• 自社技術を磨いて、
    価値創出へ

    伊藤 義剛 岩崎電気株式会社 代表取締役社長

  • 進藤 晶子 フリーキャスター

自社技術を磨いて、価値創出へ

伊藤 義剛 岩崎電気株式会社 代表取締役社長

国内初の反射形白熱ランプ開発をはじめ、屋外照明を柱に市場をリードしてきた岩崎電気。LED照明での業界新規参入も相次ぐなか、伊藤義剛社長は「創業72年の歴史は社員の誇りであっても、強みにはならない」と気を引き締める。"光・環境カンパニー"を旗印に、さらなる飛躍を誓う老舗メーカーの新たな取り組みを、進藤晶子さんが聞いた。

特異な面もあった日本
LEDでグローバルに

進藤 晶子

進藤 晶子
フリーキャスター
1971年大阪府生まれ。94年TBSに入社し、報道番組を中心に活躍。2001年に退社し、海外留学を経てフリーに。

進藤 私には小学生の娘がいるんですが、子どもと過ごしていると、日常的に照明に親しむ機会が多いんですね。科学館で光やITを通じて科学を学ぶ体験学習に参加したり、ライトアップされた史跡をめぐったり。照明ひとつでものの見え方は大きく異なりますし、趣向を凝らした照明は見ていて楽しいです。

伊藤 照明の効率や寿命など、メーカー各社の技術的な差が縮まったことで、空間演出的な側面を強化する動きは加速していると思います。LEDが主流になったこともひとつの要因ですね。LED照明は省エネ意識の高まりを受けて、急速に普及しましたが、ひとつの光源で明るさや色を自在に変えられる、点灯・消灯が瞬時に行えるといった特長があります。

進藤 わが家でも最近、LED照明を導入しまして、日中は白い明かり、夕方以降はスムーズに眠りにつけるオレンジ色というように、活用しています。

伊藤 日本では自宅の照明も蛍光灯の白い光が主流でしたが、最近は欧米のようなやわらかな電球色の照明を取り入れるご家庭も増えています。照明の規格は国や地域で多少異なるのですが、日本の場合はそれとは別に、ガラパゴス化と言われるほど特異な部分もあったんです。そうした状況も、LEDの普及で少しずつ変わりつつあります。

進藤 グローバル・スタンダードな方向に。

伊藤 以前に比べれば、ですが。依然"日本的な特異な部分"は存在します。たとえば屋外照明の場合でも、日本では照明器具の外観にもこだわり、美しい仕上がりが求められますが、海外では屋外に設置するものに、そこまでの美しさは必要ないという考え方。耐久性やコストのほうがずっと重要なんです。

進藤 美しさへのこだわりは、日本人のよさではありますけど、グローバルに事業を展開するうえでは、足かせにもなりうるんですね。

伊藤 そういう側面もあります。当社は、海外事業を主に北米と東南アジアに絞り込んで、展開しています。

進藤 最近では、エネルギーのスマート化の動きも広がっていますが、屋外照明の分野ではいかがですか。

伊藤 まだまだ実験的な段階です。スマートシティ構想に関連して様々な取り組みが進められています。しかしながら、現実的に必要とされる「こと」は何かを、しっかり見極める必要があると思います。ただ、IoT(モノのインターネット)という時代の流れのなかで、照明も制御されることで、可能性を広げるひとつのきっかけにはなると考えています。

横浜スタジアム

横浜スタジアム

皇居前広場

皇居前広場

舞台演出を可能にした屋外照明
環境にやさしい光活用も進む

伊藤 義剛

伊藤 義剛
岩崎電気株式会社
代表取締役社長
1958年山口県生まれ。立教大学経済学部卒業後、83年に岩崎電気入社。営業職、執行役員を経て、2016年4月から現職。

進藤 岩崎電気では街路灯を軸に、野球場などのスポーツ施設照明も多く手がけられていると伺いました。全面LEDを導入した横浜スタジアムの照明設備は今年、日本照明賞も受賞されたそうですが、選手の皆さんの反応はいかがですか。

伊藤 当初は「まぶしい」という厳しいご意見もありました。LEDの光は元来まぶしいため、制御が前提なのですが、野球場の全面LED化は初の試みだったので、難しくて。調整に調整を重ねて……。

進藤 調光や照明の向きを変えて?

伊藤 はい。ドローンを何回も飛ばし、チェックして、調整してという作業を延々繰り返しました。

進藤 最終的にはよりよいものに仕上がって。ほかの球場からも、全面LED化したいというオファーはありますか。

伊藤 おかげさまで、予想以上の反響をいただいています。

進藤 やはり皆さん、コスト削減を期待されて。

伊藤 ええ。また、舞台照明のような演出が可能になるというのもLED照明の魅力だと思います。

進藤 野球をする時とコンサートをする時とで、照明を変えることもできる?

伊藤 どう活用していくかは今後の課題ですが、ハード的には可能です。稼働率の高いプロ野球の球場は、LED化した際のメリットも大きいので、遅かれ早かれ、すべてLEDに移行されるだろうと思います。

進藤 技術が進化したことで、照明にエンターテインメント性という新たな付加価値が生まれたんですね。

伊藤 また一方で、照明技術の活用というのも広がっています。当社でも光を世の中に役立てたいという思いから光・環境事業を推進しており、お客様の問題を解決する、環境にやさしいソリューションというテーマで取り組んでいます。

進藤 どのような事例があるのでしょうか。

伊藤 身近なものでは、様々な製品のコーティング処理や、ペットボトルの滅菌、紫外線を使った水の殺菌などがあります。殺菌に関していえば、薬剤を使うのが最も簡単な方法なのですが、環境への配慮から、光による殺菌は徐々に増えています。

東京サマーランド(水浄化システム)

東京サマーランド(水浄化システム)

㈱ヤクルト本社札幌工場(紫外線殺菌装置)

㈱ヤクルト本社札幌工場(紫外線殺菌装置)

進藤 照明の光はものを照らすだけでなく、色々なことができるんですね。

伊藤 今後は光プラスアルファの領域へ広げていくつもりです。自社技術だけでなく、他社の優れた技術も取り入れながらスピードアップを図り、よりよいソリューション、イノベーションを実現したいと考えています。

進藤 光の活用がこれからどのように発展していくのか。楽しみにしております。