規模の研究は大学では実現できません。一握りの教授は、何千万、何億の研究費を使えるかもしれませんが、そうなるまでに何年かかるんだろうと思いまして。教授を目指しているうちに、自分の研究を他の誰かが実用化してしまうかもしれない。

でも、起業して投資家から認めてもらえれば、投資してもらえる可能性があります。そう考えると、起業した方が合理的だと思ったんです。

ひとりひとりの深い思考が、企業の意思決定スピードを上げる

―そういった経緯で、研究を始めてから3年で起業されたんですね。今年で創業10年目になりますが、スパイバーはどんな社風ですか?

関山:スパイバーは、企業システムも実験的です。たとえば、給与は「社員の給与は社員自身で決める制度」になっています。“自分はなぜその額の給与をもらうべきか”というエッセイを書いて全員に公開して。大変ではあるのですが、良くも悪くも本当にいろいろなことを考えるきっかけになります。

社員同士が話し合いを重ねながら、“そもそも給与とは何か”“自分はどうあるべきか”みたいな深いところまでひとりひとりが考える。この制度は始めてから3年以上になりますが、みんなとても成長しています。

―外部からすると、面白い仕組みだな、と思いますが、当事者になると大変でしょうね。「ひとりひとりが考えること」がキーワードになっているんでしょうか?

関山:いまスパイバーはとても大きくなって、人数もすごい勢いで増えています。そうなると、昔と同じスピードで経営判断や意思決定を進めていくのは大変になってくるんです。その状況の中でスピードを維持する方法は、社員ひとりひとりの判断能力や意思決定能力を高く保ち、向上させ続けることです。

みんなの判断能力や意思決定能力を高く保てていれば、目線が同じになる。そうなると、人数が多くてもパパッと意思決定できるんです。

「社員の給与は社員自身で決める制度」というのは、ある意味「自分」という会社を経営しているようなものです。自分にどれだけの予算を割り当てるかという。だから、この制度は社員ひとりひとりの視野を広げて、ロングタームで深く考え、半年に一度重要な意思決定をする大切な機会になっていると思います。

スパイバーにいまも息づく、研究室のカルチャー

―制度自体も、考え抜かれて作られた制度なんですね。こういった経営に関するインスピレーションはどこから受けるんですか?

関山:こういったスパイバーのカルチャーは、大学時代に所属していた冨田研究室のカルチャーですね。

深く思考してシステムを決めたり変えたりしていくところもそうですし、冨田研究室もスパイバーもすごくフラットな組織なんです。誰でも、文句がある場合は対案さえ持っていけば天秤にかけてもらえて、そちらの方がよければその案が採用される。とても合理的なんですよね。

他にも、冨田研究室には「自分がどういう価値を生み出せる人間か」を自分で考えて、「こういうことがしたい」という要望がある人に対して惜しみなくリソースを割いてくれる環境があります。こういったカルチャーもスパイバーは引き継いでいますね。

―本当に情熱のある人が目一杯活躍できる環境なんですね。

関山:志が高い人は多いです。いま、社員の一割は外国人で、トップレベルの人たちが世界から集まってくれています。日本語が全然喋れないのにウェブサイトから応募してくれる人もいるんです。しかも、東京などの大都会ではない鶴岡のような地方都市であるにもかかわらず。それでもスパイバーに入りたいと思ってくる人って、凄まじく気合いが入っているんです。鶴岡に会社を置くことはある種のスクリーニングになりますね。

―世界を変えうる一番乗りの研究があり、深く思考するカルチャーと研究に思う存分情熱を注げる環境があるスパイバーには、これからも世界中から研究者が集まるでしょうね。これからも素材の進化を見守っていきたいです。本日はありがとうございました。

山形県鶴岡市に根を張った、「生命科学のパイオニア」

スパイバーに隣接しているのは、慶應義塾大学先端生命科学研究所(IAB)。スパイバーは、このIABで行われていた研究から生まれた企業だ。IABは山形県鶴岡市に根を張り、スパイバーの他にも世界を変えうるバイオベンチャー企業を生み出し続けている。

人類が立ち向かわなければならない課題は、山ほどある。さらに、これからやっと見えてくる課題もあるだろう。IABはそういった人類の課題を解決に導くための研究において、最先端を走り続けるだろう。

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