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河合塾 X 朝日新聞 ひらく 日本の大学

大阪府立大学 Osaka Prefecture University

ANALYSIS 「初年次ゼミ」と
「ポートフォリオ」を分析

「ひらく日本の大学」調査結果より

Point1 全学で「初年次ゼミ」を導入
アクティブな学びを 入学当初から

「ゼミナール(ゼミ)」とは、少人数で学生が先生を囲み、特定のテーマについて討論を重ねながら研究していくグループ学習だ。多人数かつ受け身が中心だった高校までと違い、ゼミに入って実際に討論に参加することで、大学で学ぶだいご味を強く感じられることだろう。初年次からゼミ形式の講義を行う大学も多く、「ひらく日本の大学」の調査では「初年次ゼミの必修化」を「学部全体で実施」する割合が61%にのぼるという結果もある。

その中でも、大阪府立大学の初年次ゼミは「大学全体」で1年生前期の必修科目として位置付けていることをはじめ、その特色は際立っている。学部単位でクラスを編成する大学がほとんどの中、大阪府立大学は文系・理系の多様な学域・学類がある利点を生かし、全学域生が混在する17人以下の少人数クラスを編成している。大学生活のスタート時から異なる学域・学類の学生が一つの教室に学び、異なる価値観や多様性を感じ合いながら、一つのテーマについての議論を深めていく。入学当初からの学域を超えた仲間作りにもつながっているという。

受講ゼミは、90以上のテーマから選択できる。全学域・学類の教員が担当するため、そのテーマも極めて多彩だ。「ネットに流れているウソを見破ろう」「身近なシンメトリーの美しさを科学する」「毒と薬の境目を考える」など、テーマはどれも興味津々だ。文系(理系)学域の学生が、理系(文系)寄りのテーマ設定のゼミを選択することも珍しくはない。

すべてのゼミにおいて、知識の習得を目的にはしていない。情報収集と活用の方法、表現や発表の仕方に力点を置くなど、学生自らが動き、働きかける姿勢を初年次から身につけることで、高校までとは違う「能動的な学び」への転換を目指すことが一貫している。

図書館での資料の探し方など、学ぶ上での基礎的なスキルも初年次ゼミで身につける
「初年次ゼミは学域の融合を目指す大阪府立大学ならではのアプローチでもある」と山手丈至教授

初年次ゼミの一つ「生命体の不思議を科学する」では、学生が普段感じる生命体の不思議を一人ひとりが問題提起し、どうすれば科学的にそれを解決できるか、その方法を学生同士が議論するスタイルで進む。「肉食動物は、なぜメタボリックにならないのか?」「人の寿命は何歳まで?」など、みずみずしい感性から湧き出た疑問の解決方法を、半年間かけて追究する。ゼミを担当する山手丈至教授(生命環境科学域・獣医学類)は「正しい解決方法は求めず、率先して何かを解決していく姿勢とプロセスを重視する」と話し、「何か新しいものは、多様性の中から生まれることが多い。学びのバックグラウンドが異なる学生同士が刺激し合い、アクティブな感性をみがいてほしい」と期待をこめる。

Point2 学びの履歴を振り返る
ポートフォリオ
手厚さ+気づきをうながす
独自の強み

学びに関わる様々な過程や情報を残し、学習や活動の記録を「見える化」するのがポートフォリオシステムの役割だ。過去の学びの蓄積を定期的に見返すことで、学生が自分自身を客観的に見つめ直せるなどの効果が期待され、大学教育でも導入されるようになった。

「ひらく日本の大学」の調査によると、「学生の活動記録・成績記録(ポートフォリオ)」を「学部全体で実施」している大学の割合は、44%。定着の途上にあるシステムであることが見て取れるが、大阪府立大学はこれを2012年から全学レベルで導入。タブレットやスマホからも利用できるオンラインの学習・教育支援サイトを構築し、ポートフォリオとして学生と教員が活用している。

具体的に学生は、受講している授業について、「授業外学習時間」「理解度」「目標達成度」などについての6段階評価と、その授業で何を身につけたか、なぜそのような目標達成度になったかを入力する。これに加えて、半期の初めに自分自身の半期全体の学習目標を入力し、終わりには自身の学習目標に対する振り返りと「大阪府立大学学士課程が目指す学修成果」に対する自己評価を記入している。画面上では、半期ごとの学修状況と、その経年変化も可視化される。また自分の成績が、その授業のクラス全体の成績分布のどこに位置しているかの確認もできる。これらのデータがたまっていくと、学生は自分がどのように学んできたか、その過程と履歴が手に取るようにわかり、足りない部分や課題を次の学びに生かせる仕組みとなっている。

高橋哲也副学長(教育・入試担当)は「ポートフォリオにより、教員も受講生の学修成果を把握できるし、教育改善にも活用ができる。学生たちもこういうデータをおおいに活用し、就職活動にも役立ててほしいと思う」と話す。

別表にもあるように、大阪府立大学のST比は各学域とも低く、きめ細かな教育が学生に行き届いていることがわかる。こうした手厚さに加え、ポートフォリオが学生に「気づき」をうながすことで、さらに教育効果は高まるのではないだろうか。

学生が実際に利用するポートフォリオ画面。様々な角度から自分の学びを客観的にとらえられる
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